1995.08.04
ホテルは文化
ホテル日航福岡 Nikko Floor Room
楽-2

デラックスルーム室内

このホテルがオープンした時のキャッチコピーはホテルをひとつの文化だと考えるといった内容のものだった。その考え方には大いに共感し、人間的で美意識の高いホテルの姿を想像した。開業当時の印象は、その頃のホテル事情を考えれば、大いに健闘していたと言える。広々とした大理石のロビーには無駄なものは一切なく、美術館のホワイエのようだった。サービスには明るさがあり、健康的なスタッフの姿に好感を持った。日航福岡のオープンとともに福岡のホテルに新しい時代の風が吹き込んだ。

その後、しばらく福岡を訪れる際は、日航福岡を定宿にしていた。だが、なぜかいつも高熱を発し、ほとんど記憶に残っていない。あまりの具合の悪さに、東京からスタッフを呼び寄せたこともあった。ある時は朦朧としたまま沖縄行の飛行機に乗り、搭乗から到着までキャビンアテンダントに付ききりで世話をしてもらったこともあった。またある時は、空港に着いた時点で急に発熱し、ホテルまでのタクシーの車中でぐったりとしてしまった。そのタクシーで流れていたラジオ番組は妙なダジャレ的体験談を扱ったもので、「おばあさんにこの薬はお尻に入れて使ってねと座薬を処方したら、お汁に入れて飲んでしまったらしい」などという内容だったが、それだけははっきりと覚えている。日航福岡に泊まると風邪を引く。いつしかジンクスになってしまった。

今回も恐る恐るチェックインをしたが、どうやらジンクスは抜けられたようだ。元気なまま過ごすことが出来た。利用したのはニッコーフロアのツインルーム。裏側を望む客室で、眺めはあまりよくなかったが、室内は広々と感じられた。東急ホテルから来たせいか、インテリアも非常に洗練されているように思える。テレビはアーモアに収まっているが、その扉が木材の蛇腹風でなかなか面白い意匠。デスクは独立し、客室の中央を向いている。窓は腰が低く日差しがふんだんに入るが、幅は約半分だけ。窓の脇の壁になった部分に、ラブソファがおかれている。ぱっと見た感じでは、センチュリーハイアットにも通じるインテリアだ。ドレッサーも独立し、洒落たミラーとライトが設置されている。

バスルームも比較的広く、扉正面にベイシン、仕切りを隔ててトイレとバスタブが並ぶ。アメニティは標準的だが、バスローブを備えている。室内は静かで過ごしやすかった。サービスも概ね快適だった。スタッフは快活で礼儀正しい。今後福岡には外資系を初め、多くのホテルがオープンを予定している。いささか過剰な気もするが、その中でどう健闘していくのか楽しみだ。

Y.K.