1992.06.27
チェックアウト待ち
神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ Towers Suite
怒-3

到着予定時間通りに到着したところ、部屋が用意できていないと言う。前日のお客さまがまだチェックアウトしていないそうだ。SCIのメンバーで16時まで滞在するだろうとのことだ。オープン早々だから見当がつかなかったのかもしれないが、振り替えのきかない高級スイートの場合、前後の予約と到着予定時刻をよく考えて販売しないと、こういう事になる。ましてレイトチェックアウトの可能性を考えればなおのことだ。気をつけてもらいたい。

客室の最上階に位置するスイートは、天井が高く、気持ちがいい。特にバスルームの天井も高くなっているのがいい。内装のテイストはネオクラシックで、全体に淡いトーンでまとまっている。ただ、構造的には首をかしげたくなる部分もあり、特にクロゼット内は覗いてみるとわかるが、不思議なつくりをしていて、使いにくい。また、バスルームの排水が悪く、オープン早々先が思いやられる。この客室の上はちょうど「ラ・コート・ドール」のフローリング部分に当たるので、椅子を引く音などが結構気になった。

タワーズラウンジは狭く、窮屈な感じだった。客室最上階には通常のツインルームもあり、同じタワーズのツイン料金で、天井の低い部屋と高い部屋があることになる。特に定価で宿泊する場合には、最上階を指定することをオススメする。

1992.06.27
身震いするような料理
「ラ・コート・ドール」神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ
喜-5

アミューズに薄切りにしたサラミと一口サイズのチーズ風味のパイ。アペリティフを飲みながら、メニュを見てあれこれ迷っている間にももう一品、暖かい仔ウサギのガレットが運ばれてくる。今回は、18,000円のムニュデギュスタシオンにした。

まず、オードブルが出るまでにメロンのスープがサービスされた。冷製オードブルがヨーロッパ産のオマールと野菜のテリーヌ。軽い塩味で油っぽさは微塵もない。ソースはアメリケーヌ。温製オードブルはグルヌイユの股肉、アイユのピュレとパセリのソース。小さなカエルで骨までバリバリっと楽しめる。アイユのピュレは信じがたいほどに臭みがない。魚料理はアツアツの皮付きソールのフィレ。オリーブのビネグレットソースが見事だ。

肉料理には鴨の胸肉の蜂蜜風味、ソースフォアドカナール。血液と肝臓を何度も裏ごしし、砂を含んだ味噌のような濃厚なソースで味わう。皮がパリっとしていて、炎の使い方が巧みであることを窺い知ることができる。続いてフロマージュ。やや、種類が少なく、状態も今一つだった。デセールは3皿がコースで出される。最初にキャラメルのように濃厚な香草のアイスクリーム。続いてクレームブリュレ。オーソドックスな一皿かと思いきや、オリエンタルな香りで、軽やかなクリームが神秘的だった。最後にチョコレートのアイスクリームと薄く焼き上げたクレープを重ねあわせてオレンジのソースで仕上げたもの。そしてコーヒーとともに、2皿の小菓子。

これらすべてが身震いするような素晴らしい料理。芸術の域であった。軽やかさから次第に重量感を持たせていくコースの構成も見事だ。また、サービスにおいてもオープン3日目にしてこれほどの安定したサービスを提供できるとは恐れ入った。チームワークの賜物だ。天井が高く、中央にマントルピースまで設えた趣味の良い店内のインテリアも、最後にこうして添える程度の事柄になってしまうほど、圧倒的に料理とサービスが素晴らしかった。

1998年のコメント:この店もまた神戸の震災時に撤退を余儀なくされてなくなってしまいました。現在でも当時のスタッフが数人残って、「トップオブシェラトン」として営業しています。料理も当時の流れを受け継いでおり、さながらにとはいかなくても今でも懐かしい品々に出会うことができます。客席から神戸の夜景が一望でき、それはそれはロマンティックです。

Y.K.