タクシーで到着した時、満車のパーキングからあふれた車と、車一台しか通れない細い車寄せでタクシーにもたもたと荷物を積み込む客のために、にわかな混乱が生じていた。ドアマンなのか警備員なのかよくわからないホテル従業員が2人いるが、車の誘導をするでもなく、ゲストの安全確保に努めるでもなく、なんの役にも立たずにボケッと突っ立っている。彼らの給料も宿泊料金に含まれていると思うと腹が立ってきた。タクシーの運転手も一言。「こりゃー、あかんわ。」
ロビーは2階にある。徒歩で来たなら表通りに面したエスカレータで上がれるが、車寄せからはエレベータを利用する。フロントへ行って周囲を見回すと、雰囲気が明るく健康的になっていることに驚いた。客室の改装に伴い、なにかしらリニューアルしたのかもしれないが、それだけではない。人が作り出す見えない空気感が向上したのだと思う。スタッフでも利用客でも、ココロがイガイガした人がたくさんいる空間は、空気がとんがっている。以前はなんともいやな雰囲気が漂っていたが、今はそんなではなくなった。大変結構。
フロントのサービスは素朴だが人当たりがよく、過去の印象が悪いだけに、涙が出るほど親切に感じた。ベルデスクはまだ残っているが、係の姿はなく、客室への案内は行っていない。ベルサービスは必要ないとは思うが、仮にも東急の最高級ブランドというカテゴリーに属すホテルだ。ないのはまずいだろう。東急ホテルズが統一され、カテゴリーを再編した時に、なんでこんな弱っちいホテルがラグジュアリークラスを謳う東急ホテルとして残ったのか不思議だった。ここよりは赤坂東急の方が100倍マシだと思っていたので、強い違和感があった。今回も、「一体、どこがラグジュアリーなんですか?」という意地悪な視点でもホテルを眺めてみたが、意外に生花をふんだんに飾っているということがわかった。ロビーやレストランに美しい季節の花を配し、気分をやわらげてくれる。おそらく、サービス面でも大きく見直しを図ったのだろう。
ホテルは5階から8階までと、9階以上とでインテリアの系統が違う。下層階はモダン系、高層階はまあ強いて言うならエレガント系か。今回は5階のモダンなシングルルームを利用した。改装を終えて間もないらしく、清潔で温かみのある客室だった。デザインの雰囲気はエクセル東急ホテルの系統だが、エクセルよりは若干上質な素材を使っている。そこがラグジュアリーの意地だろうか。
スタンダードシングルは17平米。幅はツインと同じだが、奥行きがない。部屋に入ると、いきなり通路にアームチェアとテーブルがある。こんな入口の落ち着かない所に置くかと思ったが、そこ以外に置き場がないことはすぐに理解できた。高級ホテルのスイートなどに入ると、部屋の構造や物の位置を知るだけでも探検する時間が必要で、それらを発見する楽しみというものがある。しかし、この部屋は入って3秒ですべてが理解でき、7歩で踏破できるほどに、わかりやすくてコンパクトだ。忘れ物もしにくいだろう。
窓際にデスクを配し、小型テレビ、バニティミラー、金庫、飲み物が入った冷蔵庫などを備える。ベッドは120センチ幅で壁に寄り添っている。ラジオと3種のBGMが付いたナイトテーブルは、エクステンションで広がる構造。クローゼットは入口近くにあるが、教室の清掃用具入れのように細くて小さい。バスルームもプラスチックのユニットで、くつろぐには狭すぎる。アメニティは最低限の用意で、シャンプー・リンスは1回分だけのポーションだった。湯の勢いだけは立派で、豪快なバブルバスを作れる。
窓は工事現場ビュー。もう少し覗き込むと、屋外プールが見えるがまだ空っぽ。ホテルの屋外プールが少ない大阪では貴重な存在だと言える。朝食は2階「シェリエール」にてブッフェ。2,425円だが、品揃えは並。東急インの950円朝食に負けている。サービスは悪くなく、とにかく花がキレイだった。お値段とお花がラグジュアリーの証し。
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