1993.04.10
柱の陰
リストランテ「ビーチェ」フォーシーズンズホテル椿山荘東京
哀-3

めかじきのちょっとあたたかいカルパッチョと、難しい名前のパスタが2皿、メインはボラのグリルで、デザートにキャラメルのスフレ、そしてコーヒー。これが8,500円の昼コースの内容だが、高いという印象だった。料理自体はヘルシーな感じで軽やかだし、パスタはいつもながらなかなかの出来映えだ。この日のサービスには特に不可はなく、にこやかで快適だったが、食べ終わった時の満足感から考えると、せいぜい5,000円くらいが妥当ではないかと思った。このコースにグラスワインを2杯飲んで、税・サを加えたら、ひとり17,000円ほどになる。

店内の設えはとてもゴージャズで、運よく窓際に座れれば、見事な眺めも同時に味わえるが、その確率は意外と低い。それどころか、奥のベンチシートや柱の陰にある席だと、随分窮屈な思いで食事をしなければならないので、座席アサインによってスペースや眺めに非常に大きな差があるわけだ。また、動線上にある席は、サービス人が近くを慌ただしく往来するので、極めて落ち着かない雰囲気だ。トラットリアやバールならこのような雰囲気でも楽しいが、高級店でドタバタされては興ざめだ。

おそらくサービス人たちには、できるだけ落ち着いて振る舞うことで、食事の空間を乱さないようにしようという配慮は無いのだろう。逆に肩で風を切って働く姿がカッコいいと思っているのかもしれない。加えて余裕の無さが一層慌ただしくさせている。今回は、大事な打ち合わせだと言って、かなり早い段階から予約を入れてあったが、窮屈なベンチシートに案内された。

隣りには子供連れがいて、その子供はとりわけ騒がしくしていたので、席を替えてもらったところ、柱の陰の動線上に位置する席になった。こちらの方がプライバシーが確保できベターだったが、金輪際この店を仕事で使うのは止めようと思った。

Y.K.