このホテルにチェックインするのは、いつも決まって小樽からの帰り道だ。90年代初頭の開業だから、もう10年以上が経ち、館内のあちこちがくたびれてきた。ブラックにゴールドをあしらったようなシックでゴージャスなインテリアは、当時でこそ見栄えがしたものの、今では時代遅れな感が否めない。また、パブリックスペースは、ものの配置が微妙に変わったり、余計なものが加わったりして、ごちゃごちゃとした田舎っぽい雰囲気になってきた。バブルの目を通して見たモダンやシックさは、完全に時代の流れに呑まれていった。このホテルはその墓標のようでもある。
かつて非常に快適だと感じた客室も、今回は気が滅入った。単に古くなっからだろう。アメリカンテイストの中にシンプルさを極めたために、今となってはそっけなく感じられる。このインテリアでベッドカバーを用いないことも、清潔さを際立たせるより、一層部屋を寒々しく見せるだけだ。クローゼットを含め、すべてが置き家具で、ひとつひとつはしっかりとしたいい品物だけに、ファブリックの色褪せやへたれが、主人の去った屋敷の一部を彷彿とさせる。バスルームのアメニティはまだ充実しているが、トイレの洗浄機能はいまだに備わっていない。清掃がきちんと行き届いているのが救いだった。
パブリックスペースも閑散としていることが多かったが、団体客が到着する時間には、にわかに賑わいを見せる。ロビーラウンジでは、定期的に生演奏が入り、デザートブッフェ目当ての地元のゲストに好評のようだ。サービスもまずまず。
国際クラスのレベルを十分に備え、ハイクラスのホテルとして十分に通用するはずなのに、まったくぱっとしない。ツアーでもエクセルホテル東急など、明らかにロークラスのホテルと同等か、それ以下の価格で販売されている。確かに、値段を考えれば素晴らしい滞在ができるが、逆に見ればそれだけ恐ろしいほどに安売りしているということだ。このホテルが勝ち組になれない理由は、河を隔てたハンディのある立地だけではない。立派な建物を建てたはいいが、その後にさすが外資系と納得させるセンスを注いでいないのだ。
新しくオープンしたJRタワーホテル日航札幌の様子も見に行ったが、日航の方がはるかに安普請にできているにもかかわらず、演出が優れているし、空間がはらんでいる空気そのものの味が違う。ルネッサンスも空気を育て、センスという魔法の粉を惜しみなく振りまけば、札幌で別格のホテルに返り咲けるかもしれない。1ヶ月くらい研修をしてやりたいくらいだ。
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