1997.03.22
昼のグランメゾン
「トゥールダルジャン」ホテルニューオータニ
楽-5

通常夜のみの営業であるこの店に昼間訪れる機会は、貸し切りで借りない限り年に数回しかない。季節ごとの賞味会と称して、ワインもセットされた定食が格安で用意される。今回は春の賞味会ということで、名物の鴨をメインにしたコースメニュが税・サ込みで20,000円の破格だ。

この日は土曜日であることもあって満席の盛況ぶり。バブルの後、この店が満席なのを見ることがなかったのでうれしく思った。従業員もオールキャストでサービスに当たっており、ボールルームでのパーティーのように、華やかで活気のある雰囲気だった。これほどの店になれば当然格式があり、品格のあるサービスが提供されるわけだが、だからといって愛想のないただ堅いだけのサービスではない。むしろとても人間的で、日本人らしいやさしさと心遣いに満ちた、あたたかいサービスだ。

こうしたサービスのあり方に対しては、いろいろな見解があるだろう。本国フランスの高級レストランには、その存在さえ気付かせないほど、まるで風のように舞いながら、見事なサービスを提供してくれる従業員が多かった。さりげなくて無機質だが、不足はまったくなく、それはそれで感動だった。彼らは非常に優れた技術で、完全な非日常と舞台にある時のような心地よい緊張をもたらしてくれた。対照的に、この店は我が家のようなくつろぎを与えてくれる。料理については巷でとやかくいわれているが、それほど悪くない様に思う。少なくとも料理が値段に値しないという印象はまったくない。

Y.K.