1998.03.12
温泉旅館のノスタルジー
陣屋(鶴巻温泉)
哀-2

鶴巻温泉に用事があったついでに、界隈でもっとも由緒のある旅館に泊まってみた。ブルーな気分を一層掻き立てるように強い雨が降っていて、古い木造の宿に雨音を響かせていた。和田義盛公の別邸跡の起伏に富んだ敷地には、小川や玉砂利、竹林などがあって、各客室からも落ち着いた雰囲気の景観が望める。

せっかく温泉に来たにもかかわらず、けがのため、改装仕立ての大浴場や、出来たばかりの桧の露天風呂にも入れなかった。出された料理にもこれといって興味をひくものはなかった。夕食よりは朝食の方が充実してる感じで、炊き立てのご飯がなんとも言えずおいしかった。豆腐や味噌にも思い入れがあるように感じたが、けがで味覚もくるってるのかもしれない。

今回は、今では見られなくなった木製の窓枠と手すりのついた窓から、満開の八重の梅を眺めつつ、しっとりとした土の香りを楽しんで、読みかけだった本を読んだり、考え事をしたりして過ごした。ホテルではこのノスタルジーは味わえない。ちょっとセンチメンタルになって「哀」。

Y.K.