地下鉄銀座一丁目駅に程近い一角に、そこだけパリの風景を切り取ったような外観の建物がある。真っ赤なテント屋根やコーナーの小さな入り口が印象的で、ここ銀座のイメージにもマッチしているホテルモントレ銀座は、2000年6月オープンの本館に加え、2003年10月に新館を増築し、規模を拡大した。新館といっても、建物は切れ目なく接しており、ひとつの建物であるような感覚だが、よくみると外観は微妙に違っていて、それがまたヨーロッパのような雰囲気を醸している。だが、ヨーロッパ風に感じるのは他の建物や道路が目に入らないような眺め方をした場合に限る。
フロントは本館の1階に位置し、客室数の割りには小ぢんまりとしている。スッキリとしたデザインだが、どことなくレトロな雰囲気もあり、演出力の高さが伺える。だが、係の対応は事務的かつ無愛想で、悪いイメージしかなかった。チェックアウト時に至っては「ありがとうございました」すら言えず、マナーの低さはホテルスタッフとしてという以前の問題であるように思った。また、ロビーに待ち合わせなどに使えるスペースはない。
館内にはエントランスから螺旋階段で通じている小さな宴会場と、その階下の小さなレストランの他は、これといった付帯設備はなく、宿泊がメインのホテルだ。客室階へは2基しかないエレベータで向かう。廊下はシックな中にも遊び心が見られ、天井からのペンダントライトが連なり、印象的だ。だが、掃除のワゴンも多数並んでおり、その雰囲気をかなり損ねていた。
客室は新館のスタンダードツイン21平米。確かに洒落た雰囲気には仕上がっているが、ラックレート32,740円は立地を考えても身の程知らずだ。せいぜいホテル界のスタバ的存在なのだから、値ごろ感が重要だと思う。この客室が3万以上だというのは、スタバの本日のコーヒーショートサイズがいきなり1000円位に値上がりしたような驚きだった。銀座はホテルが少ないので軒並み強気とは言え、実勢価格でも都内の標準よりは高い。
インテリアは思っていたよりも洗練されていた。高い天井に塗り壁というのは気に入った。スッキリとした白木の家具も瀟洒な印象で、フローリングは清潔感がある。115センチ幅のベッドは真っ白いベッドリネンでデュベスタイルに仕上げた。2種類のマグカップや紅茶ティーバッグ、軽やかなナイトウエアを用意し、雰囲気作りにはかなりの意欲が感じられる。また、近隣にある会員制のサウナを1,200円で利用できるとの案内もあった。
バスルームは黒を基調としたシックなユニットで、磨りガラスをはめた白いドアが印象的だ。アメニティは充実しており、髪留めやボディスポンジも備え、シャンプー・コンディショナーは小梅ちゃんキャンディーのような甘酸っぱい香り。タオルは3サイズ揃うがとっても薄いもので、このあたりにクラスがよく出ている。
ホテル前の道は、細いながらも人や車の往来が激しいが、室内までその喧騒が伝わってくることはなかった。客室からの眺めは、通りを隔てて隣のビルが見える程度。眺めの悪さよりも、隣のビルと互いに丸見えなのが気になるところ。だが、銀座に繰り出すにも、その他の都内要所にもアクセスがよく、ホテルステイそのものを楽しむというより、銀座に暮らすような気分を味わう使い方がいいように感じた。そのためには、気軽に利用できる料金と、素朴でも愛想のいいサービスが求められる。
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