ルネッサンスを11時過ぎに出発して、20分程度で万座ビーチホテルに到着した。ホテルのメインエントランスにルネッサンスのストレッチリムジンが横付けされると、野球帽にスタジャンというスポーティなユニフォームを着たスタッフが、ちょっぴり不思議そうな表情を交えながら出迎えてくれた。巻貝の内部を思わせる曲線が組み合わさったアトリウムには、まだ朝の空気の名残りがあった。今朝チェックアウトしたゲストたちは、すでにホテルを後にしており、館内には連泊中のゲストがわずかにいるだけだった。
まだ部屋には入れないだろうと思いつつも、とりあえずフロントに向かった。すると、「すでにお部屋のご用意ができております」と、簡単な手続きの後、客室まで案内してくれた。アサインされたのは、プライベートビーチや万座毛とは反対側の、名護湾を望むツインルーム。この時期はビーチハウス周辺で工事が行われており、部分的に景観が損なわれていたので、こちら側の方がかえってよかったかもしれない。騒音も気にならないし、美しい海が存分に眺められた。
改装を終えて間もない客室は、まだそのにおいが抜け切っていないが、以前とはレイアウトを変えて、家具も一新することにより、まったく新しい客室に仕上がっていた。面積は32平米と本島西海岸のリゾートにしては狭いが、その限られた空間をいかに有効に活用するかを吟味したことが伺える。ベッドは窓向きに据えられているが、それではベッドがドアへのアクセス部分にまではみ出してしまう。そこで、背の高い一枚仕立てのヘッドボードをパーテーション代わりに置き、その裏側に冷蔵庫とミニバーを配置することで、不自然さを解決している。デュベスタイルの寝具には、ミンサー織のクッションを添え、沖縄らしさを演出している。
デスクの脇には液晶テレビが置かれ、その横のスペースには十分な収納が設けられている。3段の引き出しと、その横には扉つきの棚があり、さらにその上にはオープン棚もあるが、スーツケースや大きなバッグを広げられる台がリクエストベースで用意というのはやや不便かも知れない。サイドボード上部のオープン棚がパタリとたためたら、サイドボード上でスーツケースが開けられて申し分ないのだが。その他、室内にはソファセットや観葉植物を備え、くつろげる雰囲気。照明はスタンド類に加え間接照明もあるが、コントロール性に乏しい。窓の外にはバルコニーがあり、窓には網戸もあるが、バルコニーにはくつろぐための椅子などの用意はない。
すっかりイメージを変えた居室に比べ、バスルームは扉以外に特段手を加えた形跡は見られなかった。バスタブやタイル仕上げの壁に独特の色使いが見られるバスルーム内でひときわ目を引くのが、琉球ガラスのトレーに収められたアメニティだ。それは最近全日空ホテルの特別フロアでよく見かける「ラテデュール」シリーズで、このホテルでもハイフロアーの客室に用意されている。タオルは3サイズ2枚ずつ。バスローブ、ナイトウエア、ゆかた、サンダルを備える。
ルームサービスもあるが、品揃えはシティホテル風で、しかも値段が高い。ルネッサンスでは2,000円しなかった握り寿司は4,000円弱と、倍近い値段設定だ。沖縄らしいメニューもなくてつまらない。3時間仕上げのランドリーは健在だ。また、新たにオープンしたスパは、宿泊客なら無料で利用できるのがうれしい。エステにも力を入れており、充実した設備とメニューを用意している。
夕方を過ぎてから、館内はにわかに活気を帯びてきた。ルネッサンスと比較すると、若いグループ客が圧倒的に多く、アクティブな雰囲気がある。社員旅行の団体もあり、客室はほぼ満室状態のようだった。この日もほとんど曇り空で肌寒かったが、せっかく沖縄に来たのだからと意地になってか、プールで泳いでいる若者もいた。しかし、すぐに唇を青くしてジャクージに逃げ込んでいたのが印象的だった。
このホテルは敷地が広く、様々な設備が点在しているので、一日で遊び尽くすのはまず不可能なほど、アクティビティが充実している。だが、天候が悪いと実施できないものが多く、この日も強風の影響でほとんどのアクティビティが中止だった。
朝食は中国料理店「花梨」も営業しているというので、中華ブレックファーストにチャレンジしてみた。店内は改装され、まるで都心の大規模カジュアルレストランのようなケバケバしい内装に驚かされた。沖縄らしい落ち着いた雰囲気とは縁遠い。妙にモダンにしてしまうところが、全日空ホテルズの金太郎飴的センスだろうか。バイキング形式の朝食には、飲茶風アイテムも並び、よく賑わっていたが、肝心なお味はいまふたつ。素直に和朝食を選べばよかったと後悔した。
朝食後は日が差してきたので、ビーチまで散策に出かけ、半潜水型観光船「サブマリンJr.」に乗船した。結構な乗船料を払って、喜び勇んで乗り込んだが、船底にある客室には、海底を覗ける丸い窓が並び、それがぶ厚く凸レンズ状に見えるため、動き出すより早く気分が悪くなった。「ご気分が悪くなった方は、船上のデッキにお上がり下さい」とアナウンスがあると、乗り込んだ半数以上の人がデッキへ。これではせっかく高い料金を払ったのに、単にいかだに乗っているような・・・。だったらグラスボートの方が素朴でいいし、せっかくならシュノーケリングをマスターして直接魚と戯れたい。
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