1999.02.27
ホッとできる店
ブラッスリー「桜の木」相模原
楽-2

町田街道の桜美林大学の角を曲がり淵野辺の駅に向かう途中に、なぜかフランス料理店がある。どうして「なぜか」を付けたかというと、その付近をご存知の方ならご理解いただけると思うが、首都圏でこれほどフレンチレストランが似合わない場所はそうないだろうし、この立地でフレンチを成功させたら、もう恐いもんなしだろうからだ。

整備不十分な狭くて走りにくい道沿いで、周りは古くからの地主が所有する屋敷や畑、居酒屋とスナックがポツリポツリとあるような場所に、とりあえずその町並みに溶け込めそうな、レストランというよりはドライブインか園芸店といった感じの建物がある。駐車場の入り口にはためくトリコロールが無ければ、レストランだと気付かなかったかもしれない。

しかし、店内に入ると生花とアットホームなインテリアや清掃の行き届いたフローリングの床が目に入り、従業員からは同じくアットホームな雰囲気の出迎えを受け、まるではるばる車を飛ばしてやってきた、田舎のオーベルジュに到着した時のような気分にさせてくれる。窓からの景色は焼き鳥屋の真っ赤な看板を除いてはのどかな感じをかもし出しているし、店内は別荘地のレストランのようなので、本当に遠くに来たような錯覚があった。

料理はコースが3,400円から5,800円までの3種類のほかアラカルトがあり、コースの内容は希望によって他のコースの品やアラカルトと入れ替えてくれるという柔軟さ。手頃な価格で柔軟なサービスだから、今日ではありがたい存在だ。料理には手を抜く感がまったく見られず、注意深く仕上げられた料理をコンテンポラリーな器に美しく盛りつけ提供している。一皿一皿から料理人の謙虚さと繊細さを窺い知ることができたが、欲をいえば大胆さや圧倒的な説得力をブレンドしてくれたら、なお満足できたと思う。

例えばサフラン風味とある品でサフランの味や香りが微かにしかしなかったり、ブルーベリーソースとある品にフレッシュでないブルーベリーを用いていると、ちょっとさみしい。食後にそのシェフがテーブルまで来てくれた。初対面の若いシェフは、その料理の印象そのもので非常に謙虚で勉強家、向上心に溢れ、今後が非常に楽しみだ。サービスも押し付けの無いスマートなもの。

みんなで店を良くしていきたいという気持ちが満ちているから、店の設えの割に居心地もいい。週末はピアノの生演奏も。ガスなしのミネラルウォーターを置き、高級品よりもお値打ちワインの品揃えを充実させると、より楽しみが増すだろう。

1999.04.04
再訪
ブラッスリー「桜の木」相模原
楽-3

昼食の時間を逃し、もうファミレスに行くしかないかと思いつつ、断られるのを覚悟でオーダーストップの時間間際に「桜の木」に電話を入れてみた。到着する頃にはオーダーストップの時間を15分ほど過ぎるが、うかがってもいいかと尋ねたところ、快く「お待ちしております」と言ってくれた。これはありがたいことだ。急いで駆けつけると、マネージャーがエントランスから出て出迎えてくれ、店内に案内されるとすでにすべてのテーブルが食事を終え、食後の歓談をしているところだった。あまり待たせてもいけないと思い、じっくり考えずに3種のコースの中から中間のものをオーダーし、ワインはムルソーのデミを選んだ。

一番手頃なコースから、1,800円、2,800円、3,800円とあり、内容というよりも、品数に差がある。食事が始まる頃には他のお客は皆帰ってしまい、いつのまにか我々だけになっていた。料理は価格の割に素晴らしく、十分な満足感がある。勉強熱心なシェフは前回指摘した点をしっかりクリアーにしており、その柔軟さに驚かされた。全体的にオーセンティックな料理ではあるが、本来遊び心が十分にある料理人だと見受けられるし、盛り付けのセンスはデリケートでチャーミングな感じだから、もう一工夫して、はっと思わせる取り合わせの料理を楽しませてもらえる日も近いような気がする。次の再訪が楽しみだ。

食事を終え、店の中央に構えているピアノを弾いてみた。軽やかで転がるような音が出るピアノだ。ちょうどこの季節にふさわしい音色で、食後のひとときを彩ってみた。この空間でプライベートなパーティーも、きっと素敵に違いない。

2001.03.28
さくらづくし
フランス厨房「桜の木」町田
楽-3

淵野辺にあったブラッスリー「桜の木」が移転し、装いも新たにオープンしたのは、2000年の11月だった。近所なのですぐにでも出かけてみたかったが、いつでも行けるという安心感が足を引っ張って、結局半年近くもおあずけになってしまっていた。町田で最も高層のビルに入っているが、高層階はすべて住居なので、店がある2階からは町田の雑踏しか眺められず景色は悪い。その分、店内中央に前の店舗でもおなじみだった白いグランドピアノを置いたり、生花をふんだんに飾ったりと、店の中はやさしいカラーのインテリアとともに、なごめる空間に仕上がっている。

エントランスに扉を設けず、軽快なBGMを流してるのも、気取らずに過ごせる雰囲気を演出しているようだ。ランチタイムには開店前から行列ができる人気だそうだが、ディナータイムは比較的落ち着いており、ねらい目。ディナーコースは2,500円という手頃なものから8,000円のプレミアムコースまであり、その他にもアラカルトを用意しているので、選択の幅が広く様々な用途に利用できる店だ。

この日は季節に因んだ「さくらづくしコース」6,500円を注文。料理のすべてに「桜」が含まれており、春の味わいがたっぷり。桜色のテーブルクロスに映える色とりどりの器もおもしろい。デザートにも力がこもっており、最後まで十分に楽しめるコースだった。ワインは手頃なものから贅沢なものまで取り揃えている。週末にはピアノの生演奏が入るそうだ。レストランには欠かせない清潔感も十分にあった。

2001.05.19
終演後のひととき
フランス厨房「桜の木」町田
楽-3

ソロプチミスト町田主催のコンサートがはねて、役員の皆さんや共演者とともに食事をとることになった。幸い、同じビル内に「桜の木」があり、自然とその店に向うことになった。週末の夜で混雑をしていたようだが、我々が入店した20時にはすでに店を後にするゲストもいて、徐々に落ち着きを取り戻そうとしているところだった。そこに予約もなく11名で押しかけたものだから、マネージャーを少々慌てさせてしまったが、ちょうどうまい具合に奥の席が一列空いたところで、全員仲良く並んで座れるようセッティングをしてくれた。

まずは良く冷えたシャルドネのワインで乾杯をして、もっともリーズナブルな2,500円のコースを注文した。オードブル、スープ、メインディッシュ、デザート盛り合わせ、コーヒーという構成で、この価格でもメイン料理は肉か魚をチョイスすることができる。グリーンピースの冷製クリームスープは初夏らしい爽やかな味わいで、ガラスのしゃれた器が印象的。メインは仔牛のクリームソースか、金目鯛のバルサミコソースから選択。デザートも賑やかに盛り付けられ、かなりオトク感のあるコースだった。

突然にしては、十分すぎるほどのサービスで、料理の状態も良かった。ピアノの生演奏が入っていたが、ホテルラウンジ風のくつろいだ感じの選曲で、肩の凝らない雰囲気だった。家族のちょっとしたお祝いや、小人数での歓送迎会などに真価を発揮する、使い勝手の良い店。

2001.12.12
ふらっとフレンチ
フランス厨房「桜の木」町田
楽-3

ディナータイムの開店早々、予約もせず突然お邪魔した。フランス料理を食べようという構えがなくても、ふらりと立ち寄れる雰囲気なのがありがたい。この日は3,800円のマネージャーオススメのコースを注文した。手頃な価格ながら、内容はフルコース。料理の状態はいつも以上に気合が入っていた。素材の持ち味を最大に活かす火の通り方、十分な存在感があるけれど、素材の持ち味は殺さないソース。その価格からは想像できない質の高い料理だった。そして、食事の合間につまむバケットがなんとも美味しい。サービスはフランクで、肩肘はらないものだが、若いスタッフもよく気が付く上に熱心だ。

Y.K.