2001.10.13
リゾートの草分け
富士屋ホテル Deluxe Room 花御殿
楽-4

花御殿全景

穏やかな天候に恵まれた10月の週末は、絶好の行楽日和となり、富士屋ホテル周辺もかなりの賑わいを見せていた。車を正面につけると、駐車場が混雑しているということで、係が車を預かってくれた。玄関周辺にも活気があり、その場にいるだけで楽しくなるような雰囲気があった。快活なベルマンが荷物を持ち、フロントへ案内してくれる途中、傾斜のきつい古びた階段を上がる。汗をにじませながら一歩先を歩くベルマンの姿に、このホテルの気質を垣間見た気がした。

フロントもチェックインの手続きをするゲストで混み合っていた。しかし、係は一組ごとのゲストに対し、丁寧に接していた。案内係がちょうど出払ったようで、ソファを勧められてそこでしばらく待つことになった。程なく声を掛けられたが、この歴史に満ちた空間をもう少し味わっていたいくらいだった。案内係は客室へ向かう途中、レストランの営業や施設の案内はもちろんのこと、廊下に掛かった写真や建物の歴史などについての説明をしてくれる。神社仏閣を訪ねた時のガイドさながらだ。その年配の案内係は、ベテランかと思いきや、トレーニーのバッジをつけていた。

客室は花御殿3階。本館を向いた客室だったが、洋館や木立が見え、視界が遮られているわけでもなく、このホテルらしさは十分に感じることができる。客室に入ると、まず天井の高さに圧倒される。家具はどれもしっかりとした材質で、存在感たっぷりだ。清掃は十分に行き届いているが、建物が古いせいか、独特の臭いが感じられる。廊下の音もよく響き、周囲の客室で扉の開閉をするごとに、ガラスが共振していた。

バスルームもまた天井が高く、ゆとりのあるスペースになっている。バスタブには温泉がひかれており、客室に居ながらにして温泉を楽しむことができる。湯量は十分だが、湯温が安定するにはやや時間を要した。バスローブも常備されている。客室の扉がオートロックではないところも、今の時代にはかえってユニークだ。

しかし、このホテルは客室にばかりこもっていてはもったいない。館内を見て回るだけでも、あっという間に時間が経ってしまう。開業以来の資料などを展示したコーナーもあり、歴史を振り返ることができる。夜にはぜひレトロなムードのバーへ。特別驚くような仕掛けはなにもないが、人それぞれに何かを感じさせてくれるにちがいない。

天井の高さにご注目 清潔感のあるベッドは寝心地もGood

窓枠は木製 客室扉やバスルーム扉も木製

バスルームの天井もとても高い ベイシンは石

こちらはパブリックバス ロビー裏手にあるポスト

昔の玄関 木立に囲まれた洋館は雰囲気たっぷり

宴会場 水車

日本料理「桂」

ランチタイム終了ぎりぎりの時間だったので、さくっと食べられる品を注文したかった。メニューを見ると、そば、天ぷら、うなぎとそれぞれ手頃な値段で定食があった。うなぎを注文しようとすると、30分掛かるとのことだった。どうやら生きているものを調理してくれるようだ。しかし、そう呑気なことを言ってはいられなかったので、今回はそばのランチにしてみた。サービスはよく行き届いていた。店内は蛍光灯の照明が明るいが、窓がなくやや殺風景な感じがした。

Y.K.