3年目の汐美荘。東京から単独で新潟駅に着き、出迎えてくれたピアノ教室の美登里先生の運転する車で村上に向かった。非常に風が強く、灰色の雲がかかる天気だったが、思ったほど寒くはなく、1時間の楽しいドライブだった。汐美荘に到着するも、出迎えがあるわけでなく、ディナーショーの出演者であって、ナレーションもソロ演奏もしていくらがんばったって、主役でなければこんなもんだと、世の中の厳しさみたいなものを実感した。新潟について初めて寒さが身に沁みた。
部屋の準備ができていないとのことだったので、ロビーにてしばらく美登里先生とおしゃべり。日本海に面して一面がガラスのパノラミックな窓からは壮大な眺めが楽しめる。ロビーは明るい造りで、落ち着きとはなやぎが同居した雰囲気だ。そうこうしているうちに楽器が運送されてきたので、会場に入ってセッティングを見守る。同時に客室のキーを渡されたので、衣類だけでもハンガーに掛けようと思って、落ち着いたところで客室に向かった。
客室は例年の海の見えない裏のビジネスルーム。しかも3年間で一番狭い。セミダブルベッドがキングサイズベッドに見えるくらい、部屋がコンパクトだ。ベッドが部屋の半分は占め、余ったスペースにテレビ、デスク、空気清浄機が置かれている。なぜか金庫だけは大きかった。クローゼットはなく、壁にハンガーが2本下がってるだけ。コンサートの衣裳すら掛けておく場所がない。また、スーツケースを広げようにも、バゲージ台はなく、床でするにも無理があり、結局ベッドの上を使った。身軽でなければこの客室は使いにくい。
バスルームは狭いがほとんど使うことはない。地階には素晴らしい浴場設備が整っている。昨年改装して、掛け流しの浴槽や、大きな露天風呂が整備された。夕映え温泉街道と名付けるだけのスケールがあり、怒涛のような荒々しい波音を聞きながらの入浴は気持ちがいい。
美登里先生のお部屋も拝見したが、新館の海に面した和室は、さすがに開放的だった。バルコニーもあるが、出ようと思い窓を開けようにも、風があまりにも強く開かない。やっとの思いで開いたら、室内に嵐がやって来たかのうような凄まじさだった。畏怖すら感じる光景を前に、これでこそ日本海という印象だった。
夜はディナーショーで熱演して、終わってからはレセプションに参加し、疲れ果てて部屋に戻ったが、どうにも寝付けずに徹夜。翌朝はボーっとしたまま朝食に出掛け、再度ロビーでおしゃべりをしてから、次の演奏会会場へ移動した。出発時も見送られることなく、寂しく汐美荘を後にした。
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