1999.08.19
ごちそうさまランチ
「ゆとりの空間」都立大学
楽-1都立大学の駅付近には、結構穴場的な店が多くあるという話しをよく耳にする。大学が移転してから住宅がメインのこの街にはあまり縁がなかったが、個人レッスンのために月に何度か来ることになったので、少しずつ開拓してみたいと思う。
この日は道が空いていたために、約束の時間よりかなり早く到着してしまったので、近くでお茶でも飲みながら待つことにしようと車を駐めてから駅前通りを歩いてみた。うわさ通り、午後のひとときを過ごすのに良さそうな店がたくさんあって、午後3時30分という半端な時間にもかかわらず、どの店もそれなりに賑わいを見せている。
どの店に入ろうかと悩んでいると、ひとつの看板が目に飛び込んで来た。そこには「ごちそうさまランチ1,900円」と書かれており、その日の献立がチョークで書き込まれていた。店は2階にあるようで、見上げてみるとお客の姿も見える。こんな時間でもランチがあるのかな?と思いながら、店の案内に目をやると、営業時間は11:00〜18:30となっており、ディナーの営業はしていない。
その営業形態に興味をそそられ、お昼も食べていなかったこともあって、この店の階段を上がることにした。店を入ると、主にキッチン用品を扱ったショップがあり、その奥が50席を擁するレストランになっている。オープンキッチンになっており、全体に一体感がある開放的な造りだ。真っ白い天井と黒い格子の窓枠が印象的。テーブルには厚手のテーブルクロスが掛かり、ナチュラルカラーのランチョンマットとナプキンが置かれている。
従業員は軽装にエプロンというスタイルだが、礼儀正しくお客の要望によく耳を傾けている。階下の看板には「ごちそうさまランチ」の案内しかなかったが、メニューを見ると幾種類かの定食、サンドイッチの他、オリジナリティー溢れるデザートなどがあり、もちろん喫茶だけでも気軽に利用できるようだ。
今回は「ごちそうさまランチ」を注文してみた。個性的なカタチの皿にハンバーグや白身魚のフライなど5種類の惣菜が並び、その他におかわり自由なご飯とゴマダレを隠し味にした味噌汁としば漬け、そして最後にデザートとコーヒーが付く。味はどれも素朴というか家庭的で、友人宅で奥様の手料理をいただいている気分だった。デザートはゴマ風味のゼリーだったが、ゼリーというよりはプリンとかパンナコッタのような食感だ。なにからなにまで個性的なこの店、江ノ島近くの片瀬山にもあるらしい。
1999.08.19
フレンチ薬膳
「レ・サンス」たまプラーザ
楽-3東急田園都市線たまプラーザ駅、またはあざみ野駅どちらからでも徒歩でゆける距離の美しい並木道に面して建つビルの2階に、チャーミングなレストランがある。その名は「レ・サンス」。フランス語でセンスを意味する言葉だが、オーナーシェフである渡辺健善氏が修行をした仏モンペリエにあるミシュラン三ッ星レストラン「ジャルダン・デ・サンス」にも由来する。
「レ・サンス」はちょうど神戸北野町の異人館近くにでもあれば、周囲と見事な調和を見せると思われる瀟洒な建物にあり、街路樹を望むテラス席も付帯する。店内には30席弱の客席があり、比較的ゆったりとした配置だ。明るい照明、ラタンを用いた椅子、パステルカラーのテーブルクロスと、南仏のリゾート地のようなイメージでまとめられたインテリアは、これから始まる楽しい食事への期待感を高めてくれる。位置皿は仏クリストフル社製、カトラリーは伊サンボネ社製、ナプキンは小ぶりだが、濃紺というカラーが卓上を引き締めている。
メニューには3種類のディナーコースがあり、プリフィックススタイルの「レ・サンスコース」5,000円、料理を抑えてデザートを充実させた「デザートコース」3,800円、カラダによいとされる素材を季節に応じて調理した薬膳の「ファーマシーコース」6,500円があり、その他にアラカルト、予約制で12,000円のシェフコースがある。ちなみにランチは2,000円からあり、ティータイム利用も可能だ。
今回は「ファーマシーコース」にトライしてみた。アミューズに続いて、15種類の旬野菜と三島落合ハーブ園直送のハーブを使用したサラダが運ばれて来た。野菜の下茹で加減が程よく、野菜らしい歯ごたえを残している。スープにはあずきをベースにしたカプチーノ仕立てのスープ、魚料理はスープにアサリのだしを使った金目鯛、口直しはサンザシのグラニテ、肉料理には仔牛の脛肉を煮込み、ゴマ団子風に丸く仕上げた一品。デザートは2品で、最初にさまざまなフルーツをスープ仕立てにしたもの、そして、マスカルポーネチーズのムースを薄くスライスしたパイナップルでサンドしたものが続いた。締めくくりのお茶には、フレッシュなハーブティが用意されている。
料理は温度もよく、盛り付けは十分に吟味され、また斬新な楽しいアイデアが盛り込まれ、店名の通りセンスを感じさせる。ワインの品揃えは、手頃なものを中心に充実しているが、ややヴィンテージが若いものに偏っているのが残念だ。シェフは積極的に客席に出て、お客さんたちと会話を弾ませ、喜んでもらおうと一生懸命だ。今回ぼくらはシェフとお話するチャンスがなかったが、ひとたび会話が弾めば、いろいろなエピソードを聞かせてくれそうなお人柄であることが、料理を通じてひしひしと伝わって来た。通いたくなる店だ。
1999.09.02
アップルパイ
「アメリカン・クラブハウス」都立大学
喜-1「ゆとりの空間」のちょうどとなりに位置する「アメリカン・クラブハウス」は、その店名から想像されるイメージとは少々異なった雰囲気を持つレストランだ。スペアリブやホウレン草サラダがスペシャリテになっており、イタリアントラットリアのような雰囲気と品揃えを拡大して、よりバラエティ豊かなメニューで食事ができる店だ。立地的にはそれほど恵まれているわけでもないのに、毎日盛況だというからますます気になる。
この日は、アポイントの時間まであと30分あったので、ティータイム利用をしてみた。ティータイムには飲みもの類の他には、ケーキとアップルパイのみの提供となっている。ケーキセットは750円、アップルパイセットは1,000円だ。ケーキセットを注文したところ、今日はケーキが売り切れだというので、アップルパイにしてみた。
注文を受けてからひとつずつ丁寧に焼き上げるとのことで、15分くらいは掛かるかなと想像していたのだが、実際には30分近く必要だった。こちらに十分な時間があれば良かったが、約束の時間が迫っていたのでヒヤヒヤした。出て来たアップルパイは、焼き立てでサイズ的にもボリュームがあり、添えられたアイスクリームもけっこうな量だ。生地はサクサク、中味のりんごも煮過ぎることなく歯ざわりがよかった。口にする前はこの場所で1,000円は高いかなと思ったが、食べて納得。店のスタッフは全員男性で、年齢の高いひとが仕切っているようで、落ち着いた中にも親しみのこもったサービスだった。次の機会にはぜひ食事時に訪れたい。
Y.K.