新宿駅南口、サザンテラスの裏手に位置するホテルサンルート東京は、あまり目立つ存在ではないが、南口の再開発が始まるより前の1978年に開業している。館内には当時のアッパービジネスホテル事情が垣間見られ、とても興味深かいホテルだ。意外と便利な立地からかレートが高いが、狭い敷地に500室以上の客室がひしめき、それぞれの客室は狭い。
エントランスには立派な車寄せがあるが、ドアマンの姿はない。館内にベルアテンダントもいない代わりにカートが用意されている。ロビーにはソファが行儀よく並べられ、大きな本物の盛花が飾ってある。地方のプレステージホテルのような雰囲気があり、待ち合わせに便利そうだ。その脇には手軽な値段が魅力のコーヒーショップがある。フロントカウンターは奥まったところにあった。
手続きを済ませ、3機ある古くて遅いエレベータに乗り最上階の15階へ。今回の客室は1番奥にあるスーペリアツインルーム。このホテルに1室だけのスペシャルルームで、スイートのような位置づけになっている。43.5平米の客室は、スタンダードツイン2室分を割き、横広の構造だ。とても贅沢な家具や調度品を使い、客室のクオリティは高い。照明もよくできており、雰囲気のある落ち着いた空間を演出している。
室内はアーモアを境にして、リビングスペースとベッドスペースに分かれ、リビングには幅広のソファがセットされる。壁には油絵が掛かり、第3の窓のような役割を果たし、小さな作品ながら客室を見事に彩っている。デスク、ドレッサー、ミニバーキャビネットはそれぞれ独立し、ミニバーには豊富なグラス類も用意されていた。
ベッドはハリウッドスタイルに並び、凝ったヘッドボードに洒落た照明と、ムード満点ながら肝心の寝心地は一昔前の感覚。バスルームは大理石を贅沢に使っているが、シャワーブースはなく、シャワーなどの水圧も今ひとつだった。アメニティは標準客室のものに加え、バスローブを備える。
ここは特別な客室として、このホテルの標準クオリティをはるかに凌ぐ設えをしており、一昔前の贅沢に対する感性を懐かしめる雰囲気を持っている。スーペリアツインと呼ばれているが、ジュニアスイートでも十分に通用するレベルの客室だ。ラグジュアリーホテルのスタンダードルームに泊まる料金より安く、スタンダードホテルのラグジュアリールームで過ごすというのも、たまにはいい。
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