1992.05.04
春のエスプリ インペリアルプラン
帝国ホテル Suite
楽-5帝国ホテルはやはりすごいホテルだ。期待を込めて出掛けた最新のホテルに見事裏切られた直後だったから、なおのことだったかもしれない。また、子供連れでごった返す舞浜のホテルに寄り道してからチェックインしたために、帝国ホテルの客層の良さを再確認させられた。駐車場は非常に混み合っており、長い行列ができていたが、宿泊である旨を告げると、すぐに専用スペースに案内してくれた。当然といえば当然のサービスだが、そのリズム感が何とも心地よい。
今回は「レセゾン」が“米国HOTELS”より91年度世界のベストホテルレストランに選ばれたのを記念した宿泊プランを利用した。チェックインはゲストリレーションズデスクにて行い、部屋への案内もベルマンの他にゲストリレーションズオフィサーが同行してくれる。このプランではタワーのスイートを利用することになっている。
スイートといっても、帝国ホテルではもっとも小さなスイートだろうか、60平米程度で、内装は通常のタワー客室とほとんど同じだから、ゴージャスな感じはまったくなかった。バスルームも一般客室と同じだから、造りこそスイートではあるが、感覚的にはデラックスルーム程度に感じる。ラックレートは60,000円だそうだから、あまり多くを期待してはいけないと思うことにした。ただ、少し抵抗があったのは、エレベータのすぐ裏側の客室であること。不安適中で、寝付く頃にはエレベータのシューッという音が気になった。
しかし、客室の清掃状況はいつもながらパーフェクトだ。これほど清潔に仕上げられたバスルームは他に類を見ない。タオルに施された獅子の刺繍も誇らしげだ。シャワーブースはないが、シャワーカーテンは二重で、外側のものは花柄の模様が入っていて、白一色のバスルームに彩りを添えている。ターンダウンも完璧で2回目のメードサービスと呼ぶに十分のことをしてくれる。
朝食のルームサービスは指定の時間ぴったりに届けられた。朝に相応しくにこやかに、そして張りのある声でサービスされ、非常に心地よい。おそらくバックヤードは戦場のごとき慌ただしさに違いないが、それを微塵も感じさせない余裕があるのには脱帽だ。千室を超える規模のメガホテルで、これだけの水準を維持するのは、並大抵のことではない。サービスとは、時に人から人へ直接伝わってきたり、時に物を言わない設備・備品に密かに託されていたりするのだということが、ひしひしと伝わってくる。帝国ホテルは名実ともに、日本を代表する超一流ホテルだ。
タワー20階にある宿泊客専用プールに行ってみた。ぼくは大概のホテルにおいて、ヘルスクラブでは運動不足解消のために軽くひと泳ぎするだけなので、いつも10分くらいしかいない。マシンがあればバイクを30分くらいするのでもう少し長居になるが、それにしても長時間はいない。それなのに、5,000円も取られたりすると、少々勿体無いなぁという気がしてしまう。帝国ホテルも含めて、ビジネスマン、しかも外国人の多いホテルは、比較的利用しやすい料金設定にしている場合が多く、ありがたい。今回は、ゴールデンウィーク中とあって、プールは子供たちに占領され、黄色い叫び声が飛び交う最悪の環境だった。そのため、10分どころか、2〜3分で諦めて帰ってきた。
「レセゾン」
Mille-Feuille de Saumon Feme au Caviar
スモークサーモンのミルフィーユ キャビア飾りConsomme
コンソメFillets de Sole Farcies Mousse de Homard
舌平目のオマール海老ムース詰め 二色のソースSorbet
シャーベットMignon de Boeuf Fondue d'Endives
牛フィレ肉のポワレ アンディブ入りクリームソースSalade de Saison
季節のサラダCerises Jubilees
チェリージュビリーCafe
コーヒーChateau Pichon Longuville Lalande 1976
改装して明るく華やかになって以来はじめての来訪だったが、プロヴァンス風の店内は想像以上に快適だった。テーブルがやや小さいが、椅子の掛け心地はよく、隣席との間隔も保たれているので、気兼ねせず会話ができる。また、大きなベンチシートと、ガラスのパテーションがインテリアのアクセントとなっており、中央部には庭園の東屋のようなセミプライベートルームがあっておもしろい。
メニュはご覧の通り、帝国ホテルの歴史を偲ばせる、非常にオーセンティックなもの。逆に言えばあまりににもポピュラーなメニュゆえにごまかしがきかない。料理の出来映えは見事で、目にも美しかった。サービスもまた快適で、同時にシャポーを外す仕種ひとつ取っても洗練されている。デザートのワゴンサービスもショーマンシップがありとても楽しかった。
また、ワインのラベルをもらうと、ラベルケースには日付と担当ソムリエの名の他に、ソムリエによるそのワインの解説が印刷されてくるという、とてもユニークなサービスがある。ホテルレストランの一つの頂点の姿がここにあった。帰りには「インペリアルテイスト」という帝国ホテルの歴史が記された英文の書物をいただいた。
Y.K.