1999.12.18
MISO-Soup
コーヒーショップ「プリムラ」芝パークホテル
喜-2大門から程近い芝パークホテルは、客室数400室を擁し、各種レストランや宴会場を完備した都市型ホテルであるにもかかわらず、その控えめな存在感からか話題に上ることが少ない。ところがたまに耳にするウワサはよい評判ばかりなので、以前からどんなホテルなのか気にはなっていたのだが、実際に足を踏み入れたのは今回が初めてだった。
駐車場は本館の裏手、別館の地下になっており、やや狭くて入れにくい構造だ。車を停めて階段を上がると別館のロビーに出る。このフロアにはダイニングルームと日本料理店があり、大理石を敷き詰めたフロアの中央に噴水とせせらぎを設け、その周囲にテーブルを配置してある。別館と本館との間には道路があって、特に連絡通路などは設けられていないため、屋根もないところを横切らなければならない。
本館1階にあるコーヒーショップ「プリムラ」は、道路に面した細長い造りで、パステル調の淡いインテリアが、一昔前のはやりを物語っている。メニューはよくある感じの品揃えだが、食事をすればサラダバーが無料になるのがうれしい。今回はステーキ丼を注文してみたが、とてもリーズナブルだと感じた。サラダバーにはちょっとしたオードブル感覚のものや、デザート・フルーツも用意されている。
添えられた味噌汁は、インスタントではなく、刻んだ野菜がたっぷり入ったおふくろの味的なおいしさがあり、むしろ味噌汁の印象が大きかった。サービスは丁寧で快適。ただ、若い人たちを引っ張って行く立場である年配の黒服から、ホスピタリティのかけらも感じられなかったことは残念だ。12月の週末の昼下がりだからか、このホテルはかなり閑散としており、まるでここが東京の都心ではなく地方都市の老舗コミュニティホテルに来ているような気分だった。
2001.06.16
第2楽章
芝パークホテル Deluxe Room
楽-2別館地下の駐車場から荷物を持ったまま、狭い路地を横切って本館のフロントロビーへ行き、チェックインの手続きをして、またえっちらおっちらと別館に引き返し、エレベータで最上階の客室へと向かう。本館と別館は距離的にはさほど離れていないが、荷物を抱えて往復するうちに、なんとなく面倒な気分になっていた。フロント周りにはベルボーイの姿もあるが、すかさず近づいてきて手伝うほどの積極性は見られず、たっての希望をするほど大荷物でもなく微妙なところだった。通勤電車で目の前にたった壮年の紳士に席を譲るべきか迷うように、ベルボーイとしてもサポートをするかどうか考えていたのかもしれない。
フロントの係も若く、洗練された都市ホテルとは一味違う素朴な感じで手続きをしていた。ロビーには中年のマネージャーらしき人も出ており、雰囲気を引き締めるのに一役買っているようだった。この日の芝パークホテルは閑散としており、館内で出会うのは外国人ゲストが多かった。特に外国のホテルコンソーシアムに名を連ねているでもないのに、どういうルートで集客しているのか謎だが、外国人宿泊客の割合は大きい。
別館の最上階は、その他のフロアとはデザインが異なり、ペントハウス風のつくりになっている。11階までは廊下の両側に客室が並ぶが、12階はほぼ片側に客室を集中させ、もう一方は大きな窓を設えている。その窓からはかつて東京タワーの雄姿がくっきりと望めたのではないかと想像するが、目の前に大きなビルが建ってしまった今となっては確かめようがない。12階には大き目の客室のみを配し、エレベータホールや廊下の内装も、よりグレードアップさせてある。
今回利用したデラックスルームは横に広い形をしており、半分がシッティングスペース、半分がベッドといったジュニアスイートのようなレイアウトになっている。40平米には及ばない面積だが、アーチを描いた310センチの天井高がゆとりを醸し出し、ベッドとシッティングスペースを仕切るカーテンが、その天井高を強調している。家具のデザインや材質は箱崎のロイヤルパークホテルのものに似ている印象があるが、この客室の改装と箱崎の開業はほぼ同時期だから、当時の流行を反映しているのかもしれない。
電話機はベッドサイドのみだし、デスクもビジネス向きというよりドレッサー的なデザインで、あまりビジネスユースを念頭に入れた客室ではないらしい。その代わり、パイルスリッパやバスローブが用意されていて、さらにミニバーにはインスタントコーヒーやティバッグの他、ティーカップも備え、くつろぎの演出には思い入れを感じることができる。BGMはピアノ協奏曲の第2楽章ばかりを集めたものだった。
ベッドサイズは110×195センチとやや小ぶりだが、寝心地は悪くない。シッティングスペースに面する窓は、開閉可能だが眺めに魅力はない。増築に次ぐ増築で複雑な構造になった本館の建物が最も興味深い眺めだった。
バスルームはアウトベイシンで、ベイシン部分の床はカーペット敷き。大理石の天板でスツールも用意されている。大きめのバスタブはダークブラウンで、バスタブ周りと床には石を使い、壁はタイルで仕上げた。サーモスタット付きのカラン、シャワー共に水圧は低く残念。トイレの脇には、うかつにいじったら警報でも鳴りはしないかと思われる何やら古臭いつまみがあり、よく見てみるとBGMの音量つまみだった。アメニティには意外と気合が入っており、タオルもたっぷりと用意されていた。
ルームサービスの営業は6:45〜23:00。「使い心地のよいホテル」をモットーにしているだけあり、館内に製氷機、自販機、コインランドリー、アイロンコーナー、ビジネスセンターを設けている。翌日チェックアウトのために別館から本館に向かう途中のスロープで、さながら山車状態にトランクを積み上げた大きな荷台相手に、小柄なベルボーイがひとり悪戦苦闘していた。よもや横転しそうになり、見ていられず手を貸した。危機一髪。
バラエティ豊富なハンバーグを集めたフェアを行なっており、そのセットメニューを注文した。いずれのレストランも閑散としているようだったが、ここも閉店前のような雰囲気。半ば片付けられたサラダバーからも、郊外にある深夜のファミレスのような閉店ムードが漂ってくる。しかしハンバーグそのものはファミレスのそれとは違い、さすがにジューシーでおいしかった。値段も手頃だったのでまずまず満足。
店の中にいるとそうでもないのだが、外から店の中をのぞくとなんとも温かいムードを感じることができる。おそらく冬場なら一層そう感じられるだろう。
Y.K.