1992.03.27
ミステリーツアー
横浜アスターホテル Suite
楽-1山下公園から中華街に向かう途中に、おおきな龍の壁画が描かれた建物があり、それは一見すると中国料理店のようだが、しみじみ見てみればホテルだった。かなり遅い時間にチェックインをしたが、担当のフロント係は無口で、新幹線の車内販売係のような雰囲気だった。ロビー周りには役所の応接室みたいな古びたソファが並び、「〜様御一行様」の黒い看板が出ている。
いかにも観光旅館的な感じだ。館内は病院のような、一種おどろおどろしいような空気があって、これぞ本格的なホテルミステリーツアーだなと思った。エレベータも古く、よく言えは歴史を感じさせる。複雑な構造の館内でも一番奥に位置する、このホテルでは最高級の部屋に案内された。
どうも、後から増築された別館部分に当たるらしい。造りはマンションの一室のようだが、広々とはしており、窓はサッシで、外にはこれまたマンションにあるようなバルコニーが付いていて、物干し竿と洗濯物がよく似合う雰囲気だった。
天井からのペンダントライトは家庭用の蛍光燈で、点けるとまるでお茶の間のような感じになってしまうので、ナイトテーブルの白熱電球だけで、客室の明かりをとっていたせいか、ほの暗く怪しいムードが更に高まった。家具はボロボロ、バスルームは広いには広いが、古びたタイル張りで、バスタブは浅く、本当にお湯が出るのか心配なくらいに見えた。リビングにはロビー同様に事務室かお医者さんの待合室みたいなソファがあって、テーブルにはレースのセンタークロスが掛かっている。
生まれてはじめてこのようなホテルに宿泊でき、不気味ではあったが、貴重な体験だと思っている。日本にも、しかも横浜にこんな感じのホテルがあるというのは、意外な発見だった。台湾の地方都市みたいな雰囲気を味わえるおもしろいホテルで、結構楽しかった。
Y.K.