1995.01.05
フロント鑑賞
ホテルブエナビスタ Standard Room
哀-1

車で大町温泉に出掛ける途中、松本市内に一泊する用事があった。前日の夜のうちに東京を発ち、途中諏訪に寄ってから松本に着いた。予定よりもかなり早く着いてしまい、待ち合わせの時間までまだ数時間もある。早朝だから当然チェックインはまだできない時間だし、市内で暇をつぶせるようなところは知らないので、ロビーで辛抱強く待つことにした。

ロビーのソファに陣取って書類を広げたり、数学の問題を解き始めたり(当時スタッフに受験生がいたので、手が空いている時は勉強をしていた。)で、フロント係も不審に思ったかもしれない。しかし、この思いがけない暇な時間は結構楽しめた。それは、フロントの仕事を数時間連続して眺めることができたからだ。午前9時頃になるとチェックアウトのゲストが降りてきて、支払いをし出発していく姿が目立ってくる。

ゲストにとっては、仮に毎日泊まり歩いていても1日1回しかチェックアウトはしないが、フロント係にとっては、チェックアウトの件数だけ同じ内容の作業の繰り返しなわけだ。その度に、にこやかに「冷蔵庫のご利用はございませんか?」と問い掛け、会計をし、「ありがとうございまいした。いってらっしゃいませ。」と送り出している。その間にも電話を受けたり、奥から呼ばれて引っ込んだりと、本当に忙しそうだ。この時のフロント係は、とても素朴な笑顔をすべてのお客さんに向けており、見ていて気持ちが和むほどだった。

ところが、我々が用件を済ませて戻って来てチェックインした時の担当は、朝にはいなかった別の男性で、間違いは何一つしないが、いまひとつ不機嫌そうに感じた。取りたてて不満がることではないが、朝の光景とは随分様子が違ったので、少なからずがっかりしたのは事実だった。

客室は28平米くらいのスタンダードルームだった。バスルームがとてもコンパクトな分、ベッドルームは少々広めに感じたが、とりわけ珍しいものはない。パステル調のインテリアも今の時代には、あまりぞっとしないし、絨毯も染みだらけでかわいそうだ。室内はタバコの残り香がしている。

しかし、これは客室係の手抜きでというより、利用するゲストの層によるような気なする。絨毯にものをこぼしたり、タバコの焦げあとをつけたり、家具に傷をつけたり、手入れをしようにも追いつかないのではないかという印象だった。おそらく松本市内では最新で最大級のシティーホテルだと思うが、ビジネスホテルのような使われ方をしているようだ。地下にディスコ施設もあるようだが、営業しているような様子はなかったし、レストランもレベルが高いとはいえなかった。

Y.K.