甲武鉄道の始発駅、日本赤十字発祥の地、松平讃岐の守の屋敷跡と、さまざまな歴史の舞台となったエリアに立つこのホテルは、新館イーストウィングが完成し、本館とあわせて665室の規模となった。これを機に名称をホテルメトロポリタンエドモントと改めたが、池袋のホテルとよく似た名前になって、遠くから披露宴などに出席する人々にとってはとても紛らわしい。しかし、JR東日本のシティホテルブランドの一員として、メトロポリタンの名を冠することもゆずれなかったのかもしれない。
新館イーストウィングにはプティダブルからデラックスファミリーまで、各種タイプの客室が揃うが、テーマパークのグッドネイバーホテルとしての需要にマッチした、ファミリーレジャーに向いた仕様になっているようだ。グループに適した仕様の客室が多く、トイレとバスルーム、ベイシンを分けたり、1室4名の客室を2室コネクトすることで、同時に8名のグループが利用できるタイプもある。
イーストウィング1階にはコンビニエンスストアやブッフェレストランもあり、裏口を出れば飲食店街もあるのでレジャー客ならずとも便利な環境だ。一方、本館にはビジネスユースに適したシングルルームや標準仕様のツインルームなどを中心に、宴会場や各種レストラン、バーなどが配置され、同じホテルでありながらそれぞれの棟でまったく違った個性を持っている。
今回は本館の客室を予約したが、フロントでエグゼクティブフロアへの変更を申し出た。ひとり1,000円の追加料金で最上階12階に用意された客室に変更が可能だという。本館12階の改装はイーストウィングの開業にさきがけて、2002年12月に完成。家具はほぼ以前のままに、ベッドを120センチ幅に改め、ヘッドボードは新しくした。昔ながらのオーソドックスなインテリアだが、ファブリックは新調されているので、古さはそれほど感じさせない。
室内の照明は明るいが、その分、入口とバスルームは暗い印象を受けた。ナイトランプがツインベッドの左右に離れて設置されているのも珍しい。ベッドが広くなった分、ベッドと窓の間はとても狭くなった。しっかりとした立派な肘掛け椅子が置かれているが、ほぼギリギリのスペースしかなく、イスに腰掛けがら壁の割りに小さな窓から外を望むと、なぜか列車に乗っているような気分になる。また、空調の温度調節が困難なこと、キーを差し込まなくては作動しない電気系統など、不便な部分もあった。
デスクには高速インターネットのケーブルが用意されており、このサービスは全客室にて無料で利用できるというが、せっかくの優れたサービスを、まったくPRしていないのはもったいない。予約サイトやホテルサイトで積極的にPRすれば、訴求力になるはずだ。
バスルームはタイル張りだが、あまり広くはない。調光が可能なのはありがたいが、バスタブ上に照明がないので、全体的に暗く陰気な感じだ。アメニティは随分と豊富に揃っており、街のサウナに備わっているような化粧品も置いてある。タオルはバスタオル、ハンドタオル、ウォッシュクロスがあり、バスローブも備えるなど、一般階よりは充実した内容になっている。
このエグゼクティブフロアには、エグゼクティブサルーンと名付けられた空間がある。いわゆるエグゼクティブラウンジのようなもので、このフロアに滞在中のゲストは自由に利用することができる。サルーン内は客室とは雰囲気が違い、改装されたロビーと同系統のモダンなインテリアだ。シングルルーム5室を割いた広さがあり、チェックインやアウトも可能だとの表記があったが、実際に係がデスクに待機していることはほとんどなく、機能しているようには見受けられなかった。それでも、バーカウンターには終日ソフトドリンクが用意され、夕方にはハウスワインも加わる。ビールは有料にて用意できるとあったが、無人なので注文のしようがない。朝食は至ってシンプルで数種のパンとコーヒー・紅茶にジュースのみだが、パンの味はなかなかのものだった。
フロントのあるロビーフロアはまだ一部改装中だったが、8月にはすべて完成するという。ロビーのインテリアは流行りのテイストに改められ、光る床や市松模様風の装飾など、ハーシュ・ベドナー風のテイストに仕上がっている。既存の素朴な石壁にもよくマッチし、独特の雰囲気を作り上げた。ロビーの中央にはラウンジがあり、コーヒーは税・サ込み1,000円だが、何も注文せずに休憩スペースとして利用することも可能だという。それを知らなければ、なかなか勝手に座ろうという気にはなれない雰囲気だ。
また、このホテルは規模に比較して駐車場が少ない。本館の駐車場は立体式で、よく混雑を呈している。この日も婚礼などに列席するゲストが続々と到着し、駐車場の前には長蛇の車列ができた。しかも、複数の入口から車が進入してくるものだから、こちらが先だ、いやこちらだと車同士でもめている光景さえ見られた。それであせって気が立ったのか、たった一人しかいない駐車場係は、客に対するものとは思えない、極めて横柄な態度を取って、さらに客の怒りを買っていた。
イーストウィング開業と共に、新館地下にも駐車場が新設されたが、裏手にある広い道路からは進入禁止で、本館側から進入するようになっている。しかし、なぜか進入禁止の側だけに満車/空車の表示※があり、肝心な本館からの進入路にはそれがない。しかも、その新館地下駐車場は極めて立派な入口を持っているにもかかわらず、最大でも34台しか駐車できない。まったくもって竜頭蛇尾だ。しかも、係員をおく余裕がないそうで、機械式の上段は全く使用しておらず、実際は下段の17台分しか稼働していない。何とも不親切で非効率的な駐車場だ。ちなみに駐車料金は1泊1050円で、24時間の無料券を発行してくれる。やはりここは、電車で飯田橋駅から歩いてくるべきホテルなのだろうか。
※2003年8月には、裏の道路からも満車/空車の表示が見えないように改められていた。
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