1994.02.13
簡素清潔
帝国ホテル Standard Room
楽-1

東京もひどい雪かと思いきや、そうでもなかったが、翌日の予定を考慮して、自宅に戻らず帝国ホテルにチェックインした。とにかく寝るだけだから、もっともリーズナブルな宿泊プランを利用することにした。1泊朝食付きで2名利用1名18,000円だった。

客室は本館のスタンダードルームで、低層階だったため、眺めは少しもよくなかった。帝国ホテルは客室の位置によって随分と景色が違う。日比谷公園の広大な緑が望める客室や、タワーなら東京湾や都心の夜景が見事な部屋もあるわけだが、今回の部屋は帝国ホテルで最悪の眺めの客室かもしれない。

それでも、室内は見事な清掃状況。引出しの隅まで文字どおり重箱を突つくように見たとしても落ち度は見られないかもしれない。ゲスト用のステーショナリーも非常に質のよいものだし、ホテルディレクトリーのケースやライティングマットは立派な皮製で、ディレクトリーに書かれた文字のフォントでさえも格調高さを漂わせている。

もちろん夕方にはターンダウンがあり、BGMは時間帯によって、その時間帯に合わせた雰囲気にプログラムされている。就寝前にジャズを聞きながら本を読んでいて、そのままうとうとと眠りについても、目覚めると朝の爽やかなイメージの曲に変わっている。

この日、同じ本館の同じサイドの客室でも、知り合いのフランス人が滞在する高層階エグゼクティブフロアの客室を見る機会があった。客室面積はまったく同じだが、内装、調度などが、随分と違っていた。バスルームも立派な石が張ってあってアメニティグッズは倍以上の品揃えがある。ナイトテーブルに備わった操作パネルも新しくてカッコよかったし、冷蔵庫の中の品揃えまで差があった。

タオル類には金の刺繍がはいっていて、ひときわゴージャスだ。同じ広さのスペースでも、調度品でこうも雰囲気が違うのかと驚かされた。その部屋から自分の部屋に戻って、あまりに簡素に感じて上層階がうらやましく思え、これほど差があるなら少々高くても高層階を指定すればよかったと悔やんだが、いまさら遅いので、侘び寂びの境地に訪れたと思い納得することにした。

Y.K