1999.09.06
ホテル内フレンチの最高峰
「パストラル」ホテル西洋銀座
喜-4しばらくぶりでこの店を訪れた。前回見てはいけないものを見てしまったような気分でこの店を後にして以来、数年ぶりのことだ。かつては洗練度に欠ける従業員たちも見受けられたが、淘汰されたのか実に安定したいいサービスになった。午後1時を過ぎたばかりの店内は、1組の外国人グループがミーティングを兼ねた会食をしている他にお客の姿はなく、シンプルで控えめな内装がいつになく上品な表情を見せていた。その後も1組のご婦人方のグループが来店しただけで、のべ3組にとどまったランチタイムだった。
サービスに当たるのは2人の給仕で、少ないお客をもてなすには行き届かない場面も生じるかと思いきや、運にも恵まれて常に不足のないサービスが提供された。その身のこなしといい、自然な笑顔といい、高級店にふさわしい品格を備えたものだ。この落ち着きは、そう簡単に見につくものではない。
アペリティフのすすめ方ひとつ取っても、まるで心地よい馨りに自然と惹かれるようなスムースさだから、そそがれたシャンパンもひときわ味わい深く感じる。このペースに乗せられると、ランチのセットでなくアラカルトをオーダーして年代もののワインを空けてしまいたくなるのだが、その後には夕食に招かれてることを考えて、軽く済ませることで我慢した。
ランチコースは6,000円で、前菜、スープ、主菜、デザート、コーヒーと続く。給仕からその日の献立をよどみなく説明されるだけで、すでにこれから運ばれてくる料理の価値を一層高く感じることができる。そして、実際に提供された料理は、その期待を裏切るものでなかった。ランチコースだからといって、手を抜くこともなく、丁寧に調理されていた。パンに添えられたバターのおいしさも特筆に価する。
都心にありながら、ホテル内は別世界のような時間が流れ、行き届いたサービスでおいしい料理を味わう、まさにシアワセな気分だ。質のいいリネンのクロスやナプキン、磨きぬかれた銀器と華やかな食器に囲まれ、雰囲気を損ねるものが何もない空間があった。この空気はなかなか味わえるものではない。
Y.K.