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2005.02.02.(水)

札幌全日空ホテル Standard Twin Room
ANA Hotel Sapporo
怒-5 a few minutes
片方だけに寝具がセットされたツインルーム
所用で小樽へと向かう途中、札幌に立ち寄って1泊した。札幌駅に着いた時は天気がよかったので、ホテルまで外を歩こうかと思ったが、わずかな距離とはいえ、雪で固まった慣れない道で転びでもしたら目も当てられないので、地下道を通ることにした。だが、デパートの中を通ったり、上がったり下がったりをするうちに、段々と方向感覚が失われ、これはまずいと地上に出ると、すぐ前にホテルエントランスが見えホッとした。

札幌全日空ホテルは、1974年に全日空ホテルズの1号店としてオープンした。シルバーに輝く26階建ての外観は、航空会社系らしいシャープな印象があり、長いこと札幌のランドマーク的存在だった。だが、相次ぐ新規開業ホテルで次第に存在感が薄れ、最近ではライバルであるはずの日航にすっかりお株を奪われている。だからこそ、この30年もの歴史を持ったホテルがどんな様子なのかを見てみたいと思い、札幌全日空ホテルを予約した。

ロビーやフロントカウンターは2階にあり、1階エントランスからは中央のエスカレータや正面のエレベータで連絡している。スムーズにチェックインが済み、ベルガールが部屋まで案内してくれた。客室は4階から20階に位置しているが、用意されたのは低層階裏側のツインルームだった。ツインといっても、ベッドこそ2台入っているがメイクされているのは1台だけで、もう1台はマットレスの上に直接ベッドスプレッドが掛けてあり機能していない。タオルやアメニティも1人用のセッティングで、事実上シングルルームだ。

ベッド幅は98センチと狭く、窓際のアームチェアとコーヒーテーブル、コンパクトに集約されたデスクユニットが入って精一杯のスペースしかない。それもそのはず、ツインルームながら全体で20平米に欠ける面積しかなく、シティホテルの標準客室としては非常にコンパクトな部類だ。デスクの上は案内物やポットで埋め尽くされた感じで、添えられているのもスツールと、雰囲気的にはドレッサーのように見える。

照明器具はナイトスタンド、デスクスタンドとダウンライトだけだが、狭い室内を照らすのに不足はない。窓はさほど大きくないが、低層階の裏側から眺められるのは隣のビルの壁と狭い通りだけなので、採光ができるだけで十分だ。室内のどこにも姿見がないのが不便だった。ルームサービスは朝食と夕食のみ営業している。

バスルームは客室全体に比較すれば、とても広く取られている。タイル張りのユニットバスで、これといった特徴もないが、バスタブは足を伸ばせるだけの長さがあった。アメニティには工夫が感じられず、最低限の用意。すべてのタオルは決して顔など拭きたくないほどに黒ずみくたびれていたので、交換してもらった。また、バスタブは手前はきれいに清掃されているが、奥の側はアカでザラザラだった。

昼食をとっていなかったので、館内で簡単に済ませられるところはないかと、ロビーの案内表示を眺めてみたところ、地階の寿司屋が手軽そうだった。掲示されたポスターには、「限定ランチメニュー平日11:30〜14:30」と大きく書かれていた。時計を見るとちょうど14時だったので、ささっと食べれば閉店を遅らせることもないだろうと思い、地階へと向かった。

暖簾をくぐって店先に立ち、係に案内されるのを待っていると、奥からエプロン姿の従業員が現れ、怪訝そうな顔をこちらに向け、そっけない口ぶりで「もう終わりですよ。」と言った。「え?二時半までじゃないの?」と尋ねると、「二時ラストオーダーですよ。外に書いてありますよね。」との返答。どこに書いてあるのか聞けば、店先まで出て「どっか、ここいらへんに、、、あら、ないわね、、、」とか言いながら、表示を探している。「第一、暖簾だって出ているじゃない」と指摘すると、きっぱりと「しまい忘れです。」と言う。

結局表示はみつからなかったが、そんなものがあろうとなかろうと、ホテルで店を構えるのなら、客を無礼に追い返すようなまねはすべきではない。事情があって客を迎えられないのであれば、丁重に断って見送る姿勢くらい持ったらどうだろう。だが、彼女から感じ取れるのは、てこでも飯を食わせまいという意地の悪さだけだった。

そうなったら、こちらも黙ってはいられない。そもそも態度が失礼ではないかと苦情を述べると、「客なら何を言ってもいいと思っているんですか?」と顎を突き出し反論する。こうなるとホテルの接客としてどうかというレベルでなく、そもそも客商売として失格だ。怒りを通り越して悲しくなってくる。彼女も面倒な相手だと察したのか、奥から職人を呼んだ。職人は「ホテルのレストランっていうのはね、30分前がラストオーダーだと常識で決まっているんですよ。うちもそういう風にやっているんで、どうしようもないですね。」と説教を垂れる始末。

システムの話ではなく、何とかしようという気持ちはないのかを問いたいのに、まったくかみ合わない。彼女の態度は失礼ではないかと指摘すれば、彼女が横から「私、スイマセンって言いましたよねぇ」と口を挟む。こんなウソまでついて自分を正当化しようとは、哀れとしか言いようがない。とにかくレベルが低すぎて話しにならないので、マネジャーと直接話すと言うと、お好きにどうぞという感じだった。あとから考えれば、こんな根性で握られた寿司など口に入れずに済んで、かえってよかったと思う。

マネジャーを呼んで苦情を言うと、よく話を聞いてくれた。時間外だが今からでも好みの店で好みのものを調理させるとも言ってくれた。だが、すっかり食欲は失せていたので辞退して、気分転換に札幌の街をそぞろ歩きすることにした。すでに外は暗くなり始めていた。

大通公園に出て、テレビ塔の展望室まで上がってみた。ガラス張りのエレベータは、ゆっくりと上昇していく。上昇するにつれ、自分の年齢がさかのぼっていくような気分になり、展望室に着くころには、すっかり青春時代になっていた。確かに初めての場所ではないが、それ以上に懐かしさが込み上げる雰囲気があった。見下ろす景色は、雪まつりを目前に控えた大通公園。雪像の仕上げが急ピッチで進められている。その周囲では、色鮮やかなイルミネーションが、真っ白な雪景色に映えて美しい。

札幌グランドホテルのあたりまで歩いたところで、急に雪が強く降り出した。結構歩いたので体も冷えている。どこかに入って暖を取りながら何か食べたいと思った時、「味の時計台」の看板が目に入った。話のネタに入ってみようと、交差点を渡り、早足で店の中へ。行列ができるほどの店なはずなのに、随分とガラガラだなと思ったら、よく見ると並びにある違うラーメン店だった。ガラガラなだけに今更引き返すわけにもいかずそのまま注文したが、結構美味しく食べられた。

翌日の朝食は、フロント脇のカフェレストランでブッフェ。広い店内はツアー客で賑わい、活気があった。並ぶ料理はそれほどパッとしないが、やはりコーンやジャガイモなど北海道の食材に目が行く。食事の後にはロビーラウンジで総支配人と話す時間を持ち、前日のマネジャー同様、話をよく理解してくれた。出発時には見えなくなるまで見送ってくれたのはうれしかったが、ホテルとしてまた訪れたいという魅力を感じさせてもらえなかったのが残念。

ツインには窮屈な室内 船室のようにコンパクトにまとまったデスク周辺

スッキリとしたバスルーム バスタブ

ロビー周辺 朝食は明るいカフェレストランで

[札幌全日空ホテル]

Y.K.