1995.01.03
白紙委任状
ホテル ル・ファール本牧 Standard Room
怒-5

クレジットカードで支払いをする場合、大抵のホテルはチェックイン時にプリントを取る。しかし、ごく希に金額の記入していない売上伝票にサインを求められることがある。その際は必ず断ることにしているが、断ればすんなりと「ではチェックアウト時に精算させていただきます」と引き下がるのが一般的だ。

ところがこのホテルは違った。チェックイン時支払方法について尋ねられ、カードでと答えると提示を求められた。ここまでは通常の手続きだ。ところが、プリントを取った伝票にサインをしろと言う。もちろん断った。しかし、このホテルの場合「規則ですから」と一歩も引かない姿勢を示している。CATを通し、カードが無効でないことの確認が取れたうえでも、そのように執拗にサインを要求する根拠はなにかと尋ねても、決まりだからの一点張り。

金額の記入されていない伝票にサインをするということは、白紙委任状に署名をするに等しい行為だ。実際にこれまで同様のケースでトラブルを経験して懲りているという経緯もある。以前にカード会社に電話を掛けて、このような場合サインをするべきか断るべきかの判断について尋ねた時には、決してサインをしないようにとアドバイスされた。今回はゲストを頑として信用しようとしないホテル側の姿勢に、拭いようのない大きな不信感を抱いかざるを得なかった。

車を立体駐車場にいれ、大きな荷物を持っての宿泊なのに、スキッパーに見えたのだろうか? カード伝票にサインをしないのなら、現金でデポジットを支払うよう要求された。現金の持ち合わせは十分にあったが、その要求が正当なものに思えなかったので断った。すると今度は「それでしたら、お泊めするわけにはいきません」と来た。担当をしている中年女性のフロント係では埒があかないと思い、責任者と話しがしたいと申し出ると、自分が責任者だと言う。フロントを代表する立場の人間がこのように勉強不足では困ったものだ。

カウンター越しに厳しくクレームを付けた後、カード会社に電話をして指示を仰いだらどうかと提案すると、「では結構です」と引き下がったが、見るからに不機嫌そうだった。彼女から乱暴に渡されたルームキーを持ったベルガールが、客室へと案内してくれた。世界中のホテルを泊まり歩いたが、これほどの不愉快な思いは初めて。

客室は狭いが、デザインはユニークでモダンな感じで、床はフローリング。バスルームは一般的な広さだが、アメニティは充実していた。クナイプのソープが置かれており、その他のグッズも海を意識したデザインが施されている。シティホテルというよりも、地方のエコノミー型リゾートホテルのような感じ。

朝食はレストラン「ボンボヤージュ」を利用した。ブッフェだが、品数は非常に少なく、ビジネスホテルにも劣る内容とサービスだった。立地的にはマイカル本牧ショッピングセンターの中核に位置しているが、観光で横浜を訪れる人の交通にも有利とはいえないし、景観はさして期待できない。高層階からはかろうじて港が眺められるそうだが、今回の客室は6階で、周囲の集合住宅しか見えなかった。

1999年のコメント:このホテル同様に金額の記入していないカート伝票にサインを要求されるケースは他にも何件かありました。パークハイアット東京でも深夜のチェックインで「規則だから」と執拗に求められましたが、翌日責任者たちが丁重に詫びに来ました。パンパシフィックホテル横浜でも求められましたが、断ったところ、客室料金だけの伝票を一度作成してとりあえずサインをし、チェックアウト時には追加利用分だけ改めて精算というかたちを取りました。

Y.K.