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2003年12月22日

京都ブライトンホテル Deluxe Room
喜-4 感性のツボ
レストラン「フェリエ」
京都駅からタクシーで10分程度。古都らしい路地に入り、車窓から趣きのある家並みや店の軒先を眺めていると、突然ホテルのアプローチが目に入ってくる。高さ制限によるものとはいえ、6階建ての落ち着いた建物は、周辺の閑静な環境に見事にマッチし、風格のある佇まいをしている。その雰囲気は、どことなくリージェント沖縄を初めて訪ねた時を思い出させた。

ドアマンの出迎えは、必要以上に元気があるでもなく、とても礼儀正しく上品だった。ちいさなエントランスを通り抜けると、スケール感のあるアトリウムに圧倒される。しみじみと見れば、アトリウム自体さほど大きいわけでも、華美なわけでもないが、建物の外とは明らかに違った雰囲気を持っており、そのギャップに不思議と心躍らずにはいられなかった。

フロントでも極めてスムーズに手続きが済み、感じのよいベルガールに客室まで案内してもらった。最上階6階のインペリアルスイートの隣に位置するデラックスルームは、東を向いており、家並みの向こうには御所の緑、更に遠くへ目をやれば東山や大文字焼が望める。低層ホテルなので眺めは期待していなかったが、さすがトップスイートの隣室だけあって、古都を見渡す静かな風景が得られる。ベルガールによれば、夕暮れや朝も京都らしさの感じられる眺めだが、ちょうど正面玄関前でスペシャルイルミネーションを実施しているので、夜になったらこの窓からぜひ見てほしいとのこと。それはブルーの幻想的な眺めだった。

ベルガールは退室する前に、こちらが花束を持っていることに気付き、「花びんをご用意いたしましょうか?」と尋ねてくれた。活けてしまえば持ち帰れなくなるが、今が盛りという感じだったので、持ってきてもらうことにした。すると、差し支えなければ、こちらで水切りをしてから花びんに入れて持ってくると言うので、そのようにしてもらった。ここまで気を利かせるのは珍しい。

奥行きの長い客室は、温かみのあるインテリアで、細部まで端正に仕上げた印象だ。天井は低いが、背の高い家具もないので開放的。客室入口付近にはクローゼットやバスルームがあり、内扉を隔てて居室になっている。居室は手前半分がベッドスペース、奥半分がリビングスペースになっており、それぞれに十分な広さを確保した。全体で42平米と、最近の国際ホテル事情では標準になりつつある面積だが、15年前には大胆な広さに感じたものだ。

ベッドは低いが真っ白なデュベをかぶせた羽毛布団がとても心地よい。騒音もなくぐっすりと眠ることができた。ベッドの前にはデスクや引き出しがある。ベッドとは簡単なパーテーションで仕切られたリビングスペースには、特徴のある長いソファが置かれている。ソファの両サイドにはサイドテーブルがあり、電話機やスタンドのほか、観葉植物やちいさなフラワーアレンジメントがあり、目を楽しませてくれる。ソファ前の大理石を使ったテーブルには天井からのダウンライトが当たり、明るく浮き上がって見える。テレビや冷蔵庫は蛇腹風の扉がついたアーモアに収納されており、その上にはいい感じの茶器などが並んでいる。窓は腰が低く取られており、幅も広い。6階の客室にはコンセントが不足しているが、尋ねると後に改装した5階以下には、すべてコンセントを増設してあるとのこと。

バスルームはオーソドックスだった。開業当時にはバスルームを広くする発想はなかったのかもしれない。今にしてはもう少し工夫して欲しかったところだ。タイル張りでシャワーブースはなく、給湯も安定しなかった。バスタブに湯を張っていると、時折間欠泉のように、カランがゴホゴホと咳き込むことがあった。タオルは4種類あり、ウォッシュクロス以外は紺の刺繍が施されてて、いずれも肌触りがよい。バスローブを備えるほか、ワッフル地のナイトウエアも用意する。アメニティは非常に充実しており、品質もよかった。

客室は非常によく清掃が行き届いており、広さや仕様から想像される以上に快適だった。手を伸ばせば欲しいもの、目をやれば見たいものといった具合に、室内にはきめ細やかな心配りがちりばめられている。いたずらにモダンに走ることもなく、日本人の感性に見事に訴えかけるツボを、しっかりとおさえているといった印象だ。

チェックインをしてから、すぐに体調に変化が表れ、一時的に激しく発熱してしまった。症状が軽いうちに薬を飲んで、明るいうちからしばらくベッドで休んだら、夜には概ね回復したが、レストランで夕食を楽しむ元気はなくなった。レストランを諦めて、ルームサービスを注文することにし、中国料理店から運ばれる粥を選んだ。ナマコやモツが入っていると食べられないので、電話口の係に尋ねると、すぐに具が何であるか説明してくれ、その知識に感心した。

このホテルではアトリウムを使った無料コンサートを定期的に開催している。この日はクリスマスプログラムで、地元を中心に活躍する歌手とコーラスグループが出演していた。客室は吹き抜けに面してぐるりと配置されているが、演奏中でも室内は静寂が保たれる。開演時間に合わせて、ふらつく体を引きずりながら、吹き抜けに面した廊下から見下ろしてみた。アトリウムラウンジは満席の賑わいで、その周辺にも演奏に聞き入っているゲストが数多く見られる。照明や演出にも工夫があり、思いのほか本格的で楽しかったので、機会があれば出演してみたいと思った。

アトリウムをぐるっと囲む各階の廊下には、数多くの観葉植物が飾られている。見た目だけではなく、空気を浄化する役割も果たしているというこの植物、きちんと手入れが行き届いているのが素晴らしい。これに象徴されるように、京都ブライトンホテルでは、インパクトばかりを狙った派手な演出はしていないが、どうしたらゲストに気持ちよく過ごしてもらえるかを心で考えて、それをひとつひとつ実現しているという印象を受けた。だから、いろいろな場面からスタッフの人柄がとてもよく見えてくる。サービスは乾いたところが微塵もなく、かといってベタつくところもない、さらり、しっとりという感じの快適さ。いいホテルだった。

デュベスタイルの真っ白な寝具が清潔感をかもす 室内の奥が広いリビングスペース

室内手前がベッドスペースとデスクなど デスク周辺

リビングスペースにあるテレビや冷蔵庫のキャビネット 長いソファがくつろぎを演出

ウェルカムお菓子 お茶の器もいい感触

ソファのサイドテーブルにはフラワーアレンジメント もう一方のサイドテーブルには観葉植物

広いベイシン バスタブ

タオル類には紺で刺繍が入っている 充実のアメニティ

客室から見下ろす正面玄関前 大文字焼も見える

レストラン「フェリエ」の前 アトリウムコンサート

アトリウム一角のフロントカウンター アトリウムラウンジを見下ろす

正面玄関前 周囲の環境とも調和している外観

[京都ブライトンホテル]

Y.K.