JR田町駅から徒歩5分。太い道をまっすぐ歩いて、大きな交差点を一度曲がれば、ホテルJALシティ田町はすぐ目の前だ。実際にはそれほど不便な立地ではないのに、どうにも辺鄙な場所にあるという印象がぬぐえない。周辺にホテルと共存共栄できるような施設がなく、ひっそりと孤立したイメージが強いからだろうか。 開業は1996年7月。当時はニューサテライトホテル芝浦として営業していたが、その名を広く知られることもなく2000年に撤退してしまった。バブルの勢いに乗って計画されただけに、今考えたら馬鹿げているほどに立派に造られている。JALシティにはもったいない贅沢さだが、かといってホテル日航にするのもピンとこない。結局、帯に短し襷に長しの中途半端なホテルなのだ。この条件の悪いホテルをよくJALホテルズが引き受けたものだと、ある意味拍手喝采したくなる。だが、平日の稼動は意外にも高いらしい。
この日、ホテルに到着したのは16時頃。ホテルにはきちんとした車寄せとメインエントランスがあるが、駅から歩いてくると、レストラン脇のサブエントランスが近い。レストランには屋外のテラス席も用意され、ちょっとしたカフェの雰囲気だが、ゲストもいなければ、通りかかる人も少なくて寂しい。また、ホテルの公開空地には木々に囲まれたベンチが設置され、憩いの場として開放している。また160室の客室数に対し、106台収容の地下駐車場を完備しているのは頼もしい。
大理石をふんだんに使った明るいロビーには、どっしりとしたソファやイスを配置して、リビング風の設えになっている。そのリビング風コーナーの後ろには地階へと続く階段が吹き抜けになっており、狭いパブリックスペースを広く見せるのに大きな役割を果たしてる。観葉植物の寄せ植えプランターが並び、鮮やかなグリーンがアクセントだ。フロントカウンターに立つのはほとんどが男性のスタッフで、サービスについてはとりわけ印象に残らなかったものの、カウンターの上に航空会社の時刻表や各種の案内物が並び、少々雑然としているのが気になった。
エレベータは2基。客室階エレベータホールも石張りで気合が入っている。客室は吹き抜けを囲んでロの字に配置されており、吹き抜けに面したガラス窓を見下ろすと、ガーデンチャペルとして活用されているパティオが見える。今回利用したのは、26平米のツインルーム。ツインには2種類あってすべて角部屋になっているが、こちらは狭い方だ。インテリアはパブリックスペース同様にヨーロピアンスタイルでエレガントに仕上げられている。
テレビや冷蔵庫を収納するだけでなく、片側がクローゼットになっている大きな家具、独立したデスクなど、備品はどれも立派だ。コーナーになった窓はそれほど大きくないが、遠くに目をやればレインボーブリッジも眺められる。しかし、2重構造の窓は内側が汚れて曇っており、景色よりもそちらが気になった。ベッドは110センチ幅が2台並び、インテリアにマッチした色合いの寝具が掛かるが、シーツはごわごわしているだけでなく、宴会場のテーブルクロスのように生臭く、眠りながらも気分が悪かった。
BGMはクラシックとポップスの2種類が用意され、天井の空調噴出し口状のスピーカーから音が出る。窓際にオットマン付きソファを備え、照明も十分に効果的と、快適な設えにも関わらず、メンテナンスが悪くクオリティを著しく損ねている。引き出しがまったくなく、収納にも不自由を感じる。また、非常口が妙なところに備わっているが、一見それとはわからないので、いざという時に果たして役立つのか疑問だった。
バスルームは総大理石仕上げで、カランもセンスのいいものを採用した。シャワーブースはないが、ベイシン、トイレ、バスタブが横一列に並ぶレイアウトで、面積的にも割とゆとりがあって使いやすかった。サテライトホテル時代には、イルカや魚がデザインの需要なモチーフになっており、その名残が随所に残る。ミラーや金属製のメモ用紙立て、ティシューケースなどの室内備品のみならず、玄関前のオブジェやエレベータの床など、至るところでイルカや魚に出会え、ホッとなごめる。ホテルの主人は変わっても、イルカのはしゃぐ姿は今も変わっていない。
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