1995.07.28
ムジンくん
品川プリンスホテル新館 Corner Room
楽-1品川プリンスホテルは、本館、別館、新館と合わせれば、3,000室規模のメガホテルとなり、わが国最大の客室数を誇るホテルだ。同地区にある高輪プリンスホテル、新高輪プリンスホテルを含めると、4,000室を超える巨大ホテルゾーンを形成している。自慢はその規模だけにとどまらず、徹底した合理化を図った、今までにない新しいホテル運営システムを導入したことを忘れてはならない。
プリンスホテルが過剰だと判断したサービスはねこそぎ廃止され、大胆なアイデアで大掛かりな合理化を実現した。あれもなし、これもなしのサービス方針ながら、評判の方は上々。ロビーではカシニョールのステンドグラスが目を引き、大理石をふんだんに使用した明るく開放的な空間が広がるのだが、いつ行っても駅のコンコースさながら人また人でごった返しているので、このロビー本来の良さは想像で味わうしかない。
チェックインを担当する係は、銀行で預金をおろすか入国審査のときのように事務的で無愛想だが、これもお値段が手頃な代償だとガマン。客室料金はしっかり前金制。基本的にベルサービスは行わないと聞いていたが、頼めば運んでくれるようだし、一応ベルデスクなるものが設置されており、それなりの人員が待機している。
客室へ向かうエレベータは、簡素なものだが清潔感はあった。この日は修学旅行生たちが宿泊しており、彼らが集団で客室に向かうタイミングとバッティングしてしまったため、小田急線の通勤ラッシュ状態だった。
客室階は中央部分に宴会場を設けており、その周囲に廊下と客室が配置されている構造だが、宴会場と客室とは完全に遮断されており、それぞれ別のエレベータでアクセスするようになっている。客室廊下では、午後になっても清掃のおばさんたちが慌ただしく駆けずり回っており、エネルギッシュな空気が充満していた。
カードキーを挿し込んで客室に入ると、遊び心のある鮮やかなカラーのインテリアが目に飛び込んでくる。2面に窓があるコーナールームでさえ、30平米に満たないコンパクトなサイズだが、機能的にまとめられているので、かえって新鮮さが感じられた。もっとも印象的なのは、大きな窓とそこから望めるダイナミックな景観だ。東や南向きであれば海も見えるし、反対側だとしても都心のイルミネーションが美しく見えるだろう。
バスルームは狭いユニットなのに、なぜか落ち着いてしまう不思議な空間。全体的にお金を掛けずに設えたのが丸見えの設備だが、それでもバランスが取れているので違和感がない。チェックアウトは、クレジットカード利用の場合は自動精算機を利用できる。コストパフォーマンスは認めるが、ホテルに泊まりながら「ありがとうございました」の一声も掛けられずにホテルを後にするのは、やっぱり虚しい。
474席というとてつもなく多い客席数を誇るブッフェレストラン「ハプナ」は、最近の食べ放題ブームの火付け役としての功績も大きく、連日オープン前から長蛇の列ができることでも有名だ。昼夜ともにブッフェを提供する店だけあって、朝食もブッフェオンリー。9メートルの天井高があり、椰子の木が茂る店内は、アトリウム空間となっており、早朝から多くのゲストで賑わい、活気に満ちている。いささか騒然としている気がするが、ここはプリンス、仕方があるまい。
ところが、スリッパ姿だったり、それ以下の身支度で出向いてくるゲストが後を絶たず、都心のホテルだという雰囲気は皆無。ブッフェ台にもろくなものは並んでいないし、水さえもセルフサービス。ゲスト自体ホテル慣れしていない人が多く、ディスペンサー式のコーヒーサーバーの扱いがわからず、右往左往する光景があちこちで展開。やっと要領を得て、カップにコーヒーを注いだかと思えば、今度はコーヒーが止まらなくなってしまった様子。受け皿が溢れ、見る見るうちに床はコーヒー池になってしまった。当の本人は素知らぬ顔で自分の席へ向かってしまった。朝食券は「バーガーキング」でも利用できる。
Y.K.