1994.05.01
開業初日
リーガロイヤルホテル早稲田 Deluxe Room
怒-2

東の帝国、西のロイヤルとまで謳われたリーガロイヤルホテルが、念願の東京進出を果した。早稲田大学の敷地内、大隈庭園の景観を借景に、本格的ヨーロピアンスタイルの豪奢なホテルとして、巨額を投じての開業である。ロイヤルホテルといえば、以前から地元一番主義みたいなものがあって、その地域で最高のホテルを展開している。あくまでその地域ではという前提が付くものの、かなり高水準なホテルを造って、ひとつの地域密着型戦略としての成功を収めているようだ。

ところが、目と鼻の先に、世界最高水準のホテル運営システムというあんちょこを持った藤田観光のなんちゃてフォーシーズンズが構えているし、ここ早稲田の地は都心から離れており、交通不便、周辺のイメージ悪しと、悪条件が重なっているように思う。この環境のなかどれだけ善戦してくれるのか見物だ。

さて、オープン初日、チェックインタイム午後2時に到着。ソフトオープンをしていたのはもちろん承知していたが、グランドオープンの日なのだから、ロビーにはそれなりに活気があって、従業員にもやる気満々の笑顔を期待していたのだが、一歩足を踏み入れて「あれ?」と思った。活気なんかどこにもない。本当にこの日がグランドオープンだとは思えない平凡な空気が流れていた。これでもう先が見えたような気がした。

チェックインはロビーに入って右手にある、なぜか柵で囲われたチェックインコーナーで、椅子に掛けたまま行う。ふたつのチェックインデスクの後ろには、ソファーが置かれていて、連れはそこでくつろぎながら待つことができる。ロビー周辺のインテリアは、目が覚めるようなハッキリとした色使いで、好みが分かれるところだろう。ロビー中央やラウンジ中央に飾られている花が造花であるのも、ちょっと寂しい。

客室は派手なロビーから来ると、すっきりと落ちついているような印象さえ感じてしまうが、既存のホテルに比べると、華やかなドレープや辛し色のベッドスプレッド、真鍮を多用したアクセサリーなど、かなりデコラティブな内装だ。

コンタクトレンズ用の保存液がなくなり、館内の売店で扱っていないか、フロントに尋ねてみた。すると館内にはないとのこと。では、周辺にそれを扱っている店がないかと尋ねると、わからないという。それも、なんでそんなことをいちいち尋ねてくるのか信じられないと言わんばかりの無礼な態度で答えられ、非常に不愉快だった。

散歩がてら、前の通りに出てみたら、目の前にコンビニエンスストアがあるし、30メートル程度行ったところには薬局だってある。なにも、地球の裏側にある町角の店を尋ねている訳ではあるまいし、近隣の情報くらいは開業前に収集しておくべきだ。このホテルは総じてこのレベル。残念ながら東京で地域一番店を狙うのは、完全に失敗のようだ。

「レストラン ガーデン」

グランドオープン日の店内は、ロビーの静けさに比べれば賑わっている方だった。年齢層が高く、それも女性中心だったので、一層賑やかに感じたのかもしれない。インテリアには艶やかなマホガニーを中心に、クラシカルにまとまっており、どちらかというと男性的なイメージがある。

ほぼ正方形の店内には、テーブルがかなりゆったりと配置されているので、隣席をまったく気にせず食事をすることができる。窓側の席からは、一応大隈庭園が望めるのだが、すぐ目の前にはもう大きな樹木が迫っているので、視界はあまり開けていない。窓の外を眺めるよりも、むしろ賑わった店内に目をむける方が楽しいかもしれない。

料理は老舗ホテルを親に持つだけあって、オーソドックスで正統派なものが多く、奇抜なアレンジなどは施されていない。そのため、注文してみたが、運ばれてきてビックリというようなハメには、ならないだろう。サービスは、オープンに際し大阪から助っ人に来ているメンバーが幅を利かせているためか、ゴテゴテの関西ノリ。

淡々とした口調で、おもしろくもないことを並べ立てて、一生懸命くつろがせようとしてくれるのだが、ちょっと寒かった。それに、もうグランドオープンしているのだから、東京のスタッフに多くを任せた方がよいような気がした。これといって、大きな魅力のないレストランだが、意外と穴場になるかもしれない。

Y.K.