浦和ロイヤルパインズホテルへは、生活に溶け込んだ日常風景が見られる商店街を歩くが、道幅が狭いこともあって、高層のホテルがなかなか見えてこない。案内表示もない中、自転車を避けながら歩くこと6〜7分、ホテルがやっと姿を現した時には、エントランスまでわずかな距離だ。だが、すぐ手前に浦和レッズのオフィシャルグッズを扱うショップがあり、ホテルより先にそちらに吸い込まれてしまった。
浦和は埼玉の県庁所在地であり、ワシントンホテルや東武ホテルが進出していたが、ロイヤルパインズホテルの規模を持つものは初めてのお目見えだった。魅力的なホテルが不足していた埼玉地区に、やっと市民が胸をはれるホテルが完成し、新たなランドマークになっている。
駅からのアプローチとは反対側に、広い車寄せを持つメインエントランスがある。両者の間はアトリウムで結ばれており、ゆとりある空間配置を実現した。フロントカウンター周辺は落ち着いた照明に包まれており、リビング風のシッティングコーナーがいくつか設えてある。フロントのサービスは丁寧だが、要領の悪さが気になった。人によってスキルにもかなりの差があり、ラグジュアリーホテルでも通用する物腰と気遣いを持ったスタッフもいれば、早急にトレーニングを重ねる必要のある者も。マネージャーと思しき人は、外資系ホテルによくいるナルシスト的ないやらしさを漂わせるタイプだ。
ロビーはそれなりにシティホテルらしい雰囲気を持っているが、客室階に降り立った瞬間、ここはアッパービジネスホテルなんだと印象が変わった。せいぜいJALシティのクオリティでしかない廊下の内装は、とにかく質感に乏しく手入れも悪い。廊下にも猛烈なタバコの臭いが漂い、気分が悪くなるほどだ。室内は廊下ほどではないが、ファブリックに少し近づくとタバコ臭が気になる。
室内は開業から5年を経て、疲労を感じさせるものの、32平米のゆとりの空間は少なくとも廊下よりは快適な雰囲気だった。天井はゆるやかにカーブしており、窓も比較的大きい。120センチベッドが2台入り、ナイトパネルで照明を細かくコントロールできる。窓際には二人掛けのソファがあり、無料のLANを備えるデスクは独立させた。ミニバーにはインスタントコーヒー・紅茶とともにカップ&ソーサーを備える。さすがにテレビやビデオ、ファックスなどの電気製品は松下だ。ルームサービスはない。
また、ミニバー脇にはバーを操作することで、色彩を自在にコントロールできるユニークなライトが設置されている。情熱を引き出したり、いらだちを静めたりなど、色彩が心理にもたらす作用によって、気持ちに合った空間を作り出せるのが面白かった。
バスルームは約4平米と広く、あまり見ないレイアウトだった。全体はタイル仕上げで、ベイシントップは人造石。アメニティはモルトンブラウン製SOMOを使っている。バスルーム内でBGMが聞けるが、故障中だったのか、最小に設定しても割れんばかりの音量だった。タオルは3サイズ揃うものの、どれも黒ずんでひどい臭いがしたのが残念。浴室内照明は変化のある居室に対し、かなり平板だった。
客室はゆとりの広さと落ち着いたインテリアに加え、便利な機能を備えているが、どうもメンテナンスがいまひとつのようだ。扉を入った瞬間、居心地のいい客室なら、直感的にそれを感じさせてくれる空気を持っているものだが、ここにそれはなかった。せっかく立派なものを造りかけたのに、最終段階で内装をケチってしまったという印象。それは今更仕方がないにしても、心を込めて一部屋ずつ仕上げれば、もっと心地よい客室になるだろう。
レストランは多彩に揃うが、ロビーラウンジはなく、代わりにペイストリーショップに併設の喫茶コーナーを利用する。菓子類の評判はよいようだが、店の内装、サービス、食器など、どれを取っても巷のベーカリーカフェ並。とてもコーヒーで630円取れるレベルではない。宿泊にしろ、飲食にしろ、もう少し基本を大切にして、クオリティにまとまりをつけたほうがいい。
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