1997.07.28
浴衣にスリッパ
第一ホテル光が丘 Suite
喜-3練馬区初の本格的コミュニティプラザ型ホテルとして94年4月にオープンした第一ホテル光が丘は、幹線道路に面しており車でのアクセスには便利だが、最寄りの駅からは遠いためコミュニティホテルの立地として恵まれているとは思えない。91室という控えめな客室数に対して、充実した宴会場施設を付帯しており、隣接したオフィスビルがらみの宴会や披露宴需要をねらっていることがうかがえる。
パブリックスペースは大理石を多用した明るいイメージでまとまっており、ロビー周りには小さいながら噴水とせせらぎがあって華やかな雰囲気だ。正面玄関を入ってすぐにカフェレストランとバーがあり、左手にフロント、その奥には中国料理レストランと日本料理レストランがある。地階には宴会場施設が集中しており、2階以上が客室だ。
客室は主にツインが庭園側に、シングルが道路側に配置されているが、デラックスツインとスイートはなぜか道路側に位置しており、それなりの騒音を覚悟しなければならない。一方の庭園側もさして眺めが期待できるわけではないが、道路の騒音だけは避けられる。ツインは30平米程度が中心で、シングルは20平米程度の広さを確保している。
ツインにはスタンダード、エグゼクティブ、デラックスの3タイプがあるが、スタンダードとエグゼクティブは内装の差だけで広さは同じだそうだ。デラックスはエグゼクティブよりもひと回り広い造りになっている。今回利用したスイートは6階の中央部分に位置し、シングルルームの5室分を当てた100平米程の客室だ。
天井は比較的高く、全体的にオフホワイト系でまとまっているが、濃い色調の家具がアクセントになっている。この家具類はすべて手作り風で、合板を使わずに造られており重厚な感じだ。室内はリビングルームとベッドルームから構成されており、両開きのエントランスを入ると大理石敷きの前室があって、ゲスト用クローゼットと化粧室がある。
その奥のリビングルームには6名用のダイニングセットと同じく6人分のソファがゆったりと置かれているが、ソファの部分にはテーブルがなく、やや殺風景な感じがした。ダイニングセットの脇にはバーコーナーがあるが、食器やグラス類は一切置かれていないので、空っぽの棚がこれまた殺風景だった。まるで引越しで荷物を運び出した後のキッチンのようだ。リビングの照明は可変調光型でシャンデリアやダウンライトがそれぞれ調光できるのが便利だ。
ベッドルームには185センチ幅のキングサイズベッドが置かれ、その他にオットマン付きの肱掛椅子とライティングデスク、アーモアがある。このライティングデスクがとてもステキで、自宅にも欲しいくらいだった。こうした立派な調度品に対して、プラスチック製のゴミ箱や、落書きが目立つメモ用紙ホルダーやディレクトリーなど、せっかくの雰囲気を損ねるものがあった。
また、ベッドカバーを外すと、毛布の表面がむき出しの状態になっている。スイートくらい羽毛布団にするとか、せめてトップにもシーツを当ててくれればいいのにと思った。室内には3台のコードレスホンの他に、バスルーム内に発信可能な電話機を備えている。
寝室の裏側にバスルームがあって、それほど広くはないながらも、非常にゴージャスな大理石を多用し、重厚な雰囲気さえ感じられる空間だ。床と壁とで違う種類の大理石を使用し、特に壁面の石は模様を合わせてあるほどの気の入れようだ。ご丁寧にベイシンの下や奥まで石が張ってある。バスタブは床よりも深くなっており、見た目よりもゆったりとしていて、肩まで十分に浸かれる大きさがある。ジェットバスになってはいるが、どうやら調子が悪いようで泡の勢いに元気がなかった。
一般客室とは違ってスイートのトイレは洗浄機能がなく残念。ベイシンはダブルで使いやすいが、水の勢いが強すぎて飛び散りやすかった。アメニティ類は非常にオーソドックスで他の客室と共通のものだと思われる。石鹸はエメロン植物物語15グラム、シャンプーとリンスはライオンのプレーンアンドリッチ30ミリリットル。ユニークに感じたのは、ナイロン製のボディタオルが用意されていることだ。
奥にはスチームサウナを兼ねた広いシャワーブースがあって、ブース内もゴージャスな石張りだ。ところが、このスチームサウナは、十分な蒸気を発するものの、腰掛けがちょうど吹き出し口の上に設置されているので、熱くて座ることができない。かといって、立ったままサウナに入るのではリラックスできない。せっかくのスチームサウナだがこの状態では有効に利用できなかった。また、ベイシンとは対照的にシャワーの水圧が低くて物足りなかった。
サービス面は比較的好感度が高く、細かな要望に対してもきちんと耳を傾け、善処してくれた。ルームサービスは一切なく、ランドリーサービスも午前9時までの預かり分が、翌日正午の仕上がりと、最短でも27時間を要するなど、ホテルとしての機能には不足が感じられる。宿泊客は、隣接したフィットネスクラブを無料で利用できるが、タオルなどのレンタルは有料となるそうだ。客層はほとんどが男性で、ビジネスマン中心といいたいところだが、夜になると浴衣スリッパでロビーに降りてきてしまうような人達なので、そうは呼べない。それなりにこぎれいなホテルなのに、お気の毒。
1999.07.29
ニンニクパンチ
クッチーナ「オリーブ」野方
楽-1オペラ公演の合間に、会場近くの商店街にある小さなイタリア料理店に出掛けた。入店した時はちょうどランチタイムのピークだったようで、最後の空席に陣取ることができた。午前中の公演を終えたばかりだったので、店内には観客だった人たちの姿もあった。
ランチタイムはパスタが中心で、5種のバラエティがあり、どれも950円。若鶏のソテーは980円で、その他にコース仕立てのメニューも用意されている。これらのメニューには、サラダ、パン、コーヒーが付いている。厨房2人とサービス担当1人の計3人での営業はちょっときつそうだった。料理提供のタイミングまで気が回らないのか、はたまた最初からタイミングなど考えていないのか、てんでバラバラに料理がやってくる。
肝心のパスタは温度もいいし、茹で加減もよい。今回はシンプルにぺペロンチーノを注文してみたが、ニンニクと唐辛子のパンチは強烈に効いているが、塩加減が物足りなかった。程なくして店内は落ち着きを取り戻したが、混雑がもう少し持続した方が、店にとってはよいように感じた。気の利いた店が少ないこの界隈では貴重な存在かもしれない。
1999.07.30
軌道修正
「シンポジオン」鉢山町
喜-3オペラがはねて帰宅する途中、代官山に寄り道をして夕食をとった。夜9時を回ってからの食事といえば、ここ「シンポジオン」が真っ先に思い浮かぶ。しかし、以前は午前3時までオーダーができたが、今では午前1時までになってしまった。深夜の需要は思いのほか少なかったということだろうか。
また、15パーセントという強気のサービス料設定が、一般的な10パーセントに改定され、アラカルトのみだったメニューにコースが新設されるなど、奇をてらった独自の路線から一般に受け入れられやすい方向へと歩み寄ってきていることが感じられる。
サービスのタッチにしても、気取った感じから親しみのこもった人間的なものに変化してきており、レストランとして非常にいいバランスを保てるようになった。オープンから1年少々で、よくここまで成熟したものだと改めて感心した。
新設されたコースは5,000円と手頃。その価格から想像する味わいをはるかに凌駕する素晴らしい料理が提供される。デコラティブなインテリアに、厚手のテーブルクロスやしっかりとした刺繍入りのナプキン、そしてゴールドで縁取った華やかな食器で味わう料理と空間は、都会的でありながらどこかオーセンティックだ。この状態ならば、人に強く勧めることができる。
Y.K.