1994.04.08
宴会料理
「ラ・ヴィーナス」鉢山町
楽-1

世俗的な店がほとんど見当たらないためか、落ち着いた佇まいの感じられる旧山手通りには、このゆとりにマッチしたおしゃれな店が軒を連ねる。この通りは歩道が広く、周囲に緑や個性的な建築物が多く点在しているので、春先にゆっくりと散策を楽しむにはピッタリだ。

この日訪れた「ラ・ヴィーナス」は、代官山駅からだと、旧山手通りに出て渋谷方面に進み、東京バプテスト教会を過ぎて、西郷山公園のちょうど前くらいの右手にある、実力派のフレンチレストランだ。オーナーシェフの大渕氏は、かつて「ロアラブッシュ」で腕を振るっていたので、当時からのファンも多く訪れていることだろう。

店は地下一階にあるため、通りから階段を降りて入るのだが、店内に進むと大きな窓の外に坪庭がこしらえてあり、別の壁面が大きな鏡張りになっているため、非常に明るい印象を受けた。床は濃い色調のフローリングで、背もたれの低いモダンな椅子を採用しているので、垢抜けた雰囲気がある。中央に飾られた生花も、華やかさを一層掻き立てているようだ。

料理についてはよい評判ばかりを聞いていたためか、やや期待し過ぎたような気にさせられたものの、昼で5,000円のランチを注文したことを考えれば、大きな不足はない。ただ、残念に思ったのは、どうも料理が粗雑で、一時に大量に作る宴会料理のような出来だったことだ。もっと一皿一皿に愛情を込めて作って欲しいものだが、5,000円のランチでそれは高望みだろうか。

サービスは端正ではあるが、どうも肌に合わない感じがした。こればかりは好みの問題かもしれない。決して不足があるわけではないが、満たされた気分にはしてくれなかった。単にお腹が一杯になりました、という食事になってしまった。ワインを注文しようとリストを眺めたが、料理価格の割には高額なものが多かった。

Y.K.