この日は中川駅近くにある、くしもと整形外科の開業三周年に開催されたコンサートに出演した。個人で経営する決して大きくはない病院なのだが、開業時から毎年こうしたコンサートを企画し、患者さんたちに喜ばれているという。看護士を含め、病院スタッフが前日の診察を終えてから、リハビリ室を立派なコンサート会場にしつらえ、当日も何かと気遣いを見せてくれた。こうした思いやりのひとつひとつは患者さんにも同様に行き届いているに違いない。1時間半のステージの合間には、観客にお茶が振舞われるだけでなく、手土産まで用意する気のまわしようには頭が下がった。もちろん、入場料は無料。通院している患者さんだけでなく、すでに完治している人も、うわさを聞きつけて整理券を入手し、来場してくれたそうだ。コンサート中には、健康と音楽の相乗効果をテーマに、院長とのトークタイムもあり、アットホームで和やかなコンサートだった。
午前中に公演が終わり、その後は松阪牛をごちそうになった。有名な店が軒を連ねる中、院長のオススメは「海津本店」だった。「金・銀・海津」として名高い3名店のひとつだ。立派な門構えの奥には、静かな佇まいが感じられる。とても古い建物らしく、随所に使い込まれた風格が漂っていた。客席はすべてが座敷になっており、落ち着いて食事を楽しめる。それぞれの座敷に通ずる廊下はとても広く、立派な屋敷のような雰囲気。座敷に上がると、手入れの行き届いた庭が目に飛び込んでくる。木枠にガラスをはめ込んだ古い窓も、風情があって心が落ち着く。
見事な霜降り松阪牛は、さっぱりと塩で味付けし、さっと焼き上げて食べる。とろけるようでありながら、流れてしまうことのない味わいがあった。すべては仲居さんがペースを見極めて進めるフルサービスなので、面倒なく食事が楽しめるのもありがたい。
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