成田空港周辺には数多くのエアポートホテルが点在するが、ホリデイ・イン東武成田は、空港ターミナルから最も近くに位置し、ホテル玄関からターミナルへの送迎バスに乗るとあっという間に検問所なので、渋滞知らずで予定が立てやすい。国際的な有名エコノミーブランドを冠し、成田地区で最も外国人が親しみやすく利用できるホテルだ。
ホテルは1975年完成の本館東館と、1992年に増築した新館西館とで構成され、全500室を擁している。フロント機能は本館に集約され、新館は主に客室を据えた。フロントのサービスはさっぱりとしており、必要以上の親切は見せず、中国のホテルのような印象があったが、頼んだことにはきちんと応じてくれた。
今回利用したのは、75平米のスイート。最高級スイートに次いで、2番目のグレードの客室だった。各スイートには、他の東武ホテル同様に花の名前を冠しており、ここはローズスイートと名付けられている。新館建物は、表通りに向かって扇状に曲線を描いたフォルムをしているが、このスイートは裏側の狭い方の列にある。それでもかろうじて空港第2ビル側の駐機場を見ることができ、エアポートホテルらしい旅情が感じられる。
客室はスタンダードルーム3室分を割き、2室をリビング、1室をベッドルームに当てた。室内はスイートらしい贅沢な造りで、高級な家具や手の込んだ装飾で華やかにコーディネートされている。90年代初頭のセンスなので、今となっては中途半端な古臭いイメージもあるのだが、ここまでしっかりとした造りは貴重だ。あまり機能性は重視せずに造った感があるのに加え、メンテナンスもよくないが、それでも部屋が死んだりしないのは、高級な設えによるものだろう。これで安普請に造っていたら、とうの昔に見るも無残になっていたはずだ。
入り口を入ったところには、ゲスト用トイレとクローゼットを配し、その先に広がるリビングには立派なダイニングセットと、ゆったりとしたロングソファを据えた。シャンデリア、フロアスタンド、ダウンライトなど、照明器具は各種備わっているが、コントロール性には乏しい。壁際にはウェットのミニバーとキャビネット、テレビ台に旧式のオーディオセットを備え、天井のBOSEスピーカーからは440ch有線放送も聞けるが、DVDなどの最新機器はない。LANもないし、洗浄機能付き便座もない。パワーカーテンは大きな音を立てるが、ヨボヨボな感じでうまく動作しない。室内はまだ90年代の環境そのものだ。
ベッドルームにはクイーンサイズベッドが2台並び、壁にはドレッサーとテレビ台が建てつけられている。真鍮を使った調度品を多用したリビングに比べると、スッキリと落ち着いた雰囲気だが、ベッドサイドのガランとした空間めがけて、天井からスポットが当たっているのが不思議だった。おそらく、以前は何かが置かれていたものと思われる。家具は全体的に非常に立派だ。
バスルームは室内で最もユニークに感じるセクションだった。高級な白い大理石を全体に張り巡らせ、明るい中にも重厚感のある造りだ。ベイシンの上にはサンライトがあり、日光浴気分も味わえる。トイレはベイシンの後ろに配置した。バスタブは浅いが楕円形の大型ジャクージで、強力な水流がなんとも心地よい。バスタブ脇の少しへこんだ部分にシャワースペースを設け、バスタブのスペースとは一体化した設計になっている。ベイシン部分とは、骨太な印象のガラス扉で仕切った。カランやシャワーヘッドなどは金メッキが施され、その根元や取っ手にはオニックスが使われているというゴージャス振り。しかし、アメニティはレギュラー客室と同等で、タオルも極薄タイプだった。唯一スイートらしさを出していたのはバスローブだった。
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