1993.05.01
ポーカーフェイス
「ラ・ターブルドコンマ」駒沢
楽-2

車の往来が激しい国道246号線沿いにある店で、ビルの1階に入居しているため、正面から見ても車をどこに停めていいのかわからなかった。とりあえず店の目の前に車を停めたところ、店内からサービス人が出てきたので、駐車場はどこかと尋ねると、バレーパーキングをしてくれた。こうして出だしには優れたサービスを予感させてくれたが、食事が進むにつれ疑問符が頭に浮かんできて、帰る頃にはそのサービススタイルを慇懃無礼に感じるまでになっていた。にこやかにサービスしてはいるものの、話しをよく聞いてみると尊大な腹のうちが見えてくるようだった。

座席のアサインは非常にありがたかった。店のいちばん奥の庭園を望む窓際の席をあてがってくれ、樹齢130年近いという椿も間近に眺めることができる落ち着いた席だった。店内は天井を高くとってあるので圧迫感がなく、ゆったりとして落ち着いた雰囲気だ。席についてまずシェリー酒を注文した。お昼のコースは3,800円、5,000円、8,000円とあり、8,000円のコースを頼んだ。注文が済んでも、待てど暮らせど何も出てこず、30分近く待たされた。

さんざん待たされて、やっとクッキーが2枚出てきた。これはきっと場つなぎのための1品かと思いきやアミューズだった。クッキー自体は焼き立てでいいのだが、食前酒のシェリーとはまったく相性が良くなかった。ワインリストはフルボトルのみのラインナップだったので、デミはないのか尋ねると、口頭で幾つか紹介し、サンセールを勧められた。好みを聞かれたわけでもなく、予算を伝えたわけでもないし、今日の献立と極めて相性が良く逃す手はないというようにも思われないのに、なぜ勧められたのか理解できなかった。

ちぐはぐなサービスとは違い、料理は好調だった。フォアグラと白アスパラガスのオードブルに、バルサミコ酢でさっぱり仕上げた石鯛のポワレ、続いて鴨のモモ肉のミンチとフォアグラのパイ包みが運ばれてきた。メニューには魚と肉の間にグラニテがあると表記してあった。ところが魚料理に引き続き肉料理が出てきたので、グラニテは?と尋ねると、ニッコリしながらもぴしゃりと「今日はご用意しておりません」といわれ、不愉快な思いをした。また、その後帰るまでウォーターグラスには水が注がれなかった。

支払の時、マネージャーらしき人が会計を担当したが、サービスには一切加わっていなかった。若い人たちに店を任せるのも結構だが、せいぜいホールに目を向けておくことくらいは怠らないで欲しい。料理は素晴らしい。上柿本氏の料理を思い出させる感もあった。料理と椿に免じて「楽」。

Y.K.