1992.05.26
自動演奏
ブラッスリー「FLO」表参道
怒-1

平日にもかかわらず、多くの人で賑わっていた。勤め帰りの雰囲気の人がほとんど。席の間隔がとても狭いのを嫌う人も多いが、その「密接感」を楽しめる店は数少ないので、ぼくはかえって好きだ。人に聞かれて困る会話をする場合はこの店に来てはならない。ほとんど相席をしているという感覚だから、どんな人が隣の席に来るかは重要だ。それによって随分雰囲気が違ってくる。願わくばフランス人のモデルさんやバシっと決まってる夫婦などとお近付きになりたいものだが、場合によってはネルトンパーティーの隣にされられることもあるそうだ。こういう座席配置の店ならば、席のアサインの重要性をもっと認識してサービスして欲しいものだ。

この店は、ブラッセリーとして考えると、勿体無いほどに豪勢な内装だ。だが、メンテナンスが悪すぎて、傷みが激しいのが目に付く。また、トイレは故障中で、かつ不潔だった。以前はピアニストが演奏していたピアノも、今は自動演奏となり、味気ない。
近くの席でバースデーの演出があり、照明を落とし、ケーキに火を点して運ばれて行った。従業員たちは、その他のサービスを一切停止して、全員がそのテーブルに集合。ハッピーバースデーを合唱するのは結構だが、その歌い方が極めて下品。フォークやナイフを両手に持ち、ガチャガチャと音を立てながら、がなり声で歌う。あれでは祝われている方が気恥ずかしいだろう。また、その間も店内は営業中なのだから、誰かひとりくらいは他のお客さんに注意を向け続けるべきだと思う。

料理にはそもそも期待はしていないが、期待していないせいか、思いのほかおいしく食べられることもある。今回はサービスの連携の悪さのお陰で、許容範囲ぎりぎりの料理が、落第料理になってしまった。ぼくが料理人なら、迷わず廃棄するような出来映えだった。テーブルに運ばれた時にはすでに冷めて膜が張っていたのだ。ここの従業員には恥を知って欲しい。

Y.K.