1992.04.11
ロードサイドリゾート
湘南ホテル Standard Room
楽-2

江ノ島を望む海岸沿にできた「湘南ホテル」に連泊してみた。シーズンには多くの若者や家族連れに賑わう江ノ島海岸沿いには数多くのファーストフードショップやファミリーレストランが点在しているが、本格的なホテルはいままでなかった。シーズン中だとしてもほとんどの人が日帰りのできる近郊からやってくるので、宿泊の需要はあまりないのかもしれない。

鎌倉に近いこともあって、周辺の道路は週末になると激しい混雑を呈し、車線の少ないこの路では、渋滞にはまったらちょっとのことでは抜けられないので、この方面には滅多なことでもない限り来ることはなかった。電車でなら小田急線片瀬江ノ島駅から歩いて10分ほどだろうか、国道134号線を平塚方面に向かうと、何本もの円柱に支えられた真っ白な建物が目に入る。

リゾートホテルとしての性格を持ちながら、結婚披露宴や地域のコンベンション施設としての役割も担っており、地階には充実した宴会場設備を備えているので、駐車場やパブリックスペースはゆとりある設計になっている。それと比較して宿泊施設の方は、小ぢんまりとしたホテルならではのプライベート感覚が保たれており、チェックインはゲストリレーションデスクで座ったまま行い、ベルマンによる客室までの案内があるなど、リゾートホテルとしても高い水準を目指している。

客室は3階と4階にあり、スタンダードルームで32平米を確保し、ルームチャージで25,000円の価格設定だ。夏のシーズンは特別料金の設定がある。室内はコンパクトながら設備は充実しており、パステル調の淡い色使いのインテリアに包まれた客室には、ソファセットとライティングデスク、ミニバーを兼ねたアーモア(440チャンネル有線放送、無料のムービーチャンネルつき)がある。

バスルームも広くとられていて、シャワーブース付きだ。トイレは別になっており、洗面台はバスルームの外にあって絨毯敷きだ。洗面台の横には大理石の化粧台もあるし、こまごまとした品物を並べるためのガラスの棚があって便利。アメニティの充実ぶりもなかなかで、2種類の石鹸やヘアーブラシ、ソーイングキットなどのほか、バスローブも備わっている。クローゼットはとても狭く、4〜5着入れたらいっぱいになってしまいそうだ。ベッドははなれて配置されてはいるが、真ん中にナイトテーブルがないため、軽く押して動かせば、すぐにハリウッドツインにはやがわり。

窓が小さいのは残念だが、全室から時間帯で表情を変える海を眺められ、リゾートらしい雰囲気だ。ただ、目の前が国道なのでせっかく窓が開いても、波の音より車の音、潮の香りよりも排気ガスのにおいだというのは残念。ランドリーサービスやルームサービスがきちんとあることは評価に値する。2階のプール、サウナ、ジャクージは宿泊客なら自由に利用することができ、早朝から遅くまで営業しているのがうれしい。

フレンチレストラン「メールドール」

客室と同じ向きで海を望むことのできる唯一のレストランがこの「メールドール」なので、この店がメインダイニングだと考えていいだろう。その他日本料理「わだちや」、鉄板焼「片瀬亭」があるが、「わだちや」はパティオを望む地下1階に、「片瀬亭」は一度正面玄関から外に出た別棟にそれぞれ位置しているので、「メールドール」がもっともリゾートホテルの雰囲気を持っているレストランだといえる。

夜のコースは7,000円、9,000円、12,000円とあり、今回は12,000円のコースを注文した。あまり期待していなかったこともあってか、食後の印象はとてもいいものだった。料理、サービスともに意外にも洗練されており、安心して食事を楽しめる。メインディッシュは子鳩だったが、香ばしく香草がきいておいしかった。

食事中に急に電話を掛ける必要が生じ、公衆電話はどこか尋ねると、店の電話をお使いくださいとすすめてくれたが、長距離なので申し訳ないと遠慮した。それでも快くどうぞというのでお言葉に甘えて使わせてもらったが、そのすすめかたがとても自然で気持ちよかった。

この店は、朝食がまた素晴らしい。焼き立てのパンと自家製ジャム。これさえあればもう何もいらないくらいだが、ヨード卵を使用したオムレツやフルーツヨーグルト、サラダ、シリアルに至るまで、充実した内容の朝定食がある。このホテルに泊まる時は朝食が楽しみだ。

Y.K.