1997.11.08
コミュニティ型デザインホテル
ホテルモリノ新百合丘 Deluxe Room
楽-2

小田急線新百合ヶ丘駅前に、この11月7日にオープンしたばかりのホテルモリノに宿泊してみた。1階から6階までは、さまざまなショップが入居した「OPA」になっており、7階から9階までの上層部がホテルだ。駅改札から来た場合、正面側には「OPA」のエントランスがあるだけで、ホテルの入口は見当たらない。それもそのはず、ホテルのエントランスは「OPA」とは異なり、正反対の真裏に設けられているので、初めて訪れる人は戸惑うかもしれない。

「OPA」側の正面が駅前広場に面して賑やかなのに対し、ホテルエントランスは一転して静かな環境だ。玄関前は広いスペースが割かれており、ホテルらしい様相を呈している。ただ、駐車場が立体式で、出し入れに時間がかかったり、すぐに満車になってしまって困る場合もある。利用者の不便も然る事ながら、ホテルにとっても、係員を常駐させなければならず、コストが掛かって非合理的な立体駐車場は、かしこい選択とは言えないだろう。

正面玄関には、非常に背の高い自動ドアが取り付けられており、一歩足を踏み入れると、シャープな大理石と木のぬくもりを活かした、モダンなインテリアに包まれる。奥に進むとエレベータホールがあり、抑えられた照明が幻想的な雰囲気を醸し出している。ロビーは7階にあり、特にベルマンは置いていないが、荷物が多い時には、ドアマンに申し出ればフロントから係りを迎えによこしてくれる。

7階でエレベータを降りると、正面にレストランがあり、右方向に中庭を望むことができる。ロビー周りもガラス張りになっていて、外光がたっぷり入り、とても明るい空間だ。1階の暗いエレベータホールから、明るいロビー階へ出るところなど、パークハイアットのアイデアを借用しているのかもしれない。そう思ってしみじみ眺めてみると、客室階の廊下なども雰囲気はよく似ており、共通点をあちこちに見つけることができるだろう。

今回利用した客室はデラックスツイン、32平米で24,000円だ。場所柄とホテル全体の付帯設備を考えると、この料金設定は高すぎるように感じた。確かに、客室内のインテリアは、今までのコミュニティホテルには見られなかったテイストで、シティホテルと遜色ない設備が整っている。冷蔵庫とテレビを収納した洒落たデザインのアーモア、すりガラスの天板を用いたライティングデスク兼ダイニングテーブル、ゆったりした大きさのソファなど、デザイン的には秀逸だと感じる。

天井が高いので広々とした印象もあるし、オープン仕立てだから、何と言ってもキレイだ。バスルームは広くはないが、大き目のバスタブにスタイリッシュなベイシン、洗浄式トイレがあり、天井からのハロゲン光がスポットライトのように美しい。全体的に空間の演出には優れているが、質感がそれに伴なっていない。寝具やシーツ、タオルの質、ソファのファブリックなど、かなりチープだ。

アメニティグッズでは1回分ポーションのシャンプーリンスと、切れ味の悪いレザーにガッカリした。ルームサービスもない。この辺を考慮すると、やはりラックレートの24,000円は高いと思う。16,000円くらいなら、納得がいくかもしれない。このホテルにはダブルベッドルームがない。シングルかツイン、そして一室のみのスイートという構成だ。

「赤坂離宮」

ホテルモリノには3店のレストランがあり、中国料理店には「赤坂璃宮」を据えている。といっても、この「赤坂璃宮」はホテル直営だ。当初はテナントとして入居する予定だったが、その話しが途中でポシャってしまったらしい。しかし、その時ホテルは「赤坂璃宮」の名が入ったパンフレットなどを使ってすでに宣伝を始めてしまっていたとの理由から、逆にロイヤリティを払って名前を借りることになったそうだ。

開業間もないレストランではありがちなことだが、この店でも厨房、サービス共に大パニックが生じていた。いくら待っても料理が提供されず、怒り出すお客さんも少なくなかったようだが、従業員たちから申し訳ないという気持ちが伝わって来たのが救いだった。開業前のトレーニングが十分にできていないのかもしれない。店内のインテリアはなかなかいい雰囲気で、料理も値段の割においしいという印象だった。

部屋付けでレストランを利用する際、サインを求めるだけで伝票をくれなかったが、チェックアウト時に違った額の会計が加算されており、それを訂正するのにかなりの時間を要した。トラブル続きのオープニングだった。

Y.K.