1999.06.27
ポストカード
「ロビーラウンジ」ホテルグランパシフィックメリディアン
喜-1

「パリ21区」をテーマに、フレンチのエスプリを漂わせたこのホテルは、この6月で開業一周年を迎えたが、残念ながらこの日まで一度も訪れる機会に恵まれなかった。近いうちに宿泊してみたいとは思っているが、せっかく近くまで来たので、とりあえず様子をのぞいてみることにした。

駐車場からエレベータでロビーに行くと、チェックアウトの手続きを待つ長蛇の列にびっくりさせられた。ホテルのフロント前にこれほど人が並んでいるのは見たことがない。フロントの係りも総勢でサービスに当たっているのだろうが、追いついていないようだった。週明けはみなぎりぎりまで滞在するから、チェックアウトが集中するのはよくわかるが、他になにかいい手だてはないものだろうか。

館内は安っぽいというウワサを多く耳にしていたのでもっとチャチかと思ったが、安手なりにも高級そうに見せることに成功しているといった感じで印象は悪くなかった。どことなくディズニーランドのシンデレラ城の内部を思わせる雰囲気がある。

ホテルのインテリアデザインは売れっ子ハーシュ/ベドナー・アソシエイツ・デザインコンサルタンツが大方手掛けているが、少なくともロビーラウンジとコーヒーハウスは観光企画設計社のデザインだ。ラウンジ内は天井が高く窓からの採光も十分なので、日中は明るい雰囲気がある。シャンデリアがアクセントになっており、ゴージャスな感じを演出している。

座席はゆったりとしており、店内まではロビーの喧燥も届かないのでとても落ち着ける。サービスは恐る恐るという感じで暗いが、サービス精神が欠けているわけではないようだ。こちらがにこやかに接していると、次第に表情が緩んで、本来の人間的な温かさが見えてくる。何がこうまで彼女らを固くしているのかわからないが、せっかくよいものを持っていながら発揮できないのはもったいないと思った。

現在、開業一周年記念の特別メニュー「オードリーヘップバーン レストランフェア」を開催しており、ここ「ロビーラウンジ」では、ローマの休日をイメージした「プリンセス・アン」デザートセットが1,500円で楽しめる。チョコレートのムースに2種のジェラートにフルーツの飾りがあしらわれた一皿と、コーヒー又は紅茶のセットに、ホテルオリジナルデザインのオードリーヘップバーン絵葉書きが一枚もらえる。なかなかよいデザインの絵葉書きだ。

1999.07.16
パリ祭特別コース
「エピス」ホテルグランパシフィックメリディアン
喜-2

日航東京の「テラスオンザベイ」同様、お台場にあるホテルのフレンチなんて、たいしたことはないだろうと侮ってはいけない。ここホテルグランパシフィックメリディアンのフレンチレストラン「エピス」では、ホテルならではのゆとりある空間で、充実した料理を楽しむことができる。

ハーシュ/ベドナー・アソシエイツ・デザインコンサルタンツらしい洗練されたインテリアは、オークやウォールナットの濃い色調と明るい色の石とのコントラストがよく表現されている。店内には大き目の椅子とテーブルが広い間隔をおいて配置されているので、隣席のおしゃべりに気を取られることもないだろう。店内中央は絨毯敷きだが、窓際には外光が差し込む石の床のままになっているコーナーがあり、ランチタイムならそちらの方が雰囲気がいいかもしれない。

この日のランチタイムの客は2組だけで、その内の1組が我々だった。週末は相当の混雑を呈するそうだが、平日は打って変わって静かなので、ゆったりとした時間を過ごすことができるものの、店にとっては気の毒にも思えた。

タリフではランチのコースは5,000円からとなっていたが、7月13日から18日までの期間は「パリ祭特別メニュー」を提供しており、昼のコースは5,000円のみ、その他にアラカルトが用意されている。一皿ごとは非常に控えめなポーションで、見た目を重視した盛り付けと共に女性向きのイメージが強かった。

また、店の名前が「エピス」なので、もう少し強い味をイメージしていたが、日本人の味覚に合わせているのか、塩加減やスパイスなどはやや控えめで、パンチがない代わりに上品な味付けだった。サービスは概ね快適だった。途中から貸し切り状態になってしまったので、この環境でサービスに不足があるようでは救いがたいが、コーヒーを出してしまうと客席に対する注意が薄くなってしまうのは残念だった。

また、グラスを拭き上げる際に付着したと思われる、細かい繊維が非常に気になったばかりでなく、そのグラスも生臭いにおいがしていた。せっかくの繊細なワインの香りを曇らせるだけでなく、無臭のはずの水がとても不快なにおいを放っていたのには閉口した。

デザートは2皿。小菓子も付くので皿数は多かった。このコースを注文すると、もれなく宿泊優待券がもらえる。これが一番嬉しかった。なお、ワインは飲み頃のものが少ないが、グランヴァン以外、比較的抑えられた価格だと感じた。ドンペリニヨンは15,000円、クリスタルは20,000円だ。グラスワインの品揃えも豊富だった。

鮪とアボカドのタルタル

夏の果実の冷たいスープ

白身魚のビネガー風味 シェリーソース

仔羊肉の網焼き 野菜のピューレと共に

菓子職人からの贈り物

コーヒーと小さな焼き菓子

1999.07.31
手がベトベト
「アルコバレーノ」ホテルグランパシフィックメリディアン
楽-1

イタリアンレストラン「アルコバレーノ」は、メイン棟でなく「ゆりかもめ」の駅に近いアトリウムに位置しており、同じホテル内にある他のレストランとはまったく趣きを異にし、外来客の利用を見込んでいるようだ。価格も比較的手頃で、コーヒーショップのランチが2,500円であるのに対し、このイタリアンレストランでは2,300円から用意している。

この日は、アトリウム内で行われるコンサートを鑑賞するために出掛けたのだが、車の渋滞で到着が遅くなり、開演までの1時間弱で済ませられるレストランを利用しなければならなかったため、会場からも一番近く、待ち行列が少ないこの店を選んだ。本当は、フレンチレストランに行きたかったのだが・・・

120席近くを擁する店内は、片側をガラス張りにし陽光がたっぷりと入るように設計され、反対側にカマドもあるオープンキッチンを据えた開放的なデザインだ。キッチンカウンターの上部には風景画が一面に描かれており、天井からはシンプルな照明器具とカラフルな旗が下がっているが、この旗は埃塗れなので洗濯が必要だ。

雰囲気的にはホテルレストランというよりも、規模の大きな街中のレストランの趣きで、気軽に利用しやすいイメージがある。テーブルにはクロスを掛けず、ランチョンマットを使用しており、布のナプキンが唯一ホテルレストランらしさを主張している。サービスもフランクだが素人臭く、よくできたファミリーレストランという感じ。

今回は十分な時間がなかったので2,300円のパスタのセットを注文した。この日のパスタはカニ肉の入ったクリームソースのリングイネ。このほかにアンティパストの盛り合わせ、レタスだけのシンプルなサラダ、ワンディッシュデザートブッフェ、コーヒーが付く。

アンティパストには、大嫌いなモツが含まれており残してしまった。デザートブッフェのカウンターには、数種のケーキとジェラートが並んでいるが、味はよくない。ジェラートは冷凍庫に保存されているが、ディッシャーも一緒に中に入ったままなので不衛生である上に、触わるたびに手がベトベトになってしまうのが難点だ。

また、半ズボンにサンダルといった服装の客が多かったが、いくらカジュアルなレストランだからといっても、ここまでくだけた服装は、ホテルではご遠慮願いたいものだ。見苦しい。

1999.12.16
手抜き清掃御三家
ホテルグランパシフィックメリディアン Deluxe Suite
哀-4

一足先にオープンした日航東京の裏手から睨みを利かせるようにそびえるこのホテルも、ようやく開業から1年半が経ったが、成熟するにはまだまだ時間を要しそうだ。都内最大級の大宴会場を持つことから、企業の展示会需要が好調のようだが、宿泊客は日航東京同様、週末のレジャー客にそのほとんどを依存している関係で、特に平日の稼動が深刻らしい。

ホテルとしては、羽田空港や都心からのアクセスが便利な点を強調しているものの、のんびり走るゆりかもめや本数の少ない空港リムジンなどを武器にするのでは、ビジネスマンたちに対する訴求力として不足だと思う。また、ビジネスマンを迎えるだけのサービス体制がまったく整っていないので、ビジネスサポート設備の充実や有能なコンセルジェの配置など、安心して利用してもらえるだけの準備が必要だ。

従業員の年齢層が非常に若いのは構わないが、渋谷の路上でたむろしていた若者をそのまま連れてきて制服だけ着せたかのような洗練度の低い日本語や、野生児のような身のこなしを見聞きする限りでは、彼らにコピー1枚任せる気にもなれない。

かろうじて、特別階「クラブプレジデント」のアテンダントたちは、特別な用向きにも耳を傾けるだけの余裕があったが、平日のクラブラウンジにはゲストの姿もなく、対岸のインターコンチネンタルと比較すると、活気もレベルも段違いで勝負にならない。

更に落胆したのは、客室の清掃状況だった。前日が満室であったわけでもないのに、清掃は手抜きだらけだったことだ。ソファには食べかけのチョコレートスナックが、床には雑誌が落ちており、テーブルというテーブルすべてに、ワインなどがこぼれて乾燥した形跡があり、ベトついていた。バスルームのタオルを使って自分で拭き上げたところ、真っ黒になってしまった。

これはもう、カラオケボックス並の清掃状況だ。使い込むことで年月と共に増してゆくキズなどなら、むしろ風格や味わいにつながる場合もあるが、落とそうと思えばいとも簡単に落とせる汚れを放置するとあっては、ハウスキーパーの風上にも置けない。また、これは外の窓なので仕方がないかもしれないが、鳥の排泄物が付着しており、せっかく東京を一望する景観も、排泄物越しという惨状。

清掃がいい加減なために、本来なら快適で上質な客室であるはずのものを台無しにしているホテルの代表格は、このグランパシフィックと、ホテル日航東京、第一ホテル東京だ。これらが東京手抜き清掃御三家であり、横浜のパンパシフィックを加えれば、関東の手抜き清掃四天王。どのホテルがこの汚名をいち早く返上するかが楽しみだ。

今回利用した客室はデラックススイート84平米、ラックレート10万円。エントランスを入ると前室があり、クローゼットとゲスト用トイレが設けられている。天井高2メートル75センチのリビングルームには、ソファセットとライティングデスク、アーモア、ミニバーがあるのみで、ゆとりある空間配置になっている。天井から下がるシャンデリアが華やかだ。

ベッドルームとはフレンチドアで仕切られているが、格子のガラス張りでレースもかかっていないため、リビングからベッドルームが丸見えになる。ベッドルームには真っ赤なベッドスプレッドが掛けられた120センチ幅のベッドが2台並び、窓際にはアームチェアとカウチベッドが置かれている。ベッドルームの奥には、引き戸で仕切れるドレッシングルームがあって、その更に奥がクローゼット、左がバスルームになっている。

バスルームの扉もフレンチドアなのだが、片側にしかストッパーがついていないので不便である上に、扉が重いため、閉まるたびにガタンと大きな音と振動が生じる。バスルーム内は幾種類かの大理石を巧みに使った豪華な造りで、鏡や蛇口などのデザインもしゃれている。各所の照明が可変式なのも効果的だ。ルームサービスは午前6時から正午までの朝食と、午後5時から午前1時までの夕食・夜食のみの営業。

家具の中はミニバー ライティングデスクとアーモア

窓際のカウチソファがアクセント 正面がクローゼット、左がバスルーム

フレンチドアを開けるとバスルーム ベイシンはシングル

Y.K.