改めて泊まってみると、なかなかデザインのよいホテルだ。特に客室。確かに最新の設備やモダンで上質なインテリアを求めると物足りないだろうが、この客室にはここなりのよさがある。今回利用した客室は桜木町の駅やみなとみらいの方角を向いた高層階のツインルームだ。ハーフミラーの窓は雁行しており、室内に躍動感を与えている。見える景色もまたダイナミックだ。
ワシントンホテルが立ちはだかってさぞや眺めが悪くなっただろうと思っていたが、なかなかわるくはない。室内は淡いブルーやベージュのやわらかい色調だけでまとめられており、とてもやさしい感じがする家具は艶の少ない木目が落ち着いた味わいを出しており、クローゼットや冷蔵庫の扉のルーバー風の細工はリゾートホテルのテイストだ。そこに真鍮のスタンドやミラーがアクセントとなるよう配置され、全体的にソフトな中にも都会的なエッジが感じられる客室だ。
しかし、これらもすべて手入れが整っていていなければ台無しだ。清掃はかなりひどい状態だった。窓は手垢で最悪、テーブルも汚れているし、グラスやスリッパなどは使う気になれないほど。写真では見えないが、こうした汚れは客室の価値を著しく低下させる。レンタカーだって、借りるときにはちゃんと洗車をしてあって、窓がべとべとに汚れているなんて聞いたことがない。このホテルのみならず、清掃がいい加減なまま、結構な料金を取ってゲストを客室に通すホテルが少なくないが、それらは皆、レンタカー会社以下の意識でしかないということだ。
そしてここは設備面でも問題がある。空調は4管式で温度調節が自在だが、作動音が気になる。電車や車の音もうるさい。トイレには洗浄機能がまだないし、デスクにはモジュラージャックさえない。アメニティも減ってしまった。前回は比較的好印象だったフロントサービスも、今回は違っていた。正面海側の客室を予約してあったにも関わらず、サイドの街側にアサインされそうになったので、間違いを指摘したが、「失礼しました」の一言もないどころか、不服そうな態度を取られた。出発時もあまり感じはよくなかった。
このホテルは、やりようによってはまだまだ魅力溢れるホテルとして輝けるはずだ。立地も悪くないし、きちんと心を込めて清掃してゲストを迎える準備を整えれば、もっと快適に過ごしてもらえて高い評価が得られるだろう。小規模なホテルならではのアットホームさや親しみやすさを実現すれば、目の前に立ちはだかる外資系や巨大ホテルにはない魅力で勝負できるのではないだろうか。まずは清潔であることに胸を張れるようになって欲しい。
そして、もっとサービスすることを楽しんで欲しい。ホテル全体に覇気がなく、なんとなく諦めムードで惰性営業をしているような感が漂っているのが、残念でならない。ホテルがホテルであることに疲れてしまっているかのようだった。ぜひ奮起して輝きを取り戻してもらいたい。
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