1999.11.01
時間厳守
リーガロイヤルホテル早稲田 Deluxe Room
哀-4

欧州を思わせる蛇口

昨日に引き続き、過剰投資の代表格をハシゴした。ロビーに見られる赤や青を配した大胆なカラーコーディネイトはあまり好きになれないが、ロビーラウンジに燦然と輝く4基のマリアテレジアシャンデリアはとてもゴージャスで、グランドホテル的な雰囲気を醸し出している。早稲田大学の大隈庭園に隣接したこのホテルの館内は、クラシックなインテリアでまとまっており、相当に思い切った投資をしたことがありありと伝わる。リーガロイヤルホテルグループの意気込みたっぷりの自信作だ。

パブリックスペースには、ゆとりのある空間を確保し、ホテルの規模にしてはかなりの数のソファが配置されている。2階には宴会場に併設した別のロビー空間があって、こちらもなかなか落ち着いた雰囲気だ。特に宴会のない日には、ちょっと一息いれるのにうってつけだといえる。

この日の午前中は東京地方に強い雨が降っていたので、なんとなく疲れてホテルに到着。チェックインタイムの14時よりも1時間半ほど早かったが、手続きのためにフロントへと向かった。フロントはいわゆるカウンターではなく、2台のデスクが並び、椅子に掛けてチェックインができるようになっている。チェックアウトタイムとチェックインタイムの谷間だったせいか、フロントの周辺にはだれひとり係の姿は見られなかった。

後からやって来たベルがバックヤードに係を探しに行って、やっと姿を現してくれた。若い女性の係は、おっとりとした感じで笑顔をたたえており、親切そうに見受けられたが「チェックインは14時となっておりますので、そのころにまたお越しください」と門前払い。どう見ても閑古鳥が鳴いているのだから、客室がふさがってるのでなければ、早いチェックインにも可能な限り対応したらどうだろうか。

せっかく早く到着して時間にゆとりがあるのだから、とりあえず荷物を収め、香りの良い石鹸で手を洗って、それからフレンチレストランで贅沢な午餐でもとりに出掛けようかという気分が、一気に萎えてしまう。これでホテルとしては数万円の収益をのがしたわけだ。ルームキーは渡せないというのに、荷物はクロークやベルで預かるのではなく、すぐに客室に運んでおくという。なんだか不思議なサービススタイルだ。

14時過ぎにフロントへ戻ってルームキーを受け取り客室へ向かった。当然のように、客室への案内は行われない。他のお客のケースを見ていても、客室への案内は行っていない様子だった。ますますサービスに関しては、ビジネスホテル並みだという感覚が強くなって来た。客室へ向かうエレベータは2基しかないが、宴会場へはエスカレーターが用意されており、上層階にはレストランもないので、127室の客室数に対しては不足を感じなかった。

客室階のエレベータホールや廊下は、かなりゴージャスに設えてあり、一瞬、一流ホテルに来たような気分にさせられるが、廊下にならんだ掃除機や使用後のタオルを集めるワゴンなどが無造作に並んでいるのを見たとたんに、現実に引き戻される。

客室内もいたって豪華だ。265センチの天井高、トータルで50平米近い面積を持つデラックスルームは、中央のフレンチドアでちょうど2分されるスイートの仕様になっており、ニューヨークのリーガロイヤルホテルとよく似た構造だ。

入口を入るとすぐ脇にミニバーがあり、冷蔵庫、大型の金庫が設置されている。鏡も照明もしゃれたデザインだ。また、リカー類はミニボトルではなく、4分の1サイズのものが用意されており、グラスは3種類ある。リビングルームにはソファと肱掛椅子、対面式のライティングデスクと椅子が置かれており、天井にはきらびやかなシーリングライトが設置されている。

リビングルームのテレビはビデオデッキを備えている。窓は幅225センチ、高さが170センチあり、若干出窓になっていて、リビングルームとベッドルームでは別の柄のドレープが掛かっているが、両方とも電動式にはなっていない。

ツインタイプのベッド幅は110センチで、客室が広い割にはかなり小ぶりなサイズだ。ベッドの両脇にはまだ余裕があるのだから、せめて120センチのベッドを入れて欲しかった。チェックインしたときには、すでにターンダウンされた状態で、上掛けのシーツもなく薄手の羽毛布団がむき出しの状態になっていて、せっかくの魅力的なインテリアのバランスを崩していたので、自分で逆ターンダウンを行った。ベッドルームには、小さめのテレビが収まったアーモアと、サイレントバトラー、クローゼットがあり、照明はナイトランプとダウンライトに頼っていて、スタンドはない。

その奥がバスルームになっていて、170センチ×310センチの総大理石張りスペースにダブルベイシンとバスタブが配置されているが、シャワーブースはない。トイレは別に扉で仕切られている。床にも大理石のモザイクがあしらわれているし、カットの入ったガラスの照明器具からは美しい光の模様が生じて、効果的な演出になっている。高級なバニティミラーやちいさなストールチェアなどにも、細部までこだわったデザイナーの意気込みを感じるが、手入れをする人のことを余り考えないでセレクトしたようにも見受けられる。真鍮製品や複雑な形状の部品が多く、手入れには困難を極めるだろう。

実際には、かなり手入れを怠っているらしく、たったの5年でもう相当に使い古したような感じになってしまった。ただし、タオル類に関してはほとんどが新品で、しかも3サイズ各4枚ずつ用意されているし、厚手のバスローブもある。アメニティはリーガローズをあしらった女性的なデザインだが、さすがにレザーはバラの包みには入っていなかった。アイテム的には充実している感があるせいか、石鹸のサイズが妙に小さく思えた。また、なぜかこの客室にはコンセントが不足している。電源を取れるコンセントは、バスルームを含めて2個所にしか見当たらず、自分の電気製品を持ち込む際にはかなり不便だ。

今回利用した客室には、ベッドルーム側の空調に不具合があった。4管式なので、随時好みの温度に調節できるはずだが、待てど暮らせど温度が上がらず、それどころかどんどん冷えてゆき、しばらくすると19度を下回るようになった。リビングは絶好調で25度近くある。空調の吹き出し口に手を当ててみると、ひんやりした空気が勢いよく出ている。

エンジニアに見てもらおうと、フロントに電話を掛け、それなりにじっくり時間を掛けて現状を説明したにもかかわらず、「温度が安定するまでには時間が掛かる」などと言って真剣に取り合おうとしないのは、不愉快だった。とりあえず、修理のできる人をよこして欲しいと頼んで待っていると、若いベルガールがやってきて、電話で聞かされたことを繰り返し、更に「これ以上温度は上がりません」と言い切られてしまった。リビングが25度あっても、寝室は19度以上にならないのがスタンダードだと言い張る神経が信じられない。

もう一度電話でエンジニアをよこすように言って部屋まで来てもらうと、どたばたと修繕をしてなんとか温風が出るようになったが、またいつ何時おかしくなるかわからないと言う。同行して来たフロント係は、「このまま、しばらく様子を見て頂いて、もしまたおかしくなったら、最悪の場合はまた考えます」などと言う。高級ホテルを自称するなら、「冷たい空気で、お体が冷えてしまったことでしょうから、なにか温かいお飲み物でもご用意させて下さい」くらいの心遣いは見せなければ。所詮、ここも高級ビジネスホテルの域。

リビングにはテーブルとソファがある リビングとベッドルームの仕切りはフレンチドア

扉を閉めるとこんな感じ ベッドは110センチ幅で狭い

ダブルベイシンとバスタブ トイレは扉で仕切られている

「レストランガーデン」

チェックインができなかったので、とりあえず食事をして待とうということになり、館内のどのレストランに入るか迷った。「レストラン ガーデン」の店頭に3,000円のランチが展示されており、「いいじゃない、これで」ということで、店に入った。ところが、だれひとりおがいない。しっとりと冷たい雨に濡れて寂しそうな大隈庭園に負けず劣らず、店内もひっそりと寂しそうだった。

給仕が恭しくメニューを差し出し、「今日は、お足元の悪いなか、わざわざお越し下さいまして、誠にありがとうございます」と丁重な言葉を掛けてくれ、葬式みたいだなと思いつつも、なんだか気の毒になり、情が動いて3,000円のランチは4,500円のランチに変わった。チェックインができて、部屋で一息ついてから来れたのであれば、きっとアラカルトでもっと奮発していたことだろうが・・・

4,500円のランチコースは、アミューズ、帆立のグリルとハーブのメランジェサラダ、オニオングラタンスープ、鴨のロースト、デザート、コーヒーという内容。その他に6,000円から12,000円までのコースがあるが、こちらはディナーと共通になっている。アラカルトも豊富にあり、印のついた季節のお勧め料理から好みのものをチョイスして組み立てるプリフィクススタイルのコースが6,000円で用意されている。

サービスに関しては、タイミング良く、動作もそれなりに洗練されているのだが、料理がそれに追いついていない印象だった。値段が手頃だから仕方がないのかもしれないが、鴨は相当に成長した品質の低い鴨で、脂の部分にエグみがあった。帆立貝のグリルについた焦げ目は、炭でつけたものなのかもしれないが、かなり炭化してしまって、ただただ苦いばかりだった。強いて言えば、オニオングラタンスープは、オーソドックスながらも、さすが伝統のあるホテルが作り出す深い味わいだなと感じさせてくれた。パンの味もなかなかだった。

デザートは単品で1,000円から1,500円の値段がついたアラカルトメニューから、好きなものを好きなだけオーダーできるという大盤振る舞い。理屈でいえば、1,500円のデザートを3品オーダーすればコースの元は取れるわけだ。だが、仮にこのデザート3品だけを注文することが許された場合、4,500円払う気になれるかどうか・・・ とりあえず、一品ずつきちんと皿に盛られて提供されるので、演出としては楽しいし、とても賑やかな雰囲気になる。

ワインは、シャンボールミューズニーをグラスで頼めるので、それにした。1杯2,500円であったが、新しく抜栓してくれたので、オトクだった。

1999.12.30
Standard>Deluxe
リーガロイヤルホテル早稲田 Standard Room
喜-2

ロビーラウンジのシャンデリア

このホテルでは、ジュニアスイートタイプのデラックスルームばかりが注目を浴びているようだが、スタンダードルームの方もなかなかよくできた客室で、こちらの方が好きだというひとも多いような気がする。38平米のスタンダードルームはすべて、デラックスルームのある大隈庭園側とは反対側に面しており、ホテルの植え込みと大通りを見下ろす他、遠くに目をやれば椿山荘の緑が望め、それほど悪い景観ではない。

デラックスルームよりも優れているのは、ベッドサイズが123センチ幅とゆったりしていること、ライティングデスク下に電源があることだ。また、デラックスルームではリビングのテレビにしかビデオデッキが設置されていないが、この客室では1台しかないテレビにビデオデッキが備わっているので、ベッドに横たわりながらでもビデオを楽しめる。

バスルームはデラックスルームのベイシンをシングルにした程度の差で、トイレも個室になっている。タオルの用意は各サイズ2枚ずつと、デラックスルームの半数だ。そしてやはり残念ながらシャワーブースはない。シャワーヘッドのフックが高い位置にしかなく、使いにくいとの話をよく耳にするが、確かに位置が高いと思う。ただ、使いにくさを感じさせるのは、そのフックの位置というよりも、自在に設定できるはずのヘッドの向きが、錆付いて変更しにくくなっているのが原因のようだ。スムースに動かせる客室もあれば、てこでも動かない客室もある。

水圧は十分で、シャワーを浴びても気持ちがいいし、バスタブに湯を張るにしても短時間でいっぱいになった。清掃状況は、よい点と悪い点とに大きく分かれた。窓や鏡、卓上などは非常に清掃が行き届いていたが、壁紙や家具の足などには汚れが目立ち、ベッドの下にはくしゃくしゃに丸められた大量のティシューが落ちていた。フロントやベルなどのサービスは、今回まったく不足を感じなかった。

ターンダウン後の状態 でも実は部屋に通された時の状態 立派なアーモアとライティングデスク

大理石張りのバスルーム 個室トイレ ベイシンの天板はグリーンの大理石

コーヒーハウス「コルベーユ」

夕食のタイミングがずれ、レストランに向かったのが午後9時に近かった。日本料理店やダイニングに入るにはすでに遅すぎると考え、手軽なコーヒーハウスに入ることにした。店内は段差のある2つのコーナーがあり、その一角がノンスモーキングセクションになっている。グリーンの絨毯にピンクの椅子、アイボリーの大理石のテーブルなど、ガーデンをイメージしたような内装だが、全体に淡い色調でまとまり過ぎている上に、照明が均一に当たりシャドウになる部分が少なく、あまり立体的に感じないインテリアだ。

それよりも、このホテルのセンスを疑わずにいられないのは、ブッフェ台に施した金銀モールの装飾だ。クリスマスの名残りなのかもしれないが、幼稚園の飾り付けの域を出ていない。サービスは丁重だが、あまり気が利くほどではない印象だった。メニューは写真入りでバラエティも豊富なので、目移りしてしまう。

悩んだ末に、写真ではおいしそうだったエスカルゴと海鮮丼、そしてパンプキンプリンとココナッツゼリーのコーヒー付きセットを注文した。実際に運ばれてきてガッカリしたのは、メニューの写真とは随分と違っていたことだ。よりおいしそうなのなら結構だが、「え? これって、本当にメニューに載ってたあれ?」と疑いたくなるほど。連れが注文したアップルパイは1,200円もするが、見た目にはそれほどおいしそうでなく、実際の感想も「700円程度の価値」だと言っていた。

ロビーラウンジで1,500円もしたケーキセットが、「コルベーユ」では900円、ケーキを2個注文しても1,200円と手頃。因みにロビーラウンジではオルゴールのBGMが流れているが、あのゴージャスな空間でオルゴールというのは寒々しい上に安っぽい。

Y.K.