1999.07.19
GMからのメッセージ
横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ Towers Room
楽-2

窓からは横浜港とベイブリッジを一望

横浜ベイシェラトンホテル&タワーズは、横浜駅に直結した便利さと、高層階から望む横浜港の景観が同時に得られる好立地に、98年9月にオープンした横浜では最新のホテルだ。横浜のホテルといえばみなとみらいの3軒ばかりに注目が集まり、ニューグランドやシェラトンは蚊帳の外という感がなきにしもあらずだ。

駅に近いからか、みなとみらいのホテル群に比べるとビジネスマンや年齢層が高い客の割合が高く、ロビーなどはインテリアを含めて一昔前のオーセンティックなシティホテルの雰囲気だ。しかしスーツ姿の客に混じって、たまに半ズボンやサンダルの男性も見かける。従業員はどこのセクションを見ても、若い人がほとんどなので、フレッシュな印象はあるが風格や安心感のようなものはまったく伝わってこない。

今回の到着時もエントランスにドアマンの姿がなかったので、中まで入ってベルデスクに荷物の運搬を手伝ってくれるよう頼もうとしたが、ひとりしかいない女性スタッフは電話中。その電話が終わるのを待って申し出たところ、「ドアマンがお手伝いしますので」と断られてしまった。

そういわれてエントランスを振り返るとドアマンが入口に戻って来ていたので、ベルデスクでいわれた通りにドアマンに手伝ってもらうことになった。この日はタワーズの客室を予約していたので、チェックインは26階のラウンジで行われた。26階のエレベータを降りるとすぐにラウンジの入口があり、入ったところがレセプションデスクになっている。その奥が飲み物や朝食をサービスするラウンジだが、レセプションを含め3室分を当てた割には狭かった。

チェックインを担当した男性スタッフもまた若かったが、丁重だった。到着したのが13時50分だったが、「まだ、お部屋の準備が調っておりませんので」とラウンジ待つこと10分、14時になったとたんに「お部屋のご用意ができました」と案内してくれた。客室はつい先ほどまで清掃に追われていたという感じはまったく残っていなかったので、つまりこのホテルではチェックインタイムの14時になるまで客室には通してもらえないのだと解釈した。

タワーズフロアのエレベータホールと廊下は、一般階に比べひときわ天井が高くゴージャスに造られている。客室の天井高は一番高い部分で3メートルあり、一般階に比べると圧倒的な高さだ。室内のインテリアはベージュ系で統一されているが、全体が同系色でまとまり過ぎてアクセントに欠ける印象がある。

比較的大きな窓からは正面にベイブリッジが望め、とてもヨコハマらしい景観だ。窓枠にでも腰掛けて外を眺めていたい雰囲気だが、その窓枠はチープな造りだった。ベッドは120センチ幅で、羽毛布団と柔らかなシーツが心地よい。ドレープカーテンが電動式なので、ベッドにいながらにして開閉ができ便利だ。ライティングデスクは奥行きがあまりないものの、幅がワイドで電話機とファックスがのってもまだ十分に余裕がある。アーモアは扉がなく、テレビの前面がむき出しになることが少々気になった。

ビデオオンデマンドなどを含め、チャンネルが充実しており、音声はバスルームでも聞くことができる。ユニークなのはテレビ画面を使ったアンケートで、画面の指示に従って幾つかの質問に答えて送信すると、チェックアウト時に粗品がもらえるという。バスルームは床とベイシンの天板のみが石張りで、壁はタイルを使用している。シャワーブースと洗浄機能つきトイレを備え、バスタブにはシャワーカーテンの他、横浜名物バスピローもある。

照明は可変式でこそないが、蛍光燈とそれ以外のスイッチが別になっているので、明るさのバリエーションでコントロールが可能だ。アメニティは標準的な品揃えだが、石鹸の品質はいまひとつだった。タオルは各サイズ4枚ずつ用意してありバスローブもある。部屋全体に、あまりお金を掛けていないという雰囲気が漂っているが、特にバスルームの扉はチープだ。

一応ルームサービスもあるのだが、営業時間が6:00から10:00の朝食と22:00から翌朝6:00までの夜食だけとかなり限定されており、10:00から22:00までの昼食や夕食の時間帯には営業していないという珍しいスタイルだ。部屋で午後のコーヒーを楽しむこともできない。館内のスポーツクラブは、宿泊客ならば2,000円で利用できる。

ホテルディレクトリーの最初のページに総支配人からのメッセージがあるが、その中でいきなり、連泊の際はタオルやシーツを引き続き使って欲しいというようなことを述べている。これを読んで、冒頭の挨拶に相応しい内容だとは思えなかった。

タワーズラウンジでのコーヒーや紅茶のサービスは、リチャードジノリの器で提供され、それはなかなかいい感じだったが朝食はとても質素だった。数種のパンとコーヒー・紅茶しか並んでいない。一応ジュース、ヨーグルトという札が立っているのだが、肝心なそのものは陳列されていなかった。もう食べ終わろうかという頃になってからオシボリを持ってきて、「よろしければジュースやヨーグルトなどもご用意できますが」と薦めてくれたが、タイミングとしては遅すぎると思う。パンの味は結構よかったが、知る限りもっとも質素な朝食サービスだ。

チェックアウトの際、タワーズのスタッフにバゲージダウンを依頼したところ、ひとりがわざわざ1階に降りてカートを取って来た。タワーズラウンジ内にも、1台くらいカートを常備した方が効率がいいように思う。

壁側の家具類 120センチ幅のベッド

ベイシンと、鏡に映ったシャワーブース アメニティグッズ

中国料理「彩龍」

午後2時30分を回り、昼食の時間には遅くなってしまったので、中国料理レストランの飲茶タイムを利用することにした。店の入口にはメニューが掲示してあり、この時間帯は1,000円から2,500円までの3種のセットの他、一皿600円程度のものが中心になった飲茶メニューが用意されている。1,000円のセットはデザートのみで、1,500円のセットだと飲茶メニューの中の指定された品物から選択するスタイルとなり、2,500円のセットは、あらかじめ決められた料理が提供される。

コンテンポラリーな雰囲気の店内はとても広く166の客席があるが、入口に近い方から奥に進むにしたがって大人数用のテーブルとなり、内装も次第に華やかさを増してゆく。手前のコーナーはシンプルな設えで、ベンチシートには2人用のテーブルが並び、やや窮屈な印象だった。テーブルには白いクロスが掛かっているが、その上に紙のランチョンマットが敷かれており、なんとなく違和感があった。

入口のメニューであらかじめ検討したとおり2,500円のセットを注文し、さら菊の花の入ったプーアル茶300円を注文した。ウーロン茶とジャスミン茶は無料だが、その他に有料で数種類の中国茶が用意されている。いずれも1ポットの価格が書かれているが、1ポットあれば何人ででも楽しめるし、空になると差し湯を持ってきてくれる。

平日の昼下がりにしては比較的賑わっていることもあってか、飲茶といえばテンポよくポンポン出てくるというイメージに反して、料理が出てくるまでにやや時間を要した。しかしそれぞれの料理はとても熱くおいしく、値段を考えれば満足のいくものだった。デザートはアーモンドゼリー、マンゴープリン、タピオカココナッツミルクという定番から選択することができるが、いずれにも大粒のさくらんぼが添えられていて、それがよいアクセントになっていた。サービスは若い従業員がほとんどだが、十分な人数が揃っているので不足はなかった。

1999.08.22
足音
横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ Towers Deluxe Room
楽-3

ベッドはタワーズツインと同じ

今回はタワーズフロアにあるデラックスルームを利用した。このホテルのデラックスルームには、ベイビューのコーナーに位置する2面の窓を持つタイプと、シティビューのやや横幅が広くバスルームとトイレが別になっているタイプの2通りがあり、双方ともに45平米の面積を持つ。この日の客室は街側だった。

タワーズフロアにデラックスルームは3室しかなく、内ベイビューに至っては1室しかない。このデラックスルーム3室が、2室のスイートに次ぐ高級客室ということになる。最高級から数えて3番目のグレードの客室として考えると、残念ながらあまりパッとしない。フォーシーズンズホテル椿山荘東京の最低の客室の方がゴージャスな印象があるだろう。

室内の家具・調度品はタワーズルームと同等で変わり映えしないが、スペースが格段に広くなった分、ゆとりのある配置となり、窓の外に景観を求めなくても窮屈な気分になることはなかった。窓の大きさもベイビューの客室と比較すると高さが削られているが、外の景色はベイビューとくらべものにならないほど退屈なので、大きな窓にこだわる気にはならない。

もし客室料金が同じで、一方は眺め、一方は広さという選択肢ならば、多いに悩んで決めるところだが、デラックスルームは6,000円高いわけだから、節約して眺めを取った方がいいかもしれない。あるいは、空きがあるのならば一室しかないベイビューのデラックスを指定するのも手だ。

この客室でもっとも個性的なのは、バスルームと反対側にもうひとつドレッサーを兼ねたベイシンが設置されていることだ。脇にはバゲージ台、振り向けばクローゼットという位置にあるベイシンには、小さな椅子が用意されている。欲を言えば、ベイシンに石鹸をひとつ置いて欲しい。また、せっかく真後ろにクローゼットの扉があるので、その扉を鏡張りにしたら、ヘアースタイリングをする際などに便利だと思う。バスルームにもバニティミラーは設置されていないので、頭の後ろを見るには苦労する。

バスルームはトイレが別に設けられているため一層スペースにゆとりがあるが、シャワーブースは3方向が壁に囲まれているためか、やや圧迫感を感じる。よほど広い場合は別だが、やはりシャワーブースは2方向以上がガラス張りという方が開放的でいい。

室内の清掃状況は最高レベルで、客室係の接客態度も素晴らしい。その他の従業員たちのサービスも、自然な爽やかさがあって好印象だ。注意したいのは27階の客室にアサインされた場合、すぐ上がスカイラウンジやレストランなので、椅子を引く音や足音などがかなり気になること。タワーズに宿泊する時は可能な限り26階の客室を用意してもらうことをおすすめする。

ゆとりのリビングスペース 窓からの眺め。一応客室の窓はハーフミラー。

ベイシンとシャワーブース。バスタブはベイシンの左側。 クローゼット前のベイシン。このコーナーは結構落ち着く。

「コンパス」

横浜駅西口に連絡するペデストリアンデッキに直結したエントランスを入ってすぐのところに位置するカフェレストラン「コンパス」は、ブッフェを中心としながらロティスリーも備えた、早朝から深夜まで気軽に利用できるレストランだ。こ

の日は横浜駅西口一帯でカーニバルが催されており、そこから流れて来た客も加わって、夕方の早い時間からかなりの賑わいを見せていた。客室から電話を掛けて空席を確認したところ、満席で1時間待ちとのこと。空席ができ次第客室に連絡を入れてくれることになった。

きっかり1時間後に電話が鳴ってレストランへ向かい、アロハシャツ姿の従業員に出迎えられ席についた。いくら夏らしく軽やかな服装だと言っても、シティホテルのレストランではいささかラフ過ぎやしないかという印象を受けた。この衣装はロビーラウンジでも採用されており、むしろそちらの方が違和感があった。従業員がこの格好では、ロビーのソファで缶ジュースを広げる客に注意をしても説得力がないかもしれない。

まぁ、アロハはアイデアとして買えないこともないとしても、今時の若者と変わらないズリ下げたズボンのはきかたまで容認するのはどうかと思った。シートベルトじゃあるまいし、腰骨の低い位置に引っかけられたズボンを引きずるようにしてサービスに当たっている従業員がいる。せっかくにこやかによく気が付くサービスをしているのに、だらしない感じに見えてしまって残念だった。

その彼のみならず、全般的にサービスはいい意味で若々しさが全面に出ており、快適だった。店内はそれなりに大理石や木を使用しているが、蛍光燈と色使いの関係で、かなりチープに見える。なかでも白木風のプリントはかなり安っぽい。アロハの制服といい、まるで海の家そのものだ。もう少し違った演出の仕方があっただろうに。

今回利用した3,000円のディナーブッフェも、想像していたよりも遥かに盛りだくさんの内容で、楽しくあれこれと味わうことができた。味そのものは、ホテルの味というよりはスキー場やペンションの域だが、一通り味わえば一皿300円以下の計算になることを考えると、オトクだと言わざるを得ない。ユニークなのは自分でこしらえるサンドイッチやハロハロ(かき氷のようなデザート)など、楽しいコーナーがある。また、豊富なバラエティのワインが飲み放題になるハッピーアワーというプロモーションを実施中。もちろん、ブッフェ以外にもアラカルトが用意されている。

日本料理「木の花」

「木の花」と書いて「このはな」と読ませるこの店は、ホテルの8階ワンフロアを贅沢に使った日本料理店で、枯山水の庭園を望むテーブル席の他、寿司や天ぷらのカウンター、会席専用の予約制カウンターを設けている。会席専用カウンターでは、おまかせ会席がひとり23,000円から用意されている。

朝食は、ご飯・おかゆともに2,400円で、内容は標準的だ。白飯はおいしく炊けており、椀もうす味ながら上品に仕上がっている。早い時間から多くの客で賑わっていたが、意外だったのは年配や男性よりも、若い女性グループの利用が目立ったことだ。

そもそもこのホテルに宿泊している客層が主に若い女性たち中心なのかもしれないが、かつてホテルの日本料理店では目にしたことのない光景に時代の移り変わりを感じた。サービスは悪いわけではないのだが、すっと馴染んでこない感じがした。気にするほどではないのだが、どこかにクエスチョンマークを感じてしまう。

たとえば、着物の女性従業員の話し方(発音)が最近の女子高生のような妙にレゾナンス値を上げた、媚びたような声でゾッとするし、入口で出迎えをしているマネージャーの笑顔にも、ほほえみというよりは嘲笑にしたニュアンスを感じてしまった。

なお、庭園へは自由に出入りすることができるので、食事の前後にちょっとした気晴らしを楽しむことができる。さらにユニークなことに、ランチタイムとディナータイムの間は、通常クローズになる場合が多いが、この店は商売熱心なのか、喫茶のみの営業時間を設け、連続営業を実施している。

1999.11.23
ボーズ丸儲け
横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ Towers Suite
楽-4

ジェットバスの深さは50センチ

このホテルで2番目のグレードに当たるスイートに宿泊した。このホテルにはスイートがトータルでも2室しかなく、広い客室をたくさんつくって積極的にアピールしようという気はなかったようだ。みなとみらいの3軒と比べると、総客室数に対するスイートの数がかなり少ない。

2室のスイートは16万円と8万5千円という、比較的控えめな価格設定がなされているにもかかわらず、あまり稼動していない様子だ。2つのスイートを比較すると、8万5千円のスイートが79平米あるのに対し、16万円のスイートは112平米と、スタンダードルーム1部屋分広くなるだけなのに、7万5千円の料金差がある。内装的にはそれほど大きな差がないので、どうしても広さが必要な場合を除けば、8万5千円のスイートの方が、コストパフォーマンスに優れているようだ。

いずれのスイートも天井高が3メートル40センチあり、同じ階にある他の客室と比べても40センチ高い。この天井高のお陰で、総面積が実際よりも狭く感じるものの、この圧倒的な開放感はこの客室の居住性を数段アップしてくれている。

エントランスを入ると、モザイク大理石の前室があり、ポプリの乗ったコンソールと小さなクローゼット、ゲスト用のトイレがある。内扉を開けるとリビングルームになっており、ソファセットと4名用ダイニングセット、テレビを収納したアーモアの他、しゃれたミラー、フラワーアレンジメントとスタンドの載ったコンソール、開き戸で仕切られたウエットのバーカウンターが設置されている。

レース、ドレープ共に電動式で、照明は間接照明とペンダントライトが調光式、その他の照明器具も個別にスイッチが設置されているなど、ありがたい設備が導入されている。

リビングの奥にベッドルームがあって、140センチ幅のベッドが2台入り、それぞれオットマン付きだ。窓際には肱掛椅子がふたつ、壁に向かってライティングデスクが置かれ、その横にアーモアがある。ライティングデスクにはファックスが置かれ、猫が真珠の玉とじゃれている飾りの付いたトレーなど、しゃれた小物もささやかながらアクセントになっている。ただ、卓上にせっかく設置されているふたつのコンセントは、ファックスなどに当てられているためすでにふさがっており、持ち込んだ電気機器を接続する余裕がないのは不親切だ。

寝室のカーテンはドレープのみが電動で、照明は間接照明のみが調光式になっている。窓はリビング、寝室とも同サイズで、高さ240センチ幅182センチとかなりの大型だ。

寝室の奥にあるバスルームは、総大理石仕上げで、かなり高級な石を採用している。広いシャワーブースと強力で深いジェットバス、コーラー社製の洗浄機能つきトイレが設置されている他、天井にはボーズのスピーカーが埋め込まれ、高音質のBGMを楽しみながらのバスタイムが過ごせる。

ベイシンはシングルだがバスの外にあり、クローゼットと一体化したドレッシングルームを兼ねた作りになっていて、床は絨毯敷きだ。水周りの蛇口、シャワーヘッドなど、すべてにセンスのよいものを採用しているし、天井高も245センチあるため圧迫感がなく、トータルで非常に快適なバスルームだ。

アメニティはニナリッチブランド、レザーはプラスチックケース入りと、一般客室に比べると頑張っている。リビングとベイシンに飾られた花もうれしい。なかなか快適な客室だが、いまひとつ人気がないようでお気の毒。せっかくバスルームに埋め込んだ丸儲けのおまじないも効き目が薄いようだ。

ホテル全体のサービスについては、特に感動するような素晴らしい出来事に遭遇しないものの、とりわけマイナスポイントになるようなことにもならない。特別な要望に対しては弱そうだが、するべきことに関しては、にこやかに滞りなく実施してくれる。少なくともみなとみらいの3軒のような、どうしたことかと思うほどの一流気取りがないだけでも、好感が持てる。

リビングのシッティングスペース ベッドからライティングデスクを見る

Y.K.