1999.06.24
森のバカンス
フォレスト・イン昭和館 Corner Room
喜-3

イタリアンテイストの室内

昭島駅の北、周囲をゴルフコースと森林に囲まれた緑豊かな環境に98年11月オープンしたリゾートホテル「フォレスト・イン昭和館」に滞在した。99年7月末までは、全客室40パーセント割引で利用することができ、今回は45平米のコーナーツインルームを選んだ。ラックレートで38,000円なので、割引後は22,800円となる。

車で出掛けたが、周囲の案内が不十分なので、場所をよく確認してから出向いたほうがいいだろう。敷地は広く、エントランス前に自由に利用できる駐車場がある。エントランスに従業員の姿はなく、荷物の運搬を手伝って欲しい場合はフロントに申し出る必要があるようだ。フロント係の対応は親切でベルマンの機能も兼ねているらしく、チェックイン手続き後、同じ係が部屋まで案内をしてくれた。

客室はモダンなイタリアン調で、新しいためか清潔感にあふれており、統一感のあるインテリアでまとまっているが、高級な質感は伝わってこない。清掃状況は申し分なかった。入口を入ると狭いながら前室があり、フレンチドアを開けるとベッドルームがある。

もう一方の扉の向こうにはバスルームがあり、外光の入る開放的な設えになっている。室内に石風の素材が多用されているが、バスルーム内の大理石を除いては人造品だ。バスルームは洗い場を設けた広い造りで、桶と椅子も用意されている。

アメニティは皮製のポーチにまとめられており、もちろん持ち帰り可能。中味は、チューブのシャンプー、リンス、バスジェル、ヘアバンド、マルセイユソープ、歯ブラシセット、レザー、コットン、防水袋が入っている。その他にも多彩なアメニティがリクエストベースで用意されており、フロントに連絡することで希望のアイテムを届けてくれる。また、タオルも厚手で上質のものを採用している。ベッドルームにはリビングスペースとライティングデスクが用意されており、機能的にまとまっている。

ベッドはハリウッドスタイルでノズル状の読書灯が設置されている。クローゼットにはバスローブとパイル地のスリッパ、ミニバーには豊富なミニボトルなどの他、無料のティーバッグ(日本茶、紅茶、カモミールティー、ペパーミントティー、ローズヒップティーと豊富)やレギュラーコーヒーが用意されている他、無料のエビアンもある。

ルームサービスがまったくないのは残念だが、その埋め合わせか、無料のリフレッシュメントが用意されているのはありがたい。照明は蛍光燈を含め非常に明るく、それぞれの照明器具をオン/オフすることで自在な雰囲気づくりが可能。ただ、ベッドからテレビまでの距離が遠く、寝転びながらテレビを見るには不便だ。ゴミ箱は、燃やせるゴミ用と瓶・カン用に分かれているのもユニーク。

このコーナールーム、3階から7階の両サイドにあり、それぞれ1番と25番の客室番号だが、眺め的には1番の客室のほうが緑が多く、また遠く横田基地の夜景が美しくよりよいといえる。25番の方は、森側の景観はよしとしても、寝室の大きい窓から望む景色が団地などで味気ない。

また、このホテルには大浴場施設「S.P.A.」があり、宿泊客は1,000円、外来者でも2,000円で利用できる。なかなかスケールの大きい立派な施設で、これを利用しない手はない。レセプションでロッカーキーを受け取る際、ヘチマや折りたたみブラシなど、利用したいグッズを自由に選んで持って行く。ロッカースペースは広く、ロッカーにはバスローブが用意されている。

階段を上がってスパエリアに入ると、脱衣場のスケールの大きさにびっくり。奥にはマッサージチェアとワイドテレビを備えたリラックスコーナーもあって、ドリンクの無料サービス付き。浴室内には広い湯船とスチーム、ドライの各サウナがあり、カランもたくさんあるので、少々混み合っていてもゆったり利用できそうだが、この日はほとんど利用客がなく貸し切り状態だった。「S.P.A.」の営業時間は正午から22時まで。最終チェックインが21時30分となっている。

館内には、3店のレストランと1店のラウンジがあるが、いずれでもサービス料を徴収していない。優れたサービスを提供しているにもかかわらず、この謙虚さは高く評価できる。いわゆるロビーラウンジはなく、日中は最上階のラウンジでコーヒーなどを提供している他、レストラン「セントロ」は常時喫茶利用が可能だ。ロビーは庭園を一望し、広くはないもののゆったりとソファが配され、おしゃべりを楽しむご婦人がたの姿が目立った。庭園に出て散策することができるが、池の水があまりにも濁っているのは残念に思った。宴会場施設は非常に充実しており、規模も大きいようだ。

全般のサービスは、オークラの技術指導の甲斐あって、このクラスのホテルとしてはこの上なく快適だ。尚、チェックインは一部では14時からとの情報もあったが、ホテルが言うには15時からだそうだ。しかし、早めに到着しても、部屋の準備ができてさえいれば、チェックイン可能だ。朝食はレストラン「セントロ」で午前7時から11時まで。洋定食、和定食(10時まで)ともに1,500円と手頃。

森をもぞむバスルーム 洗い場を設けているので使いやすい

中国料理「花林」

平日の閑散とした昼下がり、店内には2組の女性グループと1組の男性グループがいるのみで、パブリックスペース同様時間の流れがゆっくりと感じるようだった。インテリアには客室同様、高級感はないが、庭園を見渡す清潔なテーブルは快適だ。

ランチタイムには週末を含めて手頃な価格のセットメニューが用意されており、週替わりの4種の料理から一品を選び、それに何をつけるかで料金が変わってくる。もっともシンプルな1,200円の桜花セットは料理の他にスープ・ご飯・漬物が、松陰セットには更に点心または杏仁豆腐が、落葉セットには点心と杏仁豆腐両方がつく。

この価格にして、サービス料もナシとは信じられないくらい美味しかった。布のテーブルクロスやナプキンはもちろん、清潔なオシボリのサービスもある。全体的にサービスはとてもしっかりしており、手抜きがなく、安心して食事を楽しむことができる。

「セントロ」

庭園に半円状に張り出した、オープンキッチンスタイルの活気あるレストラン「セントロ」では、かまどで焼き上げる超薄焼きのピッツァや、世界各地の料理をベースにオリジナリティあふれるアレンジをして楽しませてくれる。

この日も、お客が少なかったのに、キッチンを含め従業員にリズム感があったので、しらけた雰囲気はなかった。ランチタイムには1,200円のコンボセットをはじめ、手頃なランチセットが用意されており、手作りのデザートも人気が高いようだ。調理も非常に丁寧で、完成度は高い。

ディナータイムにはコース料理が3,500円から用意されているが、圧倒的にアラカルトのほうが魅力的な内容だ。数人で数種類の料理を注文して、取り合って食べるのがおもしろいと思う。予約制で庭園に面したオープンエアのテラス席を利用できる大皿料理のコースも用意されており、小人数での集まりにはうってつけだろう。こちらのレストランも、布のテーブルクロスとナプキンが用意され、終始快適なサービスを提供してくれるが、サービス料はなし。申し訳ないくらいだ。また、メニューにはカロリー表示もあって参考になる。

今回は、ランダムにいろいろとオーダーしたので、順序などは考えないで、適当に持ってきても構わないと伝えたのだが、よくタイミングを見計らって提供をしてくれた。ホテルのレストランらしさは保ちながらも、街場のレストランでなければ得られなかった遊び心が取り入れられたよいレストランだという印象だった。また、手頃なワインを種類豊富に用意してあり、それぞれグラス、カラフェ、ボトルで注文できるようになっている。

夕食の後には、最上階のラウンジ「ダコタ」に出掛けた。レストランにはお客の姿が少ないのに、このラウンジはほぼ満席の繁盛ぶりだった。コンテンポラリーなインテリアだが、どことなく懐かしい雰囲気を漂わせているユニークな空間だった。

最上階からは横田基地のライトがよく見え、エアポートホテルのイメージもある。こちらも生演奏まで入っているにもかかわらず、チャージもサービス料もフリーだ。オマケに各ドリンクはすべて手頃な価格。これなら満席なのもうなずける。

総じて来る前のイメージよりも格段に実力のある店ばかりで、正直驚かされた。このクオリティーと価格を保ち続けてくれることを期待する。また、今回は利用できなかった日本料理「昭和の森 車屋」も、落ち着いた佇まいを見せており、次回にはぜひ利用してみたい。

1999.11.20
開業一周年
フォレスト・イン昭和館 Corner Room
哀-1

はじめて訪れたときに好印象を受けることがらが多いと、2回目以降には欠点が浮かび上がってくる場合がある。外見の美しい女性に惹かれながら、次第に性格の悪さに気付いてゆくようなものだろうか。今回このホテルにチェックインした日は、ちょうど開業1周年の節目に当たり、更に土曜日だったので、前回訪れたときに比べて圧倒的に客が多かった。

ブライダルフェアも開催中で、館内にも庭園にも客が溢れるほどだった。多客による活気はホテルにとってありがたいことだと思うが、森に囲まれて静かに過ごしたいとの目的で訪れる客にはうれしくないだろう。また、開業当初はホテルオークラとの技術提携ホテルだったが、この9月1日から正式にオークラホテルズアンドリゾーツの一員になったことで、このホテルに対する期待が一層大きくなった。

フロントでのサービスは、まだまだスマートになりきれないものの、体温が感じられ、1周年を機に初心に立ち戻っているような謙虚さも見受けられる。率先して気を利かせてくれることは少ないが、こちらから申し出れば懸命に動いてくれるようだ。安心な宿泊関係のサービスに対し、レストランでのサービスには不足感があった。気持ちが邪なわけではないようだがこれがオークラのレストランかと考えると、決して誉められたものではない。1年経って、だれて来てしまっているような印象だった。

今回も、6月と同様にコーナーツインを利用した。この時期には2名1室1名14,000円(朝食、スパ利用、ウェルカムドリンク付き)というプランが用意されている。料金を考えれば満足できる設えであることには変わりがないが、不便に感じた点が幾つかあった。

例えば照明は、天井からの蛍光燈による間接照明が非常に明るいのだが、少し暗くして目を休めたいときなど、この間接照明を消すと、フロアスタンドと連動しているため、今度は暗くなり過ぎてしまう。これ以外の照明はそれぞれオンオフができるので、間接照明とフロアスタンドのスイッチも独立させて欲しいと感じた。

また、収納のスペースが、クローゼットと3段のチェストのみで少ないこと、せっかくイタリアンカラーでコーディネイトされた室内インテリアの中で、むき出しのテレビが浮いていることなども気になった。広々としたバスルームでは、シャワーの水圧の低さが唯一残念だった。窓からはさまざまな色合いに染まった木々が望め、その森には散策路が設けられているので、朝夕などに一回りすれば森林浴気分が味わえる。

不要だった料飲施設でのサービス料が、一部の施設で加算されるようになった。それに似合うサービスを早く早く確立してもらいたい。

中国料理「花林」

午後2時30分までのランチタイムに間に合うようにと、急いで駆けつけたところ、土曜日とあってか満席で、「少々お待ち下さい」と言われ、ソファに掛けて待つことにした。ちょうど退店ラッシュに差し掛かり、店内からは次々とお客が出てきて会計を済ませているが、なかなか案内されなかった。そうこうしているうちに2時30分を過ぎてしまい、ランチのメニューは片づけられてしまった。15分ほど待っただろうか、やっと席に案内されメニューを渡されたが、やはりランチのメニューではなくグランドメニューだった。

ランチのメニューを要求したところ、すんなり持ってきてくれたので問題はなかったのだが、店の都合で待たせている間にランチタイムが終わったからといって、それとは別のメニューを差し出されるといやな感じがする。店内は、まだまだ多くのお客で賑わっており、前回訪れた平日とはまったく違った雰囲気だった。客層としても、あまりホテルのレストランに来ているという風でなく、近所の人たちが近所のレストランに来ているような気軽さがあった。

サービスもそれに似合ったもので、制服こそホテルならではのものだが、働いているのも近所のオバチャン風で、気さくなのはいいとしても、このシチュエーションで妙にベタベタした口調でサービスされると違和感があった。料理のお手頃感は、相変わらず見事なもので、最後のデザート(杏仁豆腐)にいたるまで、ホテルレストランとしての水準に則ったものだった。

「セントロ」

夕食に利用したのだが、店内は思いのほか閑散としていた。窓の外に池を挟んで中国料理店が見えるのだが、そちらの方がはるかに活気付いている様子だった。前回は、ピザや一品料理などをみんなでシェアして楽しむスタイルを取ったが、この日はプロモーション中のステーキセット4,500円を注文してみた。前菜は、盛り付けが美しいイタリアンアンティパストの盛り合わせ、スープは茸がたっぷり入ったミネストローネと、ここまではイタリアンテイストが色濃くでており、この店の得意とする範疇と見え、味の方も満足できるものだった。

ところが、肝心なステーキは、単品で2,900円という値付けがなされているにもかかわらず、残念ながらその価値を見出すことはできなかった。演出的には、ホール中央にグリル板を持ち出して、シェフが客席に向かいながら焼き上げるという趣向だが、付け合わせの野菜は作り置きだし、肉もやや冷めてしまっており、ブッフェによくあるパフォーマンスコーナー程度の価値しかない。

デザートは、3種のイタリアンデザートからチョイスでき、それはなかなかおいしいのだが、デザートを運んでくる前に、コーヒーを置いていってしまうのは、感心できなかった。また、週末だからか、アルバイトが多く、料理に関する知識がまったくないので、サービスに不安を感じた。やはり、ピザハウス程度に考えて、軽食利用をした方がいいのかもしれない。

翌朝、朝食時にもこの店を利用した。6月の時点では、セットメニューがあったが、この日はブッフェのみであった。和洋両方取り揃えてあるものの、それぞれアイテムが少なく、どれにしようかと迷う必要がまったくない。とにかく何も考えないで、できるだけ早く朝食を済ませたい人向き。朝からオシボリを出してくれるが、無駄なような気がする。

Y.K.