2000.03.07
修学旅行の宿
ホテル日航アリビラ Corner Suite
哀-3

この寒空に堂々たる稼働率

ブセナにふられ、さてどちらに泊まるのがよいか、おおいに悩んでしまった。最終的に候補として残ったのは、ルネッサンスかアリビラだった。結局、ルネッサンスは料金的な部分で却下することになった。ルネッサンスフロアの35平米の客室でさえ3名で6万9千円だという。それなら2日早く帰って、パークハイアットにでも行ったほうが利口かなという気分になる。その点、日航アリビラはスイート半額キャンペーン中で、8万円のコーナースイートを4万円。今回はアリビラに宿泊することに決めた。那覇からは比較的近いから便利だし、以前利用したときの印象も悪くなかったのでそれなりに期待していた。

しかしチェックインの時点から不満が生じてしまった。特別なにか手違いがあったわけではなく、単に係の態度が尊大だっただけだが、おおらかで人のよさそうなホテルマンが多い沖縄では異質と思えるほどに冷淡な目つきで、言い捨てるような説明の仕方をするのには閉口した。やれ、割引料金だからマイルはつかないだの、混雑しているから夕食は予約しないと利用できないから今すぐ予約しろだの、それらは実際に仕方がないことでも、もうすこしやんわりと説明するべきだと思った。

案内されたスイートは中央のウイングの先端部分に位置するコーナーだったが、なぜこの部屋がスイートと呼ばれるのか疑問だった。確かに先端のコーナーで眺めは最高だし、バスルームは広く取られている。しかし、インテリアは一般的なデラックスルームと同等だし、室内の設備もほとんど変わらない。エントランス部分の無駄なスペースとバスルームに割いた14平米に追加のアメニティと眺めだけで、料金差4万5千円、つまり倍以上の料金設定をするのは合点がいかない。それなら、この上のアリビラスイートに準ずるインテリアと室内設備にしたほうがバランスがよかったように思う。

正直、スイートならではの設えを期待していただけに、最初に部屋に入ったときはがっかりしたが、その落胆を癒してくれたのは2面の窓から望める広大な海だった。やはりビーチリゾートではオーシャンフロントに勝る条件はない。海を眺めるのに遮るものがないというのは実に気持ちがいいものだ。そのための倍以上の室料だと考えることにした。

客室入り口を入ると、クローゼットと冷蔵庫を配した前室になっており、十分な広さがあるがほとんど無駄なスペースだ。内扉を隔ててベッドルームになっているが、2面の窓があることを除けば、標準的なデラックスルームとまったく同じインテリアでまとまっている。家具などもまったく同じで、唯一違うのは毛布が羽毛布団になることのみだ。天井高は275センチと高くまったく圧迫感がないので、リゾートならではの開放的な気分になれる。ベッドは120センチ幅でこれまたデラックスルームと同等であるうえに、枕がベッド1台にひとつしか備えられていないのも共通している。

この客室でもっとも充実しており、デラックスルームと差があるのはバスルームだ。外光の差し込むルーバーつきの窓を持ち、ダブルベイシン、深いバスタブ、広いシャワーブースに、別室になったトイレがあって12平米近い総面積がある。天井も230センチと高いので、このバスルームをもうひとつの続き部屋と考えてスイートとしているのかもしれない。

アメニティもシャンプー類は残念ながら大型ボトル形式になってしまったが、ほかのアイテムに関しては、一般客室よりもグレードアップされている。大きな石鹸や子供用の歯ブラシセットもあり、ユニークなメイクアップ落としのボトルがあった。タオル類は3サイズ各6枚ずつ用意されており、バスローブや健康ランド風のはではで室内着もある。いくらこうした小物を用意してありがたみを持たせようとしても4万5千円の料金差を埋めるには至らない。

チェックインした夜は、疲れてしまいレストランに行ってしっかりとした食事をする元気がなくなってしまったので、ルームサービスで簡単に済ませる事にした。疲れてしまった理由のひとつは、館内を我が物顔を闊歩する夥しい数の高校生たちの存在だった。彼らはレストランなどの施設を利用することは禁じられているようだったが、ありとあらゆるパブリックスペースに出没し、雰囲気をかき乱してくれる。せっかくオフシーズンのリゾートでのんびりしようと思ったのに、まさに高校の校舎に間違って入り込んでしまったような感じだった。

ルームサービスは基本的には予約が必要な朝食と21時から24時までの夜食、12時から24時までのドリンク類に限られるが、ルームサービスメニューとは別に、夕食の時間にいくつかのセットメニューを用意していた。その中から松花堂弁当2,800円を注文したが、味は×。これを食べた瞬間に翌日のディナー候補から日本料理レストランは消えた。サービス体制も未完成で、このホテルには料理を載せて運ぶトロリーさえ用意がないそうだ。

高校生たちは向かいのウイングに滞在しているらしく、客室のベランダからのりだしたり、ぶら下がってみたり、はめをはずしすぎ。夜中になれば、浜辺で奇声をあげて騒いでいるし、挙句の果てにはプールに服のまま飛び込んでしまう。もうここは大人のくるところではない。

オーシャンフロントで、しかも2面に窓を持つ開放的な室内 ダブルベイシンで使いやすい

窓を開けると向こうの客室にコンニチハ 広いシャワーブースと仕切られたトイレ

オリエンタルレストラン「金沙紗」

ここ「金沙紗」の飲茶は宿泊客というよりも、むしろ地元の人々に人気が高いそうだ。那覇でもどこでも、沖縄の人との会話でアリビラが話題にのぼると決まって飲茶がおいしいと口を揃えるほどだ。その話題の飲茶を目当てに、朝ゴハンを抜きにして、ちょっと早めに飲茶ブランチを楽しむことにした。オープン早々一番乗りしたのでゆったりと食事ができると思ったのもつかの間、引き続いて次々と入店があり、あっという間に店内は賑やかになった。テーブルにはクロスが掛かり、すぐに熱いお茶を用意してくれる。

お馴染みの飲茶ワゴンには蒸篭に入った各種点心のほか、煮物、炒め物などが満載。ワゴン以外にはサラダ、オードブル、一品料理、スープ、チャーハン、焼そば、蒸し饅頭、ちまき、フルーツ、デザートと、一度に全種類制覇するのは至難の業と思えるほどの品揃えだった。ひとつひとつはたいした量でないから、どんどんいけそうな気もするが、意外とすぐにギブアップ。それでも2,000円の料金を考えれば大満足。地元の皆さんに人気なのもうなずける。このオトクな飲茶ランチと比較すると、ディナーのコース料理は割り高感があるので、高いだけのことはあると思わせる工夫がほしいところ。

鉄板焼「護佐丸」

店の前でメニューを眺めていたら、スタッフがオススメ料理を説明するために話し掛けてきてくれた。「混んでるんですよねぇ。何時ごろだったら席が空きそうですか?」とたずねるといつでもOKとの返事。ディナータイムは予約が必須と言われていたのに、いったいなんだったのだろう。考えてみれば、混んでいるといっても宴会場で食事をとる修学旅行生しか宿泊していないのだからレストランが混雑するわけがない。ほかの店も覗いてみたがどこも閑古鳥だった。

一度部屋に戻って身支度を整えてから店に入ると、4割の席が埋まっている程度で、ゆったりとしたちょうどよい雰囲気だった。手頃なオススメコースを注文し、活伊勢海老を追加。グラスで白ワインをもらったが、渇いたのどにも心地よくは感じられない味だった。鉄板の前に立つ担当の調理人は、いかにも調理人らしい感じで、愛想がいいわけでもなく、かといって寡黙すぎるでもなく、淡々と調理を進めるタイプだった。沖縄のリゾートで食べる肉だから、まったく期待はしていなかったが、予想に反してなかなかおいしい。

ところが、コース以上にいい値段がする伊勢海老の方は、輸入ものでしかも瀕死の状態からの調理だったため、ナイフを入れられても、鉄板であぶられてもほとんど微動だにせず、苦痛のない安らかな最期を遂げたようだ。せっかく命を捧げてもらったのに恐縮だが、ちっともおいしくなかった。

標準的なサービス人のなかに一人だけ際立ってすばらしい気配りを見せる女性サービス人がいた。そのジェシカと言う名の若い女性の話す日本語は流暢の域を超え母国語感覚。聞けば南アフリカの生まれだという。実に生き生きとしており、サービスそのものを楽しんでいる様子だった。こういったサービス人がひとりでもいれば、その店での食事は格段に楽しくなる。

Y.K.