1999.09.04
印篭
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
楽-3

街側の眺め

今回も、到着時の対応が適切ではなかった。エントランスでは、若いながらそれなりに経験を積んでいるように見受けられるドアマンが出迎えたが、車のドアを進んで開けるでもなく、荷物を降ろしてくれるように頼んでもスピーディな反応は見せてくれなかった。

また、荷物の中には精密機器も含まれているので注意するよう伝えたにもかかわらず、一度に運ぼうとするものだから乱雑に扱っているように見えた。それほど混み合っているわけでもないし、カートを車のそばに持ってきて、そこに移すように運べばより丁寧に見えたはずだ。

更に彼は、チェックインまでまだ時間があるので荷物はクロークで預かると言う。このホテルのチェックインタイムは午後2時だが、会員はより早い時間からのチェックインが可能で、そのような宿泊客は少なくないはずだ。会員のステータスをあらわしているバゲージタッグを荷物に付けてあるので、一目見れば早い時間のチェックインが可能なゲストであることが理解できそうなものだが、このホテルでは残念ながら印篭の効果は望めない。ここで役に立たずにいつ役立つというのだろう。

しかし、それ以降はほとんどマイナスなことは起こらなかった。クラブフロアのゲストリレーションズにも以前も増して健康的で親切な従業員が常駐するようになった。クラブフロアの場合、ゲストリレーションズとは何かと接点が多いので、彼らのサービスが即、滞在全体の満足度に影響を及ぼす。

クラブラウンジでのサービス内容には残念ながら少々コスト削減がなされていた。コーヒー・紅茶はセルフでも楽しめるように、デカンタでいつも置かれるようになって、ミルクは常温保存が可能なポーションとなったが、それだけでも印象はガラッと変わったような気がする。

朝食の内容と、イブニングカクテルでのサービスは以前と変わっていないが、ナプキンは布から紙に変更され、カトラリーも当初はクリストフル社製だったものが、今はルームサービスと共通のものが用いられていた。それでも、みなとみらい地区の3つのホテルを比較した場合、特別階のサービスとしては、インターコンチネンタルの圧勝だ。

客室は清潔で快適だったが、所々メンテナンスの至らなさが目につくようになった。開業から8年が経ち、そろそろ修繕を必要としている箇所もあるようだ。横浜のホテルとして考えれば、トップクラスの状態なのだが、横浜の水準に合わせてものを考えているようでは、そのうち話にならないホテルに成り下がってしまう。

バスルームは、洗浄機能付き便座が設置されていなかったり、壁に固定されたパワー不足のドライヤーなど旧式の設備ではあるが、さすが大理石を使用しているのでゴージャスで清潔だ。欲を言えば、シャワーブース内がもう少し明るいと良い。今回利用した客室のシャワーブースは扉のしまりが悪く、普段はかろうじて閉じているのだが、シャワーを浴びていると自然に扉が若干開いてしまい、外に水が流れ出てしまう。使用中でなければこの状態にならないので、客室係も気付かないのかも知れない。それをのぞけば、水圧は十分だし、一輪挿しに花が飾られていたりと、十分にくつろいだバスタイムが楽しめた。

ベッドの幅は、ツインタイプで120センチ、ダブルタイプで180センチと比較的大きなサイズだが、寝具がベッドカバーと一体になっており、横に垂れ下がったヒダの部分が長いので重たく感じる。更にマットがやわらかめなため、好みが分かれるところだろう。天井高は2メートル60センチあり、ワイドな窓も手伝って開放的だ。

現在、海側と公園側とではラックレート上3,000円の差があり、海側の方がより良い眺めだとされているようだ。実際に海側の方が眺望が開けており、リゾート的な気分が味わえるが、眼下の船着き場から出る発着案内アナウンスの声が大きくて気になってしまう。一方公園側は、文字どおり目の前に観覧車がドーンと構えており、夜ともなれば角度によってはネオンが眩しいくらいだろうが、騒音はそれほど気にならない。寂しがりやさんには、こちらの景色の方が賑やかで安心かもしれない。

海側ダブルルーム 窓から入口方面を見る

シャワーブース アメニティ

「スパイシーJ」

最上階のレストランは眺めが素晴らしい分、値段的には気軽には利用できないレストランが配置されている場合が多い。ところが、このホテルの最上階には、手頃な価格で気軽に楽しめるエイジアンビストロがある。エレベータで31階に降り立つと、片方が中国料理店でもう片方がエイジアンビストロになっている。両店舗ともに入りやすい雰囲気になっているが、これらの店どちらかで食事をする構えがあらかじめないと、ここまでがってくる気にはなれないかもしれない。

ロビーやエレベータホール、あるいはせめて客室内にでも、どんなメニューがどんな価格から用意されていて、今どのようなプロモーションが行われているのかを、もっと積極的に宣伝してもらいたいものだが、実際には営業時間すらはっきりと明示されていないのが現状だ。

この日は午後3時近くになってからの入店だったが、ランチのメニューが用意されていた。平日は2時30分までだが、どうやら週末は通しで営業しているらしい。現在は「アジアのスタミナ料理フェア」を開催中で、ランチセットは1,800円で提供している。豊富なバラエティから選択することができて、それに前菜とデザートが付いている。主菜単品の場合は1,200円だそうだ。渡されたメニューにはこのランチの記載しかなく、この時間帯にはグランドメニューからのオーダーはできないのかもしれない。なにしろハッキリしないことが多いのは不親切に感じた。

セットで1,800円といえば、このホテル内でもっとも安上がりのランチだが、店内には2組の先客があるのみで、閑散としていた。スパイシーな料理が中心だから、子ども連れやお年寄りには向かないのも原因のひとつかもしれない。運ばれて来た料理は雰囲気のある器に盛られ、店内の装飾とあいまってエキゾチックな気分を味わうことができる。コストパフォーマンスにも優れているので、気軽なデートコースとしてもオススメだ。布のランチョンマットとナプキンがホテルらしさを感じさせ、サービスも良く気が付き不足はない。

1999.10.02
大当たり
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル Club Superior Room
喜-3

この日のドアマンは「あたり」だった。スマートに扉をあけ、荷物をスムースに降ろし、柔らかな物腰で館内に案内してくれた。カバンのタグで会員であることを見て取ると、「いつもご利用頂きましてありがとうございます」とのひとこと。それだけでも嬉しく感じているのに、「すでにチェックインのご案内ができるかと思いますので、確認して参りましょうか?」と気を利かせてくれる。同じホテルでも人によってこうも違うものかと思うと同時に、最初に扉を開けてくれる仕種ひとつで、その後の展開は想像が付くと改めて感じた。

エレベータでクラブラウンジのある階に降りると、ラウンジの入口で5名のスタッフが出迎えの体制で待ち構えている。勧められるがままに椅子に掛け、レジストレーションカードに署名をしチェックインは終了。このスムースさが一流ホテルでは必要だ。その後も滞在中は何事も不自由なく、快適に過ごすことができた。チェックアウト時も、バゲージダウンを頼むと部屋に来たのはクラブフロアのマネージャーで、自ら荷物を運び出してくれる。

チェックアウトのためにラウンジへ出向くと、すでに会計伝票が用意されており、あっという間に支払いも完了。にこやかに「またお待ち申し上げております」と見送られ、またこのホテルを利用しようと、心に決める。正面玄関で車に荷物を積んで、出発するまで、マネージャーが見届けてくれる。この快適さは、一度味わうとくせになる。しかし、これだけの実力を持って、それを実践しているホテルは非常に少ない。その意味でも、このホテルのクラブフロアは非常に秀逸だ。

「スパイシーJ」

先月までの「スタミナ料理フェア」が、10月から「コリアンフードフェア」に変わり、いつも通りリーズナブルな価格だったので出掛けてみた。この日は、中国料理「かりゅう」がウエディングで貸し切りだったこともあり、「スパイシーJ」の店内は、かなり混み合っていた。

テーブルに着き周りを見回してみると、「かりゅう」の器で「かりゅう」の料理を食べている人たちがたくさんいる。様子から察するに、ウエディングでクローズしている「かりゅう」のダイニングの代わりとして、「スパイシーJ」を利用しているようだった。料理はさすがに「かりゅう」の厨房から出てくるのだろうが、「スパイシーJ」と「かりゅう」では内装や雰囲気に大きな差がある。「かりゅう」の料理は「かりゅう」のダイニングで食べてこその値段であって、この安手な店で味わうのでは損をした気分になりそうだ。

コリアンフードフェアのメニューには、ざっと10種ほどの料理が並び、それぞれ単品だと1,200円、前菜とデザートの付いたセットにすると1,800円なのは、いつもと同じ料金設定だ。今回は「石焼きビビンバ」を注文してみた。石の器を焼いた中に、ビビンバが入って運ばれてきて、目の前でジュージューいわせながら、従業員がまぜまぜしてくれる。別添えの辛味噌で味を調整して食べるのだが、想像よりも淡白な味付けで、辛さも控えめに感じた。量的にもやや物足りなさがあった。

また、この日は無理な営業がたたってか、あちらこちらのテーブルで料理の提供が滞っていた。我々のテーブルのひとりが食べ終わるまでもうひとりの料理が出てこないなど、ずいぶんと待たされた。サービスは人によりあたりはずれがあった。会計をテーブルで頼んだところ、伝票を持ってキャッシャーに行くように言われたため席を立ったのだが、すぐに「お会計はテーブルで承ります」と席に引き戻された。ハッキリしてほしい。安くても、お粗末なサービスでは「哀」。

「ピア21」

ホテルの建物とは別に、シーバスなどの乗り場になっている「ぷかり桟橋」に「ピア21」というホテル直営のユニークなフローティングレストランがある。以前はチーズフォンデュをウリとする気軽な洋風レストランだったが、この度コンセプトを新たに生まれ変わった。とはいっても、以前の営業形態の時には利用したことがなかったので、何が新しくなったのかは比較ができない。

新鮮なシーフードをベースにシェフがジャンルを越えた自由な発想でメニューを組み、ベイブリッジや桟橋に発着する船の往来を眺めながらの箸で楽しめるビストロ料理を提案しているそうだ。夜は4,000円と6,000円のコースがあるが、アラカルトは700円から用意されていて、ランチタイムには「スパイシーJ」同様1,800円のランチセットが中心になっている他、とんこつラーメン750円、ヨコハマビーフカレー1,000円などの軽食も揃えるなど、気軽に利用できる価格設定だ。

店のエントランスは船の切符売場と一緒にあり、ぱっと見た感じではまさかホテル直営のレストランには見えない。せいぜい高速道路サービスエリアのレストラン程度に感じさせるエントランスだ。階段を上がっていくと扉があって、その向こうで黒服が待ち構えている。突っ立って待っているのなら、空いた手で扉を開いてくれればもっと印象が良くなるのだが、そこまでは気が利かない。

自分で重い扉を押し開いて入ると、カウンターの席を勧められた。なるほど、大きなガラス窓に向かって座ると、船着き場やベイブリッジが良く見える。また海に浮かんでいる構造物なので、波がたつとふわりと揺れるのがおもしろい。

ランチセット1,800円は前菜とスープ、メインディッシュ5種からのチョイス、デザート、コーヒーが付き、今回は「フランス料理シェフが作るまぐろづけ丼」をメインに選んだ。いわゆる洋風丼でご飯の上にマグロのマリネが並び、ねぎと海苔を掛けて、アボカドのサラダをトッピングしてあるという品物。これが結構いける味だった。この景色とアトラクション的な面白さで、この味と価格なら満足だ。

Y.K.