見事な櫻の気で名高い福島県三春町を、コンサートのために訪れた。寺の本堂を使ってのユニークなコンサートだったが、集まった町の人々はとても温かく、心がかよう忘れられないひとときとなった。終演後は寺の中で、主催者や関係者と楽しく談笑し、用意されたホテルに到着したのは深夜だった。
町の中ではひときわ新しく、整備の進んだ町の中心に位置するホテル八文字屋は、和と洋が溶け合った新しいスタイルのホテルだった。どちらかというと和室の方が本来の持ち味なのかもしれないが、フロントやレストランはホテルライクなサービスを提供している。フロント前には小ぢんまりとしたロビーラウンジ風のコーナーもあり、飲み物や手作りのお菓子を味わうこともできるようだ。
客室は洋室と和室どちらがいいかと尋ねられ、使い慣れた洋室をリクエストしたが、扉に貼り付けられた館内案内図を見て、失敗だったと後悔した。洋室はシングル仕様だが、和室は次の間付きのスイートだった。だが、選択したシングルルームよりも4倍近い面積のある部屋で一人というのも寂しいので、コンパクトなシングルルームで都合がよかったとの考え方もある。
シングルルームはホテルというよりも、友人の一軒家の一室という雰囲気だった。ベッドに毛布、そして更に布団が重ねられていたが、夜になってその意味がよくわかった。この町は寒いのだった。ベッドの前には引き出し、脇にはデスクと冷蔵庫があり、スペースの余裕はあまりない。バスルームは小さなユニットバスだが清潔感があった。アメニティも家庭用のボトルがドンと置かれ、洗面器があるのも家庭的。ただ、湯を張るのに随分と時間がかかり、寒いので張ったそばから冷めてゆくのが困りもの。小さなバスタブを一杯にするのに20分以上かかった。タオルも非常に薄手のもの。
冷蔵庫には無料のミネラルウォーターがあり、お茶とともにお菓子が用意されているところは旅館風だった。だが、大浴場などの設備はない。朝食はレストランにて。和定食にサラダやデザートも付く、盛りだくさんの内容で、味もなかなかだった。
|