1998.04.09
みなとみらいでオヤツ
「トスカ」パンパシフィックホテル横浜
楽-1ニューヨークから戻った友達に会うため、横浜へでかけた。午後3時。何か食べたいと思っても選択の幅は極めて狭い時間帯だ。ぼくはすでに昼食を済ませていたけれど、友人は空腹だと言う。せっかく久しぶりに会ったのだから、ファミレスやファーストフードと言うのも味気ないし、かといってまともな店は休憩中だ。しかたなく、近くのホテルのコーヒーショップに入った。
プッチーニのオペラのタイトルを冠した店は、高い天井に延びる何本ものパームツリーと、夜空の星に見立てたスタイリッシュなハロゲン灯が、オープンエアのような雰囲気を醸し出している。若々しい従業員が多かったが悪くはない。一番残念だったのは品数が少ないことだ。飲み物を除くと10種もない。コーヒーショップなのなら、もっと豊富な品揃えが欲しいところだ。
1,600円のシーザーサラダをメインディッシュとして注文したが、パンも付けてくれなかった。昼下がりにサラダとアイスティーを注文して、二人で6,000円と言うのは割高感がある。最近はコーヒーショップでブッフェ営業を主体とするところが増えてきた。ここも時間帯によっては一部ブッフェスタイルを取っている。一時期はやったことも事実だが、ホテルのレストランであり、昼夜通し営業をして一番多くの客が利用するところなのだから、広い選択の幅と、ホテルレストランならではのクオリティーを守ってもらいたい。
コーヒーは別のところで飲もうということになって、ホテルの外に出てフレンチスタイルのカフェに入った。広尾で日本を代表するフレンチレストランを成功させているシェフがオーナーのこのカフェは、オリエント急行を思わせる豪奢な感じのインテリアとサービススタイルを取り、コーヒーとケーキを注文するとたちまち2,000円近く吹っ飛んでしまう。もちろん、それなりにおいしいのだが…
友人はケーキは要らないが、店頭で売っているフィナンシェとマロングラッセ(メニューにはない)をここで食べたいとわがままを言った。すんなりOK。街場の店にしては融通が利く。
友人はサラダだけでは物足りなかったらしく、さらにアンナミラーズに入ってハンバーガーを食べていた。付き合いのいいぼくは、常にサービスされているアメリカンブレックファストを食べた。今日はもう、夕食は要らない。
1998.10.02
濡れたシャンパングラス
パンパシフィックホテル横浜 Executive Suite
楽-3オープンして一年余り。ほとんどが若い従業員で、深みのないサービスに対する苦言が巷で絶えないが、今日の印象は決して悪くなかった。この日は特別な要望は何一つ出さず、単なる一宿泊客として、さばかれただけだから、そう不愉快な思いをしなくて済んだのかもしれない。若いスタッフはみなフレッシュで一生懸命で、笑顔もある。ベテランスタッフにサービスのような、つつみ込まれる感じの安心感こそなくても、やるべき事は一通りやってくれる。
Executive Suite 101u。ハーシュベドナーがデザインした客室デザインは、モダンで木のぬくもりを感じるあたたかい雰囲気。バスルームやリビング−寝室間の仕切り戸に引き戸を採用するところが、いかにも彼ららしい。最近ホテルデザインの世界では引く手数多の彼らだが、リッツカールトン大阪を除いては、ホテルチェーンが違っても、どこのホテルも同じようなテイストだ。こことホテルインターコンチネンタル東京ベイとはあまりに似すぎていて、同じホテルにいるような気がするほど。外の景色もレインボーブリッジとベイブリッジが入れ替わったようなもので大差ない。
寝室の窓は、部屋の幅一杯に半円状に大きく突き出していて、さらに、床から天井までガラスだから、パノラミックな景観が楽しめる。リビングには狭いながらもバルコニーが設けられていて、風呂上がりにバスローブ姿でミニバー備え付けのシャンパンをなんていうことも可能。
残念なのは、バスルームが石張りでなくタイル張りなこと。10万円もする広くてシンボリックな部屋なのだから、もう少し豪勢に作ってくれてもよかったような気がする。それから、客室の広さに比べて引き出しなどの収納スペースが少ない。2,3日の滞在でも少ないと感じるほどだから、長期滞在には向いていない。
このホテルにも、メンバーシッププログラムが用意されていて、会員は16時までのレイトチェックアウトやフィットネスクラブの無料利用などの特典がある他、平日にはかなりお得な料金を設定しているので、お客の少ない平日にのんびりと過ごすのがオススメだ。
ただ、男性諸氏にご忠告。ここのフィットネスクラブは某大手エステティックサロンが関与しており、未だかつてない女性向きの作りになっている。たとえ彼女と一緒だとしても、さらし者になっているような気分を味わうことになる。
充実の客室に対して、レストランには大きく失望した。というより、余りのお粗末さにお口あんぐりって感じ。各レストランを紹介したパンフレットの一文には、「ようこそ、美味が彩る充実の世界へ。おいしさはもちろん、心の通う温かいサービスをご用意して、お迎えいたします。インテリアや食卓の演出もふくめ、新鮮な発見と共感のゆきかうおもてなしをご堪能ください。(以下省略)」とある。
現実はこの文からイメージするものとは著しくかけ離れていた。予約した時間通りに店に入り、席に案内されると、メニューを一組だけテーブルの中央に置いていった。デートならまだしも、仕事の打ち合わせを兼ねた食事の席で、仲良く一つのメニューを見せっこするのは具合が悪い。「メニューをもう一組見せて頂けますか?」とお願いしたが、結局見せてもらえなかった。
それよりも注文を受けることに熱心で、まずはお飲み物でもというので、ワインリストから、「KRUGのDemi」を注文した。すると担当の男の子は、「FullかHalfになりますが」という。「だから、Demiを」といっても、「FullかHalfだけで、Demiはありません」とあっさりというのだ。ホテルのダイニングで働く人間が、それも巷では名誉鉄人の店として名高い店の一員がDemiという言葉を知らないとは驚いた。寿司職人にガリって何ですかと聞かれたようなものだ。
注文したKRUGはどこかで抜栓されて運ばれてきて、テイスティングも無しに、まだあたたかく濡れたままのグラスに注ごうとした。待ったを掛けて、このようなグラスにシャンパンを注いではいけないと注意しても、「は?」という感じで、反応がない。マネージャーを呼んで、こういうことがないように、ワインのサービス方と基本的な用語についてきちんと教育しているのかと尋ねたところ、あっさりと「していない」と言われてしまった。だめだ。話しにならない。このような状態でありながら、今なお予約を取ることさえ難しいほど、人気の高い店だ。この程度のサービスに満足し、店に列をなす人たちが後を絶たないのは、なぜだろう。
翌朝の朝食。「トゥーランドット遊仙境」に比べて、ホテル直営「トスカ」の方が、はるかにサービスがよい。宿泊関係と同じく、若いスタッフが多いが、スマートに笑顔で仕事している。フレッシュジュースを目の前で絞ってくれるサービスや、オムレツを焼いてくれるパフォーマンスなど、楽しい雰囲気だ。ブッフェにはキムチ丼だってある。
しかし料理に、日によって出来不出来がある。グリーンサラダはとても新鮮で、見るからにおいしそうだと思えたり、茶色く変色した部分が入って、食欲が減退するようだったりということがままある。コーヒーのおかわりも、積極的にくれる日や、呼んでも来てくれない日がある。混雑の状況はあまり変わらないのに、なぜだろう。
1998.11.16
異臭がするベッド
パンパシフィックホテル横浜 Executive Suite
怒-5横浜のバルコニー付き客室が自慢のホテルにチェックインした。スムースに手続きを済ませてくれたフロント係は、ニコリともしてくれなかったが、手慣れた感じで客をさばいていた。客室に案内されて直ぐに、なにか「におう」と直感したが、その元を突き止められなかった。ベルには退室してもらい、気のせいだろうと忘れることにして、仕事に出かけた。順調に仕事を終え、友人との食事の約束までの1時間でシャワーを浴びたいと思って部屋に戻りドアを開けると、やはり「におう」のだった。
嗅覚は最初のコンマ数秒が命で、直ぐに慣れて鈍くなってしまうため、第1印象が決め手になる。この部屋にはなにかあると思い、においの元を探して部屋を歩いてみると、どうもベッド付近が怪しい。ベッドの下に何かあるのかと覗いてみたが、スナック菓子の袋と散り散りのメモ用紙と、埃塗れのスリッパだけだった。ベッドの下をきちんと清掃していないのも十分に問題だが、今はそれどころではない。
とりあえず、ベッドスプレッドの臭いを嗅いでみようと鼻を近づけた瞬間、激しい吐き気を感じた。言葉では表現しにくいが、腐乱臭というか、これほど不快感を覚えさせる臭いは滅多にない。
とりあえず、客室係呼び、ことの次第を説明し部屋を替えてもらうことになったが、「同じことがないよう、責任者レベルのものが十分チェックをした上でご案内したい」とのことで、15分ほど待つことになった。もちろん、友人との約束の時間が迫っていることも告げてある。しかし30分を経過しても連絡がなく、こちらから催促の電話を入れても「もう少々」としか返答してくれない。
しびれを切らしていると、「ご用意ができました」と、その時間の責任者と称する人が新しい部屋に案内してくれた。今度は「におわない」。しかし、アーモアの下には紙屑が落ちているし、バスタブは数本の長い髪の毛がへばりついている。チェックイン時にはじめて案内された部屋なら、このくらいのことで文句も言わないし、「この程度の実力のホテルなんだな」で済むけれど、「責任者レベルが十分にチェックした」部屋としては問題がある。
その点を指摘して再度部屋を用意しなおして、レストランにキーを持ってくるように、そして更に立場の高いものを連れてくるように伝え、約束場所へ出かけた。レストランは快適だった。気のおけない友人との食事なので、館内の気軽な店を選び、席に着くなりシャンパンを注文すると、「今日はお祝いかなにかですか?」と、親しみを込めて声を掛けてくれる。「別に。いつも食事の前はシャンパンを飲む習慣だ」と答えると、「日本人にはまだ珍しいですね。でもステキです。」と返してくる。その雰囲気が自然だから、話しも弾む。すると、注文も弾む。ホテルとしては原価ナシで収益増だ。
食事が済み、コーヒーを飲んでいると、フロントのマネージャーと称する人がやってきて、言い訳をした上で、自分も見てきたが今度は大丈夫だとキーを差し出した。「不手際があったのだから、言い訳をする前に詫びたらどうだ」と指摘しても、ヘラヘラとしているだけで当の本人はその気がないのか、詫び方を知らないのかのどちらかだ。
ラストオーダーの時間が過ぎ、会計を先にと言うので伝票にサインしたが、この日はダーツをやってしとめた数字分だけ割り引きになるイベントをやっていたのに、オファーがなかった。更に言えば、チェックイン時に夕食は10%割り引くと言っていたのに、それも無しだった。実際に行われていないプロモーションなら、はじめからやらなければいいのに。印象としてはマイナスポイントだ。
3度目の部屋に入ってみた。結局このホテルは掃除の仕方を知らないとしか思えない。ナイトマネージャーを呼んで、ぼくの高望みかどうか、気になる点を一つずつ尋ねてみた。ベッドの下に変なものが落ちているのはフツウですか? シーツに鋭い木片が張り付いているのはフツウですか? 窓ガラスの内側はどんなに汚れていても拭き上げはしないんですか?急須は洗わずに前のお客が使ったままにしておくこともあるんですか?
とりわけシーツの木片には驚いた。少し横になろうとベッドカバーをめくると、先がとがった木片が入っていた。鋭利な舳先がこちらに狙いを定め、ヒヤッとする恐怖感を覚えた。その木片は、ナイトテーブルに足元の一部が破損し、その一部であることがわかった。
満室の翌日、チェックインタイム前に無理を言って部屋を用意してもらったわけではなく、責任者が念入りにチェックしたにもかかわらずこれですか?といった具合に。その時部屋に来たナイトマネージャーは「現状を見て、自分も驚いている」「明日御出発時に上司からご挨拶とお詫びをする」と言い残して出ていった。
翌日、チェックアウトをしにフロントに降り、カウンターで手続きをしていても、担当者から前夜の詫びもなく、そのまま支払いを済ませて「はい、サヨナラ」になりそうだった。こちらから声を掛けてはじめて昨日のフロントマネージャーが出てきた。別に申し訳けなさそうな風でもなく、昨夜と同じように「ヘラヘラ」している。
彼では埒があかないので、その上司を呼ぶように言うと、しばらく渋ってから電話を掛け、「後10分でここに来る」「その間にお会計を」と言ってきた。明らかにホテルに非があるクレームを解決できていない途中で、請求書を突き付ける神経が信じられない。
10分後に副支配人が登場し、昨日からの顛末を再度説明したところ、「非常に申し訳ない」「逃げも隠れもしない」「きちんと調査をして、どういった手を講じたかを報告する」と返答があったので、請求された正規の料金を支払って出発した。しかし、その後まったく返答はない。最低。
1999年のコメント:上記の件で一向に返答がないので、99年5月11日にこちらからアプローチをしたところ、5月14日には副総支配人と直接電話で話しをすることができ、また、5月15日付けで副総支配人から書状で返答をいただきました。しかし、内容は支離滅裂で、ぼくの「あのとき指摘したような初歩的な問題が、なぜ発生したのか、それを改善するためにホテルがどのような改善策を講じたかを、副総支配人がぼくに約束したとおりに、具体的に報告してもらいたいだけ」の要求に対しての返答にはまったくなっていませんでした。
それどころか電話での会話では、11月の非礼を微塵も詫びることもなく、逆にぼくがこうした事実を、実名をあげてホームページに公開していることに対し、「いかがなものか」とまでいわれました。ぼくはありのままを記載しているだけで、このホテルを不当に中傷する意図は全くありません。ホテル全体を代表する立場にある人間が、自ら約束したことを、こうもあっさりと反故にしてしまうようでは、このホテルの一体どこを信用できるというのでしょうか? 全く残念でなりません。
2001.05.10
バカ騒ぎ
パンパシフィックホテル横浜 Executive Room
楽-3もう利用することはないだろうと区切りをつけたのが2年半前。ところが時間が経って、今やこだわりはほとんど消えた。遅い時間にチェックインして早朝に出発したので、滞在時間は8時間程度だったが、広い客室と爽やかなバルコニーのお陰で、思っていた以上にリラックスできるステイだった。今回の滞在では、悪かったイメージが払拭されて見直せた部分と、そうでない部分とがくっきりとわかれた。
到着時にフロントで対応した係は、どちらかというと感じの悪い若い女性で、そんな表情をして接するなら自動チェックイン機でもこしらえて欲しいと思いつつ手続きが終わるのを待った。パシフィッククラブインターナショナルについては現在内容を再検討しているとの情報を耳にしていたが、一応チェックイン時には提示をしてみた。ところが、番号を控えるでもなく、一瞥しただけで何の言葉もなくつき返された。どうなっているのだろう。
しかし、チェックイン後に客室まで案内してくれたベルマンは、遅い時間にも関わらず、快活で丁寧だった。すでに人の姿がなくなったロビーも、改めて眺めると小ぢんまりとしていい雰囲気だったし、金属の手すりなどは磨き上げられていて清潔だった。エレベータホールの照明は抑えられ、色彩感のあるインテリアにセンスのよさを感じることもできた。
客室も概ね清潔に清掃されていたが、このホテルでは、室内の清掃に関していやな思いをし続けていたから、室内の清潔さになによりホッとさせられた。標準客室で43平米という面積は、横浜では最大で、国内のホテルでもトップクラス。落ち着いた中にも明るい雰囲気のインテリアでまとめられた、センスのよい客室づくりをしている。
123×205センチとゆとりある大きさのベッドが2台、オットマン付きのソファとコーヒーテーブル、ライティングデスクとダイニングテーブルを兼ねた対面式のイス・テーブル、ワイドテレビとミニバーが一体化したキャビネットと、充実した設備がありながらも窮屈な印象はまったくうけない。照明はシンプルでさほど明るくないが、ムードのあるライティングだ。
最大の魅力であるバルコニーは、手すりの間からも景色を楽しめて、リゾート気分が盛り上がる。その開放感からか、周辺の客室に宿泊している若者が、バルコニーでバカ騒ぎをしており、窓を閉じてもその声は深夜3時近くまで気になった。室内の天井高は265センチあり、ほぼ全面の窓との相乗効果で余裕を感じる。
家具類はなかなかの印象だが、寝具はカバーと一体化していていまひとつ快適さと清潔感に欠ける。特に枕の材質がなじまなかった。ミニバーには洒落たグラスや、リモージュ焼きのティーカップなどが用意され、小物には大きなこだわりを持っているようだ。
バスルームは実に6.7平米を割き、実にゆったりとした空間だ。大きなバスタブに、それぞれガラスで仕切られた洗浄機能つきトイレとシャワーブースを持ち、機能的なレイアウトに仕上がっている。ベイシンはシングルだが天板には石を使い、一面の大きな鏡がさらに広さを演出している。床とシャワーブースはタイル張りだが、そのほかはビニールっぽいクロスを使って、やや質感を欠いたのが残念だ。アメニティはバラエティ豊富に用意されとても楽しいし、厚手のバスローブを全室に用意しているのもありがたい。タオルはスリーサイズ揃うが、すでに耐用限界を超え、黒ずんでヨレヨレだった。
また、排水管に何か詰まっているのか、ベイシンの排水口からとんでもない悪臭が漂ってきていた。ぼくがこのホテルに来るときは、思い切り鼻を詰まらせてきた方がいいのかもしれない。また、宿泊規約を読んでいたら面白い記述が目にとまった。5泊を超える連泊予約はできないことになっている。ロングステイは禁止されているのだろうか。
以前はこの地区の3ホテルはお互いの顔色ばかりを見合わせていたようだが、最近は個性は光るようになってきた。それぞれの得意技で勝負しているので、宿泊する側も目的をもって選びやすくなった。このホテルにも積極的なプロモーションがたくさんあり魅力的だ。しかし、横浜はまだまだ本質よりもイメージが先行している地域だけに、ビジネスで信用できるホテルが少ないのが残念。
Y.K.