ルポール麹町のエントランスは、ちょうどホテル棟の軒下に位置する関係で通りから少し引っ込んでいる。隣の賃貸マンションのエントランスがホテルライクな造りなこともあって少々紛らわしく、間違えてそちらのエントランスに入るところだった。ルポール麹町には神殿を思わせる石造りの立派な車寄せがあるが、ドアマンやベルアテンダントはいない。館内に足を踏み入れると、アーチ状の吹き抜け天井から下がる、3基のバカラのシャンデリアに圧倒される。ロビーには大理石をふんだんに使い、贅沢な空間に仕上げた。
フロントはシャンデリアを見上げる吹き抜けの少し奥に位置し、カウンターでチェックインをする。カウンターのこちら側にはゲストリレーションズデスクもあるが、スタッフは一人もいない。たくさんの生花も飾られているのに、この立派なロビーが冷たく感じるのは、そこにスタッフの姿がないからかもしれない。だが、サービスタッチは思ったよりも悪くはなかった。
客室へ向かうエレベータは3基あり、エレベータホールも大理石造りで立派だ。客室階は建物の中央部分が狭いながらも吹き抜けになっていて、ガラス越しに見下ろせる。廊下はそれほど贅沢ではないものの、ダウンライトとブラケットの照明が効果的で、ウォールナットカラーの客室扉が並ぶ様子には重厚感があった。
利用した客室は約25平米のツインルーム。見た目には均整が取れたデザインで、木肌の温かさがよく伝わってくる。窓際にはソファセットを置き、デスク周辺には収納も多く用意した。シングルベッドが2台ならび、真鍮のナイトランプとチューブの読書灯が備わる。トリプル対応用に、窓際のシッティングスペースにも第3のヘッドボードがすでに取り付けられているのがユニーク。ソファ脇には、エキストラベッド用のナイトランプと読書灯も備え付けられている。窓はわずかながら開閉可能で、都心の景観が望める。見た目はなかなかの室内だが、テレビはCNNすら観られないし、ゲストステーショナリーも一切用意しないなど、公共施設的センスが見え隠れする。
バスルームはタイル仕上げのユニットで、サーモスタットつきカランを備えるなど、グレードは高い。アメニティはディスペンサーのリンスインシャンプーとボディソープ、固形石鹸、歯ブラシのみというシンプルさ。追加アイテムはフロントに希望するともらえる。タオルはバスタオルとハンドタオルが2枚ずつだった。15階には展望風呂を備え、ステイゲストは無料で利用できる。広くはないが、都心を見渡しながら、石造りのブロアバスに浸かるのは爽快だ。
建物は随所に贅沢な内装を施しているが、センスの悪さが邪魔をして、その贅沢さが生きてこないのがもったいない。人的サービスこそ悪くはないものの、快適な滞在を彩る演出はほとんど見られず、ホテルライフ的には超立派なビジネスホテルという印象。お堅い周辺環境には溶け込んでいるし、民間ホテルを肩を並べて競う気などは元々持っていないのだろうから、ここはこれでいいのかもしれない。だが、それならこの贅沢さは、無用だったのでは?
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